株式会社ゲート・ワン
取締役COO
速水 大剛 氏
2023年12月末までに設置店1万店に拡大
ファミリーマートのリテールメディアである「FamilyMartVison」は21年9月にスタートした。設置店舗数は全国で約3000店舗。接触者数は1週間の延べ人数で約1900万人。特定の世代に偏っているというよりは、全世代をバランスよく含んでいるのが視聴者属性。ビジョンには大きな3連のスクリーンがついている。音も出るし注目率が高まるレジ周辺に設置されている。スクリーンが3つあることで、柔軟な広告表現が可能だ。1個1個のスクリーンは独立してコントロールできるので、非常に多彩な表現ができ、様々なクリエイティブを打つことで訴求力の向上を図ることができる。
「FamilyMartVison」は、店頭のデジタルサイネージということで、リーセンシーメディアとしての活用は非常にイメージしやすい。リーチメディアとしても十分に活用できる。実際に出稿しているクライアントのタイプがここ数カ月で変化した。22年2月頃までは出稿の70%がファミリーマートに商品配荷がある企業だった。設置店舗数が3000店を超えた6月頃から配荷のない商品やサービスのクライアントが全体の約40%を占めるようになってきた。23年12月末までに全国1万店舗以上、1週間ののべリーチ数6300万人以上まで拡大を予定している。
リテールメディアというとID-POSの活用が不可欠。「FamilyMartVison」で放映して実際売れたのか、誰が買ったのか、クライアントの出稿サポートと効果測定にも力を入れている。効果検証のプロセスを通じてセールスとユーザーのデータをかけ合わせて何がわかるかという戦略の議論がしやすくなり、それに応じたクリエイティブが作りやすくなる。
POSリフト全体の傾向では、ファミリーマートに配荷がある商品について34%の出稿案件で3%以上のPOSリフトが見られた。5%以上に絞ると全体の16%。今回は売上効果1%未満をまとめているが、実際の売上効果で見てみると72%の案件でPOSリフトがあった。
サイネージは見ることで潜在関心層にも興味を喚起できる
ターゲット層だけでなく、新規ユーザーの掘り起こし効果が高いことがわかってきた。実際に米国のデータでは、店頭購買の60%は衝動買いと言われている。おそらく日本でも同じような比率で衝動購買が起きているだろう。某飲料メーカーのケースでは実際のターゲット層は30代、40代の男女だが、配信後に購買者分析を行ったところ40代が伸びているが、50代の購買層が大きくリフトしていることがわかった。
「FamilyMartVison」は「One to Many」で、広く興味関心を喚起させるのには適している。一つのスクリーンにたいして1人にリーチするメディアではないので、基本的に「One to One」は苦手。日常生活動線上という特性では、プッシュ型ではないので強制視聴を伴わない。そのため生活者の時間を奪わない。ストレスなくメッセージを刷り込める。
視聴者・視聴率を高める取り組みとしては、オリジナル番組で訴求する方法もある。これまでのサイネージは歩いている時にスクリーンがふと目に入る。もしくはオーディエンスが近くを通ってくれるまで待つというスタイル。オリジナル番組で「見る」という能動的な視聴に変えていきたい。さらに「FamilyMartVison」を見たいという、人を引き寄せるメディアにしていきたい。
サイネージのAIカメラの活用は実証実験中で、視認可能エリアに入った人数や視認者属性、視認時間などのデータを検証することで、最終的には広告のクリエイティブ評価にも活用したい。AIカメラの活用によって、ターゲティングにも使える可能性がある。まずはデータ精度の改善、ベースとなるデータをしっかり計測していくことで、AIカメラの活用をスタートさせていきたい。