ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都/藤田元宏社長)傘下のマルエツ(東京都/古瀬良多社長)は11月19日、「マルエツ登戸駅前店」(神奈川県川崎市:以下登戸駅前店)をオープンした。同店のオープンによって、神奈川県下のマルエツは49店舗、全体では302店舗となった。
駅至近の好立地、21年7月にはオーケーが参入予定
マルエツ登戸駅前店は、小田急電鉄小田原線・JR南武線「登戸駅」から徒歩1分、駅西側約75mの好立地にオープン。周辺には建設中の商業ビルやマンション、再開発予定の空地が目立ち、これからの人口増加が見込めそうな立地だ。半径500m圏内の人口は1万977人/7025世帯。このうち単身世帯が65.0%、41.5%が25~44歳となっており、一人暮らしの若年層が主要な顧客層となる。競争環境としては、同じく登戸駅至近に「味の食彩館のぼりと」があるが、駅の反対側に位置するため競合の度合いは比較的低い。現状、それ以外の競合6店舗とは約400m~1㎞とやや距離があるが、21年7月、オーケー(神奈川県/二宮涼太郎社長)が200m以内の至近距離に新規出店する予定となっている。そのため登戸駅前店ではオーケーとの競争を見据え、周辺需要の高い即食・簡便性に注力した売場づくりを行っている点が特徴だ。
登戸駅前店の売場面積は972㎡で、エスカレーターを設けた2フロア構成の店舗。1階に総菜、ベーカリー、冷凍食品、酒・飲料など即食・簡便性の高い商品を、2Fに生鮮や調味料などを配置している。取り扱いSKU数は計9003、このうち生鮮3部門で974、デリカ208となっている。
単身世帯の簡便性を重視した売場づくり
若い単身世帯が多いという周辺地域の特性を踏まえ、同店では即食性、簡便性の高い商品をとくに意識して取りそろえている。
店内製造の総菜では、専用の窯で焼き上げた「手作りピッツァ」や、一品でも十分な食べ応えのある「ローストビーフサラダ」「サーモンサラダ」などを展開。女性向けにはボリュームを減らした「ミニ丼」やヘルシーさを重視した「彩りベジ弁当」、ボリュームのあるメニューを求める層向けには「鉄板焼きのこだわりハンバーグプレート」や、同社オリジナルのブランド牛を使用した「優夢牛の鉄板焼きグリル」など、幅広いニーズに応えられる品をそろえている。
電子レンジなどで加熱するだけで食べられる簡便性の高い商品も豊富だ。鮮魚売場では、パックごとレンジで温めるだけで本格的な魚メニューが楽しめる「sea kitchen」シリーズを展開。「海鮮アヒージョ風」「いかのラタトゥイユ風」など、単身者が一から調理するにはややハードルの高いメニューを中心に販売する。ほか、精肉売場では「合鴨すき焼き鍋」「牛もつ鍋」などの個食鍋を、冷凍食品売場では解凍するだけでワンプレートメニューが完成する「ワンディッシュ・デリ」シリーズを取りそろえた。
また、コロナ禍での“家飲み”需要を受け、おつまみのラインナップを強化していることも特徴のひとつだ。とくにナチュラルチーズの品ぞろえを強化し、チーズをさまざまに風味付けしたオイルでマリネした「チーズピンチョス」をマルエツで初めて導入した。また、精肉売場では「おつまミート」と称したコーナーを設け、「皮付き豚角煮」「砂肝ねぎまみれ」など、アルコールとの相性を重視した商品を多く用意した。酒類自体も、とくに需要が拡大した缶チューハイの品ぞろえを、レモンフレーバーの商品を中心に強化した。
品質重視のニーズにも応えるラインアップ
生鮮食品でも、手間を省いたカット野菜やあらかじめ骨を取り除いた「骨取りさかな」、使い切りの少量パックなどを豊富に用意すると同時に、健康志向や質にこだわる顧客向けのラインアップも用意した。青果売場ではオーガニック野菜をコーナー展開するほか、全国の農家から直接仕入れた野菜を「農家の直売所」としてコーナー化する。精肉売場では、オリジナルブランド「優夢牛」はもちろん、鹿児島県産黒豚や「桜もち豚」などのブランド肉も取りそろえた。鮮魚売場では、週末のみの限定品として「生本まぐろ」を販売する。
同店の年商目標は14億4000万円。10月31日に同店から約300mの距離にあった「フレスコベンガベンガ登戸店」が閉店したということもあってか、開店から多くの客が詰めかける様子がみられた。来夏からは低価格販売で波に乗るオーケーと競合することになるが、品質の高さや豊富な即食ラインアップで差別化を図る。