米国ドラッグストア(DgS)大手のCVSヘルス(CVS Health)は2月13日、テキサス州ヒューストンで新フォーマットを実験中であることを公表した。「CVSヘルスハブ(CVS HealthHUB®)」と名づけられた新フォーマットは、ヘルスケア機能をこれまで以上に充実させ、新しいヘルスケア体験を提供。地域の人々に健康とウェルネスならばこの店と思わせる「ヘルスケアの目的店」となることをめざす。
取材・文=太田美和子(リテイルライター)
売場の20%以上がヘルス関連スペース
CVSヘルスはヒューストン市内の3店舗をヘルスケア重視型の新フォーマットに改装し、2018年12月中にソフトオープンした。
改装店舗では、売場の20%以上をヘルス関連スペースにした。ヘルスケア関連商品を増やしたのはもちろん、デジタル機器を利用した情報提供を行ったり、健康についてのアドバイスをするスタッフを配置するなど、サービス面を充実させた。ヘルスケアといっても、現在病気を患っている人々と、健康な人々の両方を対象にする。
患者に対しては、個々の患者の個別な状況を把握して最適なアドバイスをし、医療費を節約できるようにすることに注力した。
とくに、睡眠時無呼吸症候群や糖尿病など慢性疾患の患者に対しては、快適な生活が送れるように車イスや寝具、酸素装置といった耐久性医療機器についての相談を受け付け、必要な商品や機器を販売する。調剤薬局でのカウンセリング機能をこれまで以上に充実させ、専用のカウンセリング・ルームを設置。これまでにもあった店内診療所「ミニットクリニック(MinuteClinic)」での医療相談も引き続き行っていく。
一方、健康な人々に対しては、店内に常駐する管理栄養士から個別に、あるいはグループでカウンセリングを受けられるサービスを導入した。また、自分で健康チェックができるデジタル機器も配備した。
「ケア・コンシェルジュ」を配置
多様な商品やサービスが備わっているため、どのようなサービスがあるか、自分が求める商品やサービスは店内のどこで提供されているかが、顧客にはわかりにくい場合もある。そこで、「ケア・コンシェルジュ」という専門職を置いた。コンシェルジュは、顧客のニーズを聞き、最適なサービスや商品を判断し、担当者に引き継ぐ。
コンシェルジュが常駐するカウンター近くには、「ラーニング・テーブル」や「オンデマンド・ヘルス・キオスク」がある。「ラーニング・テーブル」は、健康関連の複数のアプリを搭載したiPadが複数台あり、そこで必要な情報を得たり、子供たちが遊びながら健康について学んだりできる。操作がわからなければ、コンシェルジュがサポートする。もちろん、このiPadを使って、CVSヘルスのEC(ネット通販)サイトで買物をすることもできる。一方の「オンデマンド・ヘルス・キオスク」は、顧客が自分で血圧や体重などを測定できる装置である。
店内にはイベントスペースも設けた。同社の管理栄養士や薬剤師などの専門家が地域の各種団体とともに健康に関する講習会を開催するためのコミュニティ・スペースである。
「お客さまのヘルスケア体験を変革することは、これまでとは大きく異なるヘルスケア店舗を創造することから始まる。CVSヘルスハブは既存のDgSを近隣のヘルスケアの目的店に引き上げてくれるはずだ」と、同社のアラン・ロトヴィン最高トランスフォーメーション責任者は語った。
ソフトオープンから数カ月が経過したが、今のところ顧客の反応はおおむね好評だ。CVSヘルスは引き続きヒューストン市内の店舗での動向を観察し、商品とサービスの最適なバランスを見定める。そして、これら店舗で得た教訓をベースに革新的な店舗モデルをつくり上げていく考えだ。
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