「D2C(Direct-to-Consumer:消費者向け直販)」という言葉が流通業界で定着しつつある中、メタバースブームの到来にあわせて新たな概念が注目され始めている。それがアバターに対して商品を販売する「D2A(Direct-to-Avatar)」というモデルだ。本稿では、メタバースと密接に関係するD2Aについて、事例を交えながら解説していく。
アイコンやアバターが自己表現の手段に!
D2Aとは、バーチャル空間上のアバターに対してデジタルアイテムを販売する新しいビジネスモデルだ。近年、米ファッションブランド「Ralph Lauren(ラルフローレン)」やイタリアのラグジュアリーブランド「GUCCI(グッチ)」、米スポーツ用品メーカーのナイキ(NIKE)ら、アパレル業界を中心に次々と参入。米投資銀行モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)によると、ファッションブランドでのデジタル需要は2030年までに500億ドル(5兆9000億円:1ドル=118円で換算)に達すると予測されている。
コロナ禍での行動制限やオンライン授業、在宅勤務に伴ってオンラインで過ごす時間が増え、10~20代のZ世代を中心に、オンラインゲームやSNS上で自分の分身となるアイコンやアバターが自己表現の手段のひとつになりつつある。1日当たりのアクティブユーザー数(DAU)が約500万人(21年11月時点)にのぼるオンラインゲーミングプラットフォーム「Roblox(ロブロックス)」では、アクティブユーザーの5人に1人が毎日自身のアバターをアップデートしているというデータもある。21年はこのプラットフォームを通じ、無料・有料合わせて58億個のデジタルアイテムが入手された。ユーザーは、アバターの顔を変えたり、洋服を着替えたり、アクセサリーを身に着けたりして、リアルの自分にとらわれない自由なおしゃれをバーチャル空間で楽しんでいる。
ロブロックスのようなオンラインゲーミングプラットフォームは、Z世代を中心とするユーザーとブランドをつなぐ入口となりうる。既存のブランド価値を生かしてアバター用デジタルアイテムを提供し、ブランドの世界観を伝えることで、ブランドの認知度を高め、自分らしさを表現する手段として支持されれば、ファン化につながることも期待される。
新たな収益源への期待大 専門部署の立ち上げも
ラルフローレンのCEO
・・・この記事は有料会員向けです。続きをご覧の方はこちらのリンクからログインの上閲覧ください。