ヨークベニマル(福島県/大髙耕一路社長)が売場面積300坪の小型フォーマット店舗「ヨークマルシェ大和町店」(宮城県仙台市:以下、大和町店)をオープンしたのは2018年11月のこと。開店当時は「都市部の空白地帯を埋める小型店の実験店」として注目された同店。開店から約6年が経過し、売場はどう変化しあのか。久しぶりに現場を訪ねてみた。
調査日=2024年1月14、15日 ※本文中の価格はすべて本体価格
地方都市の小型店としては堅調?
仙台市の南東部に位置する若林区は、2015年に地下鉄東西線が開通したことから利便性が向上し、住宅地として発展しているエリアだ。とくに店舗東側徒歩約10分の「卸町」駅周辺には「イオンスタイル仙台卸町店」「西友大和町店」があり、店舗左右にはドラッグストアもあるなど、競合が激しい地域である。
ヨークベニマルは旧店「ヨークベニマル大和町店」の老朽化に伴い、18年1月に営業をいったん休止。同11月に店名を「ヨークマルシェ」と改め、品揃えを絞り込んで、新たなフォーマットで開店した。
東北屈指の人口密集地の仙台だが、首都圏の都市と比較すると絶対人口が少ない。ローカルの店舗はクルマでの来店が基本で、都市部と比較すると客層の幅が狭いなどハンディも多い。大和町店の店舗スタイルを首都圏で展開できるのであればその存在感は大きいと思われるが、地方都市では地域で絶対的な存在感がなければ運営の継続は難しい。
今回の調査では、週末午後に店舗を拝見したが、夕方5時ごろまで客足は途切れず、繁盛店とまではいかないものの、それなりに地域のお客に支持されているようだ。駐車場もコンパクトながら機能している。
大和町店の売場面積は約300坪。売場スペース構成比は通常店に準じており、生鮮売場が36%、日配売場が24%で合計60%を維持している。売上高の構成比もほぼ標準に近いと思われる。生鮮売場では青果、総菜を重点部門と位置づけ、スペースを取って売場展開していた。
青果売場を重点にスペースを割く
生鮮3品の売場を見てみよう。
青果売場は生鮮スペースの42%を占め、重点を置いている。入口すぐ右の壁面にある焼きイモを先頭に、44尺でカットフルーツ、レタス、ホウレンソウ、薬味、モヤシ、水煮などを配置。カットフルーツは「パイン」を128円、198円、298円の3ラインで揃えるほか、「フルーツオードブル」も3ラインで展開する。
サラダ系野菜ではレタス、ブロッコリー(各148円)、葉物ではほうれん草(158円)、白菜(1/4カット78円)、もやし(200g39円)など、値頃感のある価格で提供する。地場野菜の「宮城産野菜」コーナーも充実の品揃えとなっている。
精肉売場は奥の壁面右側16尺で豚肉を展開。チラシ商品をベースとした構成で、「国産豚小間切り落とし」「カナダ産豚ロース生姜焼き用・切身」(100g当たり138円)などを販売している。
牛肉は正面壁面24尺で地場の「宮城産仙台牛」の「肩焼き肉用」(同1075円)、「肩ステーキ用」(同1080円)などを販売。輸入牛はカナダ産「牛モモステーキ」(同298円)、米国産「アンガスビーフ牛プルコギ」(同178円)などで構成。輸入を訴求商品と位置づけ、幅広く扱っている。
鶏肉は国産中心で、「若鶏モモ肉唐揚げ・水炊き用」(同148円)などを販売。ローストビーフや肉加工品も充実していた。加工肉はセブン&アイ・ホールディングス(東京都)のプライベートブランド「セブンプレミアム」をベースに構成している。全体的にチラシ商品を軸に、売れ筋商品を並べる無難な構成と言える。
鮮魚は正面壁面38尺と左壁面12尺、そして平台で売場を展開。魚総菜は6尺で「セブンプレミアム」の焼き魚や煮魚などを定番商品として販売。次の12尺では魚卵や小魚、干物などの塩干を配置。そのほか売場奥のコーナーと左壁面で焼き魚、サーモン、タコ、刺身を展開している。
調査日は、チラシ掲載の「活力鍋」をテーマに「寒カキ」「寒タラ切り身」「活けじめ寒切り身」「海鮮しゃぶしゃぶ用寒ブリ」などを販売。刺身は「カツオたたき」(100g当たり278円)、「イナダ」(398円)、「3点盛り」(580円)、「4点盛り」(680円)、「本マグロ入り4点盛り」(1480円)などを展開する。販売量を考慮してか、売場全体に「量感」はそれほどなかった印象だ。精肉、鮮魚は販売力に見合った品揃えとなっており、堅実な対応であることは理解できるが、やや活気に欠ける印象だ。
後編では総菜売場と日配・加工食品などの売場を見ていきたい