伝統的に初日幕開けの基調講演では米大手小売トップが登壇してきたNRF。だが昨年はセールスフォース(Salesforce)CEO、今年はNVIDIAのアジータ・マーティン氏と話題の大手テック企業幹部を招いて、小売業界へのAI導入の重要性を議論する内容が続いており、小売業の変容を物語っている。
AIをテーマとするセッションが数多く開かれた中、いま注目の生成AIと自律的に意思決定まで行うエージェンティックAIに焦点を当て解説する。
LLM活用し自社特化の生成AIモデルを開発
NRF初日の基調講演で「生成AIは米国の検索エンジンを完全に変えた」と述べたNVIDIA小売・消費財担当VPのアジータ・マーティン氏。
デジタル投資に積極的な小売企業は生成AIモデルを使って、EC関連では①ECの検索エンジンを改良して検索結果の精度向上、②ECの商品カタログ情報やキャッチコピーの作成、コンテンツの拡充に生かしていると説明。
リアル店舗も関連する分野では、③顧客に対するよりパーソナルな体験の提供、④リテールメディアにおいて、顧客の購買履歴や関心事を取り入れたマーケティングへの活用が進んでいるという。

NVIDIAと提携するウォルマート米国(Walmart U.S.)は2024年1月に「アダプティブ・リテール」戦略を発表。ジョン・ファーナー社長兼CEOは「同年10月より、AI、生成AI、AR(拡張現実)、イマーシブ(没入型)コマースプラットフォームを活用し、ハイパーパーソナライズされた便利でより顧客満足度を高められる買物環境を整えている」と述べた。
この戦略の1つが「ワラビー(Wallaby)」である。小売に特化したLLM(大規模言語モデル)をウォルマートの数十年分のデータで訓練し、他のLLMと組み合わせてウォルマートという企業の文化、文脈を高度に理解するモデルだ。
主要目的は「24時間いつでも最高の知識を持ったショッピングアシスタントが顧客の買物をバーチャルに手助けすること」で、昨年秋からウォルマートドットコムの一部のカテゴリーで同サービスを提供。25年末までに全米、カナダ、メキシコでより高度な質問への回答やパーソナルな商品推奨を開始する予定だ。同技術を従業員の業務サポートにも活用する。
もう1つは昨秋発表した、
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