本連載の第1回で、三和(東京都/小山克已社長)の超繁盛店「スーパー三和ラゾーナ川崎店」(神奈川県川崎市)の売場をレポートした。推定年商70億円と同社ナンバーワン店舗と見られるラゾーナ川崎店だが、三和の幹部によれば、同店に匹敵する売上高を誇る店舗があるという。神奈川県横浜市のショッピングセンター「TRESSA (トレッサ)横浜」内に入る「スーパー三和トレッサ横浜店」だ。同店の強さを売場から探っていく。
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トヨタグループ運営の「オートモール併設型ショッピングセンター」
「スーパー三和トレッサ横浜店」(以下、トレッサ横浜店)が入る「トレッサ横浜」は、神奈川県横浜市港北区の住宅街に立地する。北棟(2007年12月開業)と、横浜環状2号線を挟んで向かいにある南棟(08年3月開業)の2棟からなるショッピングセンターで、敷地面積は約7万1000㎡、店舗面積は約6万㎡になる。管理運営はトヨタ自動車の100%子会社であるトヨタオートモールクリエイトが担う。
トヨタ・ダイハツブランドの販売店、整備工場からなる「オートモール」が北棟1~2階に入るトレッサ横浜。オートモール併設型ショッピングセンターはおそらくここが国内初であると思われる。南棟には三和のほか「無印良品」「セリア」などが入り、両棟合わせたテナント数は約220に上る。
トレッサ横浜店の売場を見ていく前に、トレッサ横浜のショッピングセンターとしての魅力に注目したい。筆者はこれまで多くの商業施設を訪ねてきたが、トレッサ横浜ほど「伸び伸びとした」印象のショッピングセンターはほとんどないと言っていいだろう。
一般にショッピングセンターは管理や規制が多いため、型にはめられたような売場になるケースがよく見られる。こうした「管理型」の商業施設の売場からは、「迫ってくるもの」が感じられないことが多い。一方、「非・管理型」のショッピングセンターであるトレッサ横浜では、それぞれのテナントが伸び伸びと運営をしており、感覚的な話になるが、売場そのものがゆったりとしている。
来店客の服装にも注目したい。一般的な大型ショッピングセンターは、外出用の服を着て訪れるお客が多いが、トレッサ横浜はそうした“おしゃれ着”のお客だけでなく、普段着のお客もよく見かける。中核の食品スーパーであるトレッサ横浜店の売場を見ても、いわゆる「商業施設内の食品スーパー」ではなく、「普通の食品スーパー」に近い雰囲気がある。
また、周辺に競合店が少ないこともあってか、客層は幅広く、週末がもちろん平日も店内には「ざわめき」がある。「オートモール」というユニークなコンテンツと、三和をはじめとした魅力あるテナント群が来店動機となり、同時に客層の幅を広げていると思われる。
売場面積約900坪、オーソドックスなレイアウトを採用
南棟のキーテナントであるトレッサ横浜店の売場を見ていこう。売場面積は約900坪(歩測)。壁面に青果、和日配、鮮魚、精肉、洋日配、パン・ベーカリーを配した、ラゾーナ川崎店と類似したオーソドックスなレイアウトを採用している。
導入部の青果売場は、ヨコ26尺タテ6尺の大型平台5台と壁面入口に配した12尺の催事売場、60尺の冷蔵ケースで構成する。調査日は、「巨峰」「シャインマスカット」「種無しピオーネ」(498~1580円)など旬のブドウ16品目を幅のある価格帯で提供。平台を使ったダイナミックな陳列は圧巻だ。売れ筋のレタス(98円)、「キャベツ」(158円)なども同様に量感ある陳列としており、こまめな補充により売場の状態を維持している様子が見て取れた。
青果と鮮魚の“つなぎ”の役割を果たしている和日配では、壁面に「漬物」と「麺」、平場に「豆腐」「豆・佃煮」「納豆」「卵」に加え、日配部門の催事スペースも確保するなど、非常に機能的な売場となっている。とくに力を入れているのが豆腐で、「富塚とうふ店」「京とうふ藤野」「大山豆腐」など品質にこだわった商品を豊富に揃えている。扱い品目も多く、和日配の要となっている。また、卵にも力を入れており、10個パック16品目を198円~258円の価格帯で提供する。
精肉は牛肉重視、鍋物販促を展開!
続く鮮魚は、平台と壁面の冷蔵ケース100尺で展開する。調査時は「家族団らん鍋」と題し、「海鮮寄せ鍋セット(2~3人前)」(780円)を目玉に、「ボイルほたて」「甘口たら切身」「加熱用生かき」といった鍋物商品を、ポイント販促を絡めながら売り込んでいた。
刺身も鍋物同様バラエティーに富んだ品揃えで、「刺身5点盛」(980円)、「8点盛」(2980円)など幅広い価格帯で提供する。まぐろにも力を入れ、「まぐろ切り落とし」(200g498円)、「本まぐろ中トロ」(100g680円)など各種サクを揃えている。
塩干は大半が自社センターから供給しており、「銀鱈味噌漬け」「真ほっけ開き2枚」(各398円)、「干物赤魚」(598円)などを品揃えする。丸物は「生秋刀魚」(1尾158円)、「生スルメいか」(1杯358円)など「物珍しさ」よりもお客にとっての「馴染み深さ」を重視したラインアップとしているようだ。全体的に、利益確保を念頭に置いた商品構成を志向している印象だ。
店舗奥主通路沿いの壁面と平台で展開する精肉売場は、牛肉に重きを置いた構成になっている。調査日の週は鮮魚と同様、「鍋」をテーマとして販促を展開しており、「すき焼き」「つみれ鶏鍋」「黒豚しゃぶしゃぶ」といった鍋向け商品をメニューを提案しながら販売。国産牛は鹿児島産黒毛和牛のほか長野産の銘柄牛「アルプス牛」も品揃え。輸入牛は米国産・オーストラリア産で対応する。精肉の品揃えには自信を持っているようで、日替わり販促の目玉商品となっている。
後編では総菜・加工食品・酒類の売場を見ていこう。(次回へ続く)
(店舗概要)
所在地 神奈川県横浜市港北区師岡町700
売場面積 3031㎡
開店日 2008年3月27日
駐車台数 1300台(ショッピングセンター共用)
営業時間 10:00~22:00