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今度はパン専門店 ゴディバブランドが多角化でむしろ輝く、マーケティングの極意とは

ゴディバ ジャパン(東京都/ジェローム・シュシャン社長)が都内にパン専門店をオープンした。名称は「GODIVA Bakery ゴディパン 本店」。ベーカリーブランド単体としては全世界初出店となる。

1号店を有楽町にしたシンプルな理由

以前は大阪の物産店があった東京交通会館1階の一角

 暑さ厳しい真夏の有楽町。ゴディパンの世界1号店は、この地に約60年の歴史を刻む、東京交通会館の1階(東京都千代田区)でオープンを迎えた。

 コンセプトに『町のパン屋さん meets ゴディバ』を掲げる「ゴディパン」。有楽町エリアは、すぐ隣の銀座の先端性や華やかさとは異なり、劇場や家電量販店、一流ホテルにちょい飲みできる飲み屋が混在する親しみやすさがある。なにより東京交通会館は、物産展や飲食店などが入る、誰もが足を運びやすい”古参ビル”で、うってつけの立地だった。

 「ゴディバのチョコレート店に来店される方は、あらたまった贈答用に年に数回利用されるお客さまや、自家需要でもご褒美など特別な時に召し上がる方が多いと思われる。パンは場面を選ばず、年齢問わず朝食からでも食べられる。ゴディパンは日常の中でゴディバをお楽しみいただける身近なベーカリーブランド。『パン』を通してチョコレートやカカオの魅力を届けたい」と同社。この想いを実現するために、物件選びも含め、2年以上の歳月を費やしたという。

こだわり抜いたゴディパンの品質

ココア生地に上部を覆われたカレーパン(前列中央)

 主役となるパンの質にもとことんこだわっている。カレーパン、コロネ、クリームパンなど、メニューにはパン専門店の定番がズラリ30種類前後。そのどれもにゴディバのこだわりがぎっしりと詰め込まれている。カレーパンにはチョコレートが配合され、個性の強いカレーとの絶妙のバランスがとられ、いわゆるカレーパンとは一線を画す。

 コロネは、クリームはもとより中に入ったチョコレートバーまでも店内で作られている。どれをとっても「さすがゴディバ」を感じさせる細部までのこだわりだ。

ブランド力を支える職人至上主義

  その完成度を支えるのが、ブーランジェの存在。ゴディバにはショコラティエ・パティシエ・グラシエはいるものの、パンの専門家はおらず、ゴディパンのために雇い入れた。

   ゴディバ ジャパンでは、シェフショコラティエであり、パティシエ、グラシエでもあるヤニック・シュヴォローが商品開発の全権を担う。彼の生み出したレシピやアイデアを、今回ゴディパンのために雇用したブーランジェが形にしていく。ゴディバの商品づくりのこだわりと、職人の専門性を重んじた開発手法こそが、ゴディバブランドが維持され続ける源泉だ。

なぜ多角化でもブランドが希薄化しないのか

ラウンド食パンやベルギーのテーブルパン「ビストル」なども揃う

 コンビニやスーパーマーケットで販売する製品もあれば、多様なコラボ展開による企画商品、業態ではGODIVA cafeGODIVA dessertなど、より幅広い層へアプローチを続けながら、同社は日本市場で確固たるポジションを構築してきた。ともすれば、ブランドイメージを下げかねないが、むしろファン層を拡大し、その特別感の喧伝に成功している。

 挑戦的にみえる施策の数々も、巧みなマーケティング戦略の一環であり、決してブランドの切り売りではない。それを可能にしているのは、同社がブランド=信頼ということを熟知しているからに他ならない。

 かつて、義理チョコをやめようと発信したこともあるゴディバ。その真意は贈り物は心を込めてするものだからというもの。裏を返せばそれだけ製品づくりに丹精を込めているということだ。

連日“完売”が続くゴディパンが拡げるファン層

約30種類のパンが並ぶ店内

 高級ブランドでありながら、300店を超える多店舗展開で販路を確保。マルチチャネル戦略で多様な製品を生み出し、さらに販路を拡張、日本市場で存在感を高めてきた同社。初のパン専門店は、すでにオープンから配布の整理券が全てはける状態が連日続いている。

 このパン専門店で初めて「ゴディバ」に触れた人がゴディバファンになり、これまでのゴディバファンがさらにその魅力を再発見するーーそんな連鎖によって、ゴディバブランドはより強固になり、より多くのファンを開拓していく。

ブランディングとはなにか。マーケティングの極意とは。同社の哲学から学べることは多い。