コンビニエンスストア(CVS)大手のファミリーマート(東京都/細見研介社長)は現在、事業基盤を生かした新規ビジネスとして、広告・メディア事業の展開に力を入れている。CVSのリテールメディアにおける最大の強みはその店舗網だ。同社が全国に展開する1万6000超の店舗が「メディア」になると考えると、そのインパクトは計り知れない。ファミリーマートはどのような方針のもと、リテールメディアに取り組んでいるのか。事業責任者を取材した。
1日約1500万人の顧客接点を活用
2022年4月、ファミリーマートは23年2月期を初年度とする3カ年の中期経営計画を公表し、その中で「CVS事業の基盤を活用した新規ビジネスの拡大」を大きく打ち出した。新規ビジネスの柱は大きく3つで、「金融」「デジタルコマース」、そして「広告・メディア」だ。
食品の販売から始まり、各種チケットの取り扱い、行政サービスの提供など種々の機能を付加してきたCVS店舗は、今や社会インフラに等しい存在だ。ファミリーマートは22年8月末現在、全国に1万6562店舗を展開しており、1日当たりの来店客数は約1500万人に上る。
この強固な顧客接点を活用すべく、ファミリーマートが注力するのが店舗を活用した広告・メディア事業だ。ファミリーマート常務執行役員でデジタル・金融事業本部長を務める髙橋順氏は、「CVS店舗の多くはお客さまの生活動線上にある。業態の特性を考慮した結果、店舗はそれ自体がメディアになり得ると着想した」と話す。
髙橋氏によれば、CVS店舗がメディア(広告媒体)になるというアイデア自体は新しいものではないという。
その一例が、店頭に置いているチラシだ。ファミリーマートでは以前から自動車教習所や各種保険の宣伝チラシをレジ近くに配置している。そのほかにも、POSレジのディスプレーやレシートの裏面を広告スペースとして提供したり、店内BGMの合間に音声広告を流したりなど、「リテールメディア」が注目されるずっと以前から店舗をメディアとして広告主に提供し、広告収入を得てきた。とくに音声広告は1日に何度も流れることもあって訴求効果が高く、現在も大きなニーズがあるという。そうした経緯を踏まえると、
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