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丸久、トライアル式のレジカートシステム導入!コロナ禍の”買物革新”は地方部で活況

リテールパートナーズ(山口県)傘下で食品スーパーを展開する丸久(同)が、トライアルホールディングス(福岡県:以下、トライアル)の子会社Retail AI(東京都)開発のレジ機能付きショッピングカートの導入実験を開始した。店舗での人手不足の深刻化や、新型コロナウイルス感染拡大に伴い”非接触ニーズ”が高まるなか、地方の食品スーパーでも最新デジタル技術を介した新しい買物スタイルが広がろうとしている。

北九州市内の既存店で実証実験を開始 

丸久がレジカートシステムの実証実験を行う「アルク到津店」(福岡県北九州市)

 丸久が今回導入実験を開始したのは、レジ機能付きの「スマートショッピングカート」。カートにはタブレット端末とスキャナーが備え付けられており、お客は自ら商品をスキャンして買物かごに入れ、最後は専用レーンを通過することで精算が完了する仕組みだ。タブレット端末上では関連商品の提案やクーポンの発行なども行われる。トライアルが運営する店舗ではすでに20店舗で導入されており、計約2500台が稼働している。

到津店ではカートを40台を導入し、3カ月間利用動向を分析する

 丸久はこのスマートショッピングカートを「レジカートシステム」の名称で、福岡県北九州市の「アルク到津(いとうず)店」に40台導入。7月9日から3カ月間の実証実験期間を設けて利用動向を分析しながら、その後もトライアルとともに運用改善を行っていく予定だ。加えて、北九州市内に今後オープン予定の新店ではレジカートシステムを全面導入する計画だという。

 なお、レジカートシステムにおける決済方法については、トライアルグループの店舗では同社のプリペイドカードを使用するが、丸久では同社の電子マネー「マルカカード」に対応する。

レジカートシステムについてはこちらも参照→田川店最速レポート トライアルの最新スマートストアは何がスゴイのか? 年明け「重量センサー付レジカート」登場へ

トライアル永田会長とのトップ会談で導入が決定

 丸久にとってトライアルは山口県や福岡県などで競合するが、今回手を組むことになったきっかけとなったのが、リテールパートナーズおよび丸久の社長を兼務する田中康男氏と、トライアルグループ会長の永田久男氏による”トップ会談”だ。

 少子高齢化や人件費の高騰、ボーダレスな競争の激化やECの台頭――これらの経営課題を解決し得るツールの1つとしてAI(人工知能)に関心を持っていた田中社長。そんななか、大手食品卸のトップの紹介を受け、昨年7月に東京で永田会長と会談する機会を得た。

 話を聞くうちに、「永田会長の志の高さ、志の大きさ、AI(人工知能)によって小売に革命を起こそうという信念・情熱に心を打たれた」(田中社長)という。そして、丸久の店舗への「スマートショッピングカート(レジカートシステム)」の導入について双方で合意、約1年の準備期間を経て今回の実証実験にこぎつけた。

3カ月後利用率20%、売上高5%アップを目標に

 さて、丸久はレジカートシステムの導入に関して、①試験導入から3カ月後に利用率20%以上・売上高5%アップ、②本格導入が決定した場合、その4年後までに売上高10~20%アップ、導入コストを上回る営業利益の確保、という具体的な数値目標も定めている。

 これに加えて、レジカートシステム上で発行するクーポンを通じたカテゴリーマネジメントによるマーケティング強化、購買データをベースにした商品提案を行うことによるショッパーマーケティングの深化などにも全社をあげて取り組みたい考えだ。

 また、リテールパートナーズはアークス(北海道)、バローホールディングス(岐阜県)とともに「新日本スーパーマーケット同盟」の名の下に資本関係を有しているが、今回のレジカートシステムの導入についても「(アークスの)横山社長をはじめ、3社でしっかり情報共有を行っている」(田中社長)という。

コロナ禍で「買物体験を変えなければならない」フェーズに

左から、RetailAIの永田洋幸社長とリテールパートナーズ・丸久の田中康男社長

 さて、世間では新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、「他人とできるだけ接触したくない」というニーズが急激に高まっている。そうしたなかで、都市部、地方部を問わず、小売企業はこれまでの買物プロセスを改革する必要に迫られている。その手段の1つとして、レジカートシステムはあらためて注目を浴びることになるだろう。

 そして、この状況はトライアル側にとって強い追い風となっている。今回の丸久の事例は、トライアルにとって悲願だった初めての「社外導入」。成果を出すことができれば、さらなる外販にも弾みがつくことは間違いない。

 Retail AIの永田洋幸社長は、「(コロナ前は)『買物体験を変えたほうがいい』くらいの議論だったが、コロナによって『変えなければならない』という環境になった。今後も新しい買物体験を広めていきたい」と力を込める。