西友(東京都/大久保恒夫社長兼CEO)は2月25日、福岡県福岡市に「サニー福岡長浜店」を開業した。西友が九州で新規出店を行うのは実に約12年ぶり。福岡市のベイエリアにオープンした同店は、西友が昨今力を入れてきた「ローカライズ(地域対応)」の取り組みを全面的に導入した売場となっている。生鮮・総菜にフォーカスして、売場の様子をレポートする。
12年ぶりの新規出店は福岡市のベイエリア
福岡市中心部からほど近く、九州を代表する魚市場「福岡市中央卸売市場鮮魚市場(通称:長浜鮮魚市場)」があることでも知られる長浜エリア。この地の一角に新たに誕生した商業施設「キテラタウン福岡長浜」のテナントとして、福岡長浜店は開業した。西友の九州での新規出店は2008年以来、約12年ぶりとなる。
店舗周辺は近年マンションの建設が進んでおり、ファミリー層を中心に人口は増加傾向にある。現時点では半径1.5km圏内で世帯数は4万4316世帯、人口は6万8388人となっている。
競合店としては「マミーズ舞鶴店」「レガネットキュート赤坂門店(運営:西鉄ストア)」「マックスバリュエクスプレス港町店(同:イオン九州)」などがあるが、比較的小型の店舗が多い。1500㎡超の売場面積を有する福岡長浜店は地域ニーズに応えたきめ細かな商品政策(MD)と品揃えで、地域住民の取り込みを図りたい考えだ。
青果市場からの直送野菜を初めて展開 精肉も福岡産肉を拡充
導入部の青果売場から、徹底的にローカライズされたMDが展開されている。オープン日は売場トップに福岡産の「博多あまおう」、佐賀県産の「さがほのか」「シルキーホワイト」など約5種類の九州産いちごをボリューム陳列。ローカルと季節感を訴求していた。
また、福岡市内の青果市場から「直送」した野菜も販売。市場から店舗に直送する取り組みは、福岡県内の店舗では初めての試みとなる。さらに、福岡県を中心に九州地方の契約農家から直送した青果も「契約農家直送」と大きく看板を掲げて展開している。
続く精肉も、徹底したローカライズの取り組みが垣間見える。豚肉は福岡県産の「はかたもち豚」、鶏肉も福岡を代表するブランド鶏「華味鳥」を扱うほか、牛肉も鹿児島県産の黒毛和牛を目玉商品として展開。
また、「九州の味」と銘打ち、福岡名物の「もつ鍋」や「水炊き」、筑豊地方でよく食べられる「筑豊ホルモン」などのメニューを冷凍のキット商材などで提案している。
当日仕入れ・市場直送で鮮度訴求する鮮魚
総菜も「九州の味」にこだわる 日配・加工食品も地元メーカーの商品を積極的に導入
そして総菜も、「福岡の味」「九州の味」にこだわった商品のオンパレードである。
たとえば、福岡の郷土料理である「がめ煮」や、「明太高菜ご飯」をメーンに据えた弁当、佐賀県唐津市の「宮島醤油」を使った「若鶏もも竜田揚げ」、九州で広く食べられる「とん足の唐揚げ」「ゆず胡椒で食べる鶏の炭火焼」、宮崎発祥の「レタス巻」など、ユニークな品揃えとなっている。
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西友は2019年6月に中期事業計画「スパーク2022」を策定、その下で地域に密着しながら「よりよいものをより安く」を実現する「ローカル・バリュー・リテーラー」になることをめざしてきた。その一環として、各店や地域のニーズに対応した商品政策(MD)の展開にも昨今注力している。
一方、西友をめぐっては、昨年11月に楽天(東京都/三木谷浩史会長兼社長)と米投資会社のコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が西友株の取得を発表。3月1日に株式取得の完了を発表すると同時に、成城石井の社長やセブン&アイ・ホールディングスの常務執行役員などを歴任した大久保恒夫氏が社長兼CEOに就任している。
こうした組織体制の変化が、今後のMD面にどういった影響を及ぼすかは現段階ではわからない。ただ、西友の店づくりは大きな変化の途上にあり、徹底した地域密着型の売場づくりを志向した福岡長浜店の出店は、1つのマイルストーンであることは間違いないだろう。西友の今後の店づくりに与える影響を含め、注目の店舗である。