コンビニエンスストア(CVS)大手のファミリーマート(東京都/細見研介社長)は、国内小売業界においてリテールメディアの取り組みで先行する企業の1つとして知られる。自社決済アプリや店頭のデジタルサイネージを軸に販促・広告の枠を超えて、「顧客とつながり、顧客を深く理解する」ためのツールとしてリテールメディアを位置づけ、事業領域を拡大している。
メディア化する「ファミペイ」アプリ
ファミリーマートは2019年7月、自社決済アプリ「ファミペイ」をリリースした。当時はさまざまな業種・業界で決済アプリが続々と登場した時期。ファミペイもそれに追随するものと目されていたところもあったが、ファミリーマートとしてはデジタル戦略の基盤、ひいてはリテールメディア戦略の根幹として当初から位置づけていたという。
「オフライン(店頭)だけでは、販促の効果検証が十分にできない。ファミペイを介して顧客IDと購買行動を結び付け、販促効果の最大化と検証ができる仕組みをつくろうというのが主目的だった」。こう振り返るのは、デジタル事業部部長の国立(こくりゅう)冬樹氏だ。
20年9月には、「ファミリーマート単独では得られる顧客IDの数がどうしても限られる」(国立氏)ことから、NTTドコモなどと合弁会社データ・ワンを設立した。同社では、ファミペイに加えて「dポイントクラブ」の会員基盤のオフライン・オンラインデータを統合。食品メーカーなどから広告の出稿を受け、個々のIDの属性に合わせたターゲティング広告配信から商品購買までの効果検証を行うというソリューションを提供する。
実際にファミペイのアプリ上にも広告枠が設置され、ファミリーマートは効果検証を重ねたなかで、さまざまな気づきを得たという。
たとえば、アプリの利用シーンだ。もともと決済アプリであったため利用は店頭がメーンかと思いきや、アクセスの約半数は自宅など店舗外からだった。それに関連して、新商品の発売情報やクーポン配信に関わる情報(広告)をファミペイでじっくり調べたいというニーズが高いことも明らかになった。
これらの気づきをもとに、そうした情報をアプリ画面のトップで
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