連載3回目となる今回は、第1回で述べた2024年時点での購買者像の6つの類型をもとに、前回(第2回)紹介したメガトレンドや、PwCが独自に所有する生活者の未来トレンドデータを踏まえて、35年頃の生活者の購買行動の変化を論じる。
その具体像を6つの未来購買者セグメントとして描き出したうえで、小売業がいかに対応すべきかを考察していきたい。
「NRF APAC」で体感した“予兆的AI”の可能性
本連載で繰り返し言及しているのが、一人ひとりのスマートデバイスにパーソナルAIが搭載され、購買を行う時代の到来の予兆だ。今年6月3~5日にシンガポールで開催されたリテールカンファレンス「NRF APAC」に参加した結果、この予兆が本格的な潮流になると筆者は感じた。
現地でとくに大きな学びとなったのが、統計的な分析による「プレディクティブ(予兆的)AI」という概念の登場だ。統計的な分析によるリアクティブな提案であるパーソナライゼーションはすでに古くなり、個々人のコンテクスト(意思決定・行動の文脈)をAIが理解し予測的な推奨をすることが最新の手法として紹介された。そしてその先には、「エージェンティックAI」といったパーソナル・ショッピング・コンパニオンが登場するとも語られていた。
小売業界の最新事例の学びの場であるNRFでそうした方向性が語られるなかで、35年の購買者像を想定することは“夢物語”ではなく、今後の小売業の長期経営計画を考えるうえでの必要事項ととらえられる。
未来における購買者の6つの姿
では、そうしたAIを前提とした購買行動が加速したとき、本連載初回に挙げた24年の購買者像と比較して、35年の購買者の姿はどのように変化していくのか。筆者は大きく6つの類型(A~F)に分けられると考えている。以下、順に見ていきながら、それぞれの類型に対して小売業が対応できることを挙げていく(図表)。
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