“対アマゾン”を早くから意識し、物流インフラを整備してきたコープさっぽろ(北海道/大見英明理事長)。 ドライバーの自前化、物流網構築、作業の標準化などに取り組んできた同生協は2018年8月、自動倉庫型ピッキングシステムの「AutoStore(オートストア)」を導入。宅配の取り扱い品目数を拡大し、さらなる成長をめざす。
物流インフラ整備で圧倒的な利益事業に
コープさっぽろは人口減少のペースがほかの地域よりも早く進んでいる北海道で、着実に組合員を獲得し、利益を出し続けている。とくに、宅配事業「トドック」が好調で、2018年3月期の宅配事業の経常剰余率(民間企業の経常利益率に相当)は9.2%という高水準だ。
これまでコープさっぽろは、“対アマゾン”を意識し、物流インフラ整備に注力してきた。最終配送拠点から北海道全域を1時間以内に配送できるように、従来型の物流センターだけでなく、小型のデポを設置。加えて、ドライバーの自前化、作業の標準化などに取り組むことで、物流効率を上げてきた。 さらなる成長をめざすコープさっぽろは18年8月、宅配商品の物流拠点である「江別物流センター」(北海道江別市)に自動倉庫型ピッキングシステムのオートストアを導入した。
オートストアはノルウェーのIT企業が開発したもので、オカムラ(神奈川県/中村雅行社長)が販売代理店を務める。国内では16年1月にニトリホールディングス(北海道/白井俊之社長)が初めて導入し、コープさっぽろはニトリの事例を参考に導入を決めた。今回の導入は北海道初で、国内のスーパーマーケット業界でも初となる。
オートストアは主に「ビン」、「ロボット」、「ポート」の3つで構成されている。
「ビン」は75ℓのボックス型プラスチック容器で、積み木のように重なっている。江別のオートストアは高さ13段で、1万3594のビンが敷き詰められており、1つのビンに1SKUの商品が保管されている。
ビンを敷き詰めた床の上を走るのが自動ピッキングを行う「ロボット」である。組合員からの注文に応じてロボットは該当する商品が入っているビンをピッキングする。同センターは70台のロボットを導入している。
「ポート」はオートストアの内外をつなぐ場所で、ビンの中に商品を入れたり、取り出したりする作業を行う。この作業は人を介して行っている。宅配の注文システムと連動しており、作業員はどの商品を何個ピックアップ、納入すればよいか簡単にわかるようになっている。全部で17台あり、それぞれ納入、出荷に切り替えることが可能だ。 面積は229坪で、建築法、消防法のいずれの適用対象にもならない大きさに収めている。
2万SKUに拡大しドラッグストア市場を攻める
コープさっぽろがオートストアを導入した最大の目的は宅配のSKU数拡大だ。オートストア導入前までは5000SKUだった取り扱い品目数を2万SKUに増やした。 「2万SKUあれば、標準的な食品スーパーとドラッグストアで販売している売上額の95%の商品が揃う。これにより暮らしのインフラとしてトドックを利用してもらえるようになる」(大見理事長)。
従来の物流倉庫では場所や人時などの制約で2万SKUを取り扱うことができなかった。オートストアを導入しなければ、同様の出荷能力を持つためには600坪、55人が必要であるとシミュレーションしていたが、導入したことにより、229坪、35人のスタッフで運営することができるようになった。面積については高さをうまく活用することで大幅に縮小できた。人時は「陳列から(ビンへの)投入」という作業に代わったことや、ロボットがピッキングを代行している点が効率化につながっている。2万SKUのうち、高頻度で注文がある約5000SKUはこれまでと同様のフローで処理し、低頻度の約1万5000SKUをオートストアで取り扱っている。
取り扱いSKU数を増やすと同時に、コープさっぽろは新しいカタログを作成。従来のラインアップに、酒類・飲料を約4000種類掲載している「お酒カタログ」や、ヘルス&ビューティーケア関連商品を約2000種類取り扱う「ビューティートドックコスメ」、サプリメントや栄養ドリンクなどを約1800種類集めた「暮らしのトドック健康食品」などを加えた。
組合員の新カタログへの反応も上々で、「かなり売れている」(大見理事長)という。 組合員の利便性を追求し、「暮らしのインフラ」をめざす“北の王者”は、道内のさらなるシェア拡大をねらう。