欧州がメタバースの市場として注目を集め始めている。メタ(Meta Platforms:2021年10月にフェイスブックから社名変更)はマーケット規模が大きく、一流の大学が集まり、優秀な人材が豊富なEU(欧州連合)を重要な市場と位置づけ、メタバースの構築に向けて専門性の高い技術者の確保に乗り出したほか、投資家らによる関連スタートアップ企業への投資も活発化している。本稿では有名ファッションブランド中心に進む欧州小売のメタバース活用の事例をまとめていく。
メタも注目する欧州市場、スタートアップ投資も活発化
メタバース領域に注力する方針を打ち出すメタは社名変更を発表した2021年10月、EU域内で高度なスキルを持つ人材を今後5年間に1万人採用する計画を明らかにした。EUでは、政策執行機関である欧州委員会がEU域内でのメタバースへの規制のあり方を検討する前段階として、メタバースの研究に着手。また、メタバース領域に取り組むスタートアップ企業への投資も活発になりつつある。融資機関の欧州投資銀行(EIB)は21年12月、VR(仮想現実)ヘッドセットを開発するフィンランドのヴァルヨ(Varjo)に2000万ユーロ(26億円:1ユーロ=130円で換算)の資金を供与した。
こうした背景のもと、欧州の小売業ではプロモーションやマーケティングの領域でメタバースを導入する動きがみられる。
イタリアのファッションブランド「UNITED COLORS OF BENETTON(ユナイテッドカラーズ・オブ・ベネトン)」は22年2月、メタバース上にバーチャルショップ(画像❶)を4週間の期間限定で開設し、ミラノ市内の旗艦店と連動した実験的な取り組みを行った。若年層を主なターゲットとして顧客との新たなタッチポイントをメタバース上で持ち、リアルとバーチャルが融合したユニークな顧客体験を提供するとともにオムニチャネル化を推進するのがねらいだ。
同バーチャルショップでは、商品を販売しない代わりに、店舗で購入時に利用できるポイントをQRコードで付与。ユーザーがゲーム感覚でポイントを集めながら店内を回遊して楽しめる仕掛けとなっている。一方、リアル店舗の旗艦店では、天井から壁、床、什器まで、一面を鮮やかなピンクに改装し、バーチャルショップの空間を忠実に再現。店舗にいながらメタバース上のバーチャルショップを巡るような感覚を味わえるという演出だ。
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