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鳥貴族の救世主?トリキバーガー大井町店オープン!「ハンバーガー」業態に進出する理由と3つの差別化戦略とは

焼鳥居酒屋チェーン「鳥貴族」を展開する鳥貴族ホールディングス(大阪府/大倉忠司社長、以下鳥貴族HD)は、子会社の「TORIKI BURGER(同/髙田哲也社長)」を通じ、新コンセプトのチキンバーガー専門店「TORIKI BURGER(トリキバーガー)」を8月23日オープンする。今、ハンバーガー業態を新たに立ち上げる目的とその勝算は。17日に行われた試食会の様子と合わせてレポートする。

トリキバーガー1号店8月23日オープン その味は…?

 トリキバーガー1号店は8月23日、「大井町」駅(東京都品川区)から徒歩1分の好立地にオープンする。大井町駅はJR京浜東北線、東京臨海高速鉄道りんかい線など、いずれも利用客の多い3線が乗り入れるターミナル駅で、昼夜問わず周辺人口が多いことから選ばれた立地だ。店舗のキーカラーとして、「鳥貴族」と同様赤と黄を使用している。店舗面積は186.7㎡で、カウンター18席・テーブル36席を用意。想定客単価は800円。店内喫食のほか、ファミリー層などの複数名分のテイクアウト利用も見込んでいる。

日中帯メニュー


 メニューには、ジューシーに揚げたチキンフィレを挟んだ「トリキバーガー」、もも肉の照り焼きを使用した「焼き鳥バーガー〜てりやき〜」(いずれも単品税込390円/ポテト・ドリンクセット税込590円)など、鳥貴族を彷彿とさせる商品が並ぶ。特徴的なのは、米粉を使用した白バンズと蒸し鶏を使用した、「サラダチキン〜柚子胡椒マヨ〜」「サラダチキン〜バジル〜」などヘルシーさ重視のメニューも展開していることだ。国産素材の使用と合わせて、安全性や健康を気にする客層を取り込むねらいが垣間見える。一方で、チーズ、トマト、卵はそれぞれ50円追加トッピングすることもでき、ボリューム感を求めるお客にも対応する。

 試食会では「トリキバーガー」セットを試食。トリキバーガーは、100gの鶏胸肉を使用したチキンフィレとレタス、マヨネーズがサンドされており、シンプルながらもチキンのしっかりした食べ応えが感じられる。しっかりした味付けの一方で後味はあっさり目で、最後まで飽きずに楽しめるちょうど良さがある。セットのポテトは皮付きのじゃがいもを細めにカット。こちらもバーガー同様、他チェーンに比べてじゃがいもの素朴な味わいが感じられる仕上がりになっている。バーガーメニューは朝の時間帯が6種類、日中帯が8種類で、今後は年4品程度の新商品投入や入れ替えの実施を検討中という。

トリキバーガー(税込390円)。はみ出る大きなチキンフィレが特徴だ

第2の柱チキンバーガー

 現在鳥貴族は、直営383店、TCC(鳥貴族カムレードチェーン:フランチャイズ)232店、計615店(2021年7月末現在)の焼鳥居酒屋を全国に展開している。創業は1986年、成熟した居酒屋ビジネスの中で新規参入組として業績を伸ばしてきた。競合である「養老の滝」「村さ来」などの総合居酒屋チェーンに対し、鳥貴族は焼鳥専門かつ298円(税抜)均一で差別化を図っている。

 しかし創業より右肩上がりで伸びてきた業績も、新型コロナ禍に伴う外出自粛・アルコール提供抑制などにより苦境に陥った。2020年7月の売上高は275億円で、前年358億円を大きく割り込んだ。2021年7月期は業績予想を未定としているが、同社の月次ベースの既存店売上高対前年同月比は、2021年7月までの12か月中、4月を除く11か月は前年を下回っている状況だ。そもそも、コロナ禍がなくとも「鳥貴族」業態のビジネスは頭打ち傾向にある。コロナ前の2019年7月期からすでに既存店売上高は前年同月比実績を割り込み、店舗数もピークの679店舗(直営433・TCC426)から減り続けている。

 主力業態が伸び悩む中、鳥貴族HDが第2の柱に育てようとしているのがチキンバーガー専門店だ。3月公表の中期経営計画ではトリキバーガーの事業展開を打ち出した。鳥貴族事業の成長性回復(既存店売上アップ・店舗開拓再開)や生産性向上と同時に、「コロナ禍でも通用する新業態」を育て、10年後には「鳥貴族のDNA(チキン・国産・均一価格)を活かした業態の国内外展開により世の中を明るくしていくグローバルフードカンパニー」をめざすとするのが同グループの長期ビジョンだ。

トリキバーガーの差別化戦略

 飲食店ビジネスの多くが苦境に陥る中で、テイクアウトの比率が高いハンバーガーチェーンは堅調だ。日本マクドナルドホールディングスの2020年12月期連結売上高は2883億円で、5期連続の増収と好調を続けている。なお同社は、今期決算に関しても直近の業績好調を受け、売上高予想を3120億円(前年比108.2%)に上方修正している。

 ただし、市場規模は伸びているものの、ハンバーガーチェーン業界は典型的な「レッドオーシャン」だ。業界の雄マクドナルドに加え、モスバーガー、フレッシュネスバーガー、さらには高付加価値帯でもクアアイナ、バーガーキングなど多くの競合がしのぎを削っており、ビーフバーガーに限れば、入り込む余地はないように見える。

 そこでトリキバーガーが掲げるのが、次の3つの差別化戦略だ。

 一つはメーン食材がチキンであることだ。アメリカでは、ジョージア州を拠点とするチキンバーガー専門店のChick-fil-A(チックフィレイ)が業績を大きく伸ばしている。昨今のヘルシー志向が人気のカギとされており、この波はいずれ日本にやってくる、と鳥貴族HDは予測している。

 二つ目は国産素材だ。メーン食材の鶏肉だけでなく、バンズの小麦・レタス・トマト、さらにはソースなどの調味料などすべての食材で基本的に国内産を使用している。昨今高まる食の安全へのニーズに応える施策だ。

 三つ目は均一価格だ。トリキバーガーは、基本メニューのセット価格を590円に設定(朝メニューは490円)、お手頃価格で高付加価値のチキンバーガーを提供する。
これら3つは、鳥貴族事業で30年にわたり培われてきたコンセプトでもある。鳥貴族とトリキバーガーがシナジーを発揮しつつ、中長期的な成長をめざすのが同グループの戦略だ。

 店舗あたり年商2億を目標に据えるトリキバーガー。3カ年で直営10〜20店舗体制を構築し、将来的には国内1000店舗をめざす。3カ年以降にはフランチャイズ導入体制も構築する予定だ。競合の多いハンバーガー業態で、鳥貴族で培った地力がどう通用していくのか、今後に注目だ。