「無印良品」を運営する良品計画(東京都/松﨑曉社長)は5月14日、神奈川県横浜市の「無印良品 港南台バーズ」(以下、港南台バーズ店)を増床リニューアルグランドオープンした(1階の非食品売場は4月22日に先行オープン)。「クイーンズ伊勢丹」を展開するエムアイフードスタイル(東京都/雨宮隆一社長)や水産専門店と共同で運営する「食の大型専門店」を導入した関東最大級の店舗だ。
関東の店舗で初めて生鮮フルラインの品揃えを実現
港南台バーズ店があるのは、JR根岸線「港南台」駅前にある大型商業施設「港南台バーズ」の地上1階と地下1階だ。もともとは百貨店の「髙島屋港南台店」があったが、2020年8月に撤退。「食品の専門店売場がなくなって困っている」という声が多数あり、良品計画に声がかかったという。
今回の改装における最大のポイントは、生鮮食品をフルラインで品揃えする「食の大型専門店」を地下1階に導入したことだ。食品スーパー(SM)としての機能を担う形態での出店は、「無印良品 イオンモール境北花田」(大阪府堺市)、「無印良品 京都山科」(京都府京都市)に続いて3店舗目となる。
港南台バーズ店の食品売場の大きな特徴は、「クイーンズ伊勢丹」を展開するエムアイフードスタイル、水産専門店の中島水産(東京都/中島明社長)と良品計画が共同で運営している点だ。先の2店舗では地元の専門店がコンセッショナリーとして各部門を運営する形態もみられたが、今回のようにSMチェーンと共同で食品売場を展開するのは初の試みである。「(クイーンズ伊勢丹は)一テナントとしての出店ではなく、お客さまのために一緒に何ができるかを考えていく」(三品正洋店長)
「クイーンズ伊勢丹」は三越伊勢丹ホールディングス(東京都/細谷敏幸社長)傘下の高質SMとして知られる。同じ施設内には「相鉄ローゼン」があり、周辺にもいくつかのSMがあるものの、旧髙島屋港南台店の利用客からは、「高品質な食品を購入できる場所がなくなった」という声が多く、お客が求める品質や商品情報の提供を実現できるパートナーとして、「クイーンズ伊勢丹」とタッグを組んだとのことだ。中島水産に関しては、髙島屋時代からテナントとして営業していた実績があり、一定の固定客がついていたため、引き続き出店を依頼した。
“交流の場”「キッチンカウンター」を初導入
食品売場の一番の目玉は、入口付近に設けられた約50㎡の「キッチンカウンター」だ。管理栄養士や食育アドバイザーなど食の専門家のほか、商品を卸す生産者が地域住民と交流する場として設けた。「店内で何を買おうか悩んでいるお客さまの声を聞いたり、食材の調理方法でわからないことを教えあったり、さまざまなたくさんの会話が生まれることを期待している」(三品店長)
店舗で販売する旬の食材を活用したオリジナルレシピの紹介を無印良品のアプリ「MUJI passport」などで行うほか、「キッチンカウンター」での調理の様子を店内のモニターやインスタグラムで毎日ライブ配信する。また、コロナ禍が収束した後は試食の提供なども想定しているという。
地産地消を推進 約3割が地元商品
食品売場では、生鮮食品を中心に地産地消を推進。「クイーンズ伊勢丹」の既存店よりも地元商品の比率を高めており、取り扱い商品全体の約3割が神奈川県産の商品だという。
農産売場では、「湘南野菜」を中心に地元産の商品を多く取り揃える。市場を通したものだけではなく、農家から直送される商品も取り扱っている。また、さまざまな好みに対応するため、高品質なフルーツトマトの品揃えを強化。既存店では1~2種類だったが、港南台バーズ店では十数種類の商品を展開している。
中島水産が運営する水産売場でも、地元産の商品を強化。髙島屋時代よりも神奈川県近海で獲れた丸魚のコーナーを拡大したほか、以前は他のテナントとの兼ね合いで品揃えしていなかった干物系の商品も導入している。
畜産売場では、神奈川県のブランド牛「足柄牛」を導入。一頭買いをすることで、ステーキ肉のほか、ハチノス(牛の第二胃)などの内臓肉も豊富に品揃えしている。また、家飲み需要の高まりを受け、おつまみになる加工肉なども強化。こだわりのソーセージなどを集積した「シャルキュトリー」コーナーを展開する。
これまでも良品計画は、多くの店舗で地域社会との関わりを深めるなか、自店でのSM機能強化や、既存SMとの協業に力を入れている。21年秋には「東武ストア」と隣接する「無印良品 東武動物公園(仮)」を開業予定となっている。この店舗でもSMとの協業における新たな取り組みがみられそうだ。