新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大から約2年が経過し、消費者の生活は大きく変化した。リアル店舗はこれまで以上に独自の価値を磨き、来店動機を創出する必要に迫られている。そうしたなか本特集では、果敢に新しい店づくりを実践している、ビジネスの参考にしたい「今、見るべき」店を挙げ、解説したい。全2部構成で、PART1では「STORE OF THE YEAR2022」の入賞店舗を掲載、PART2では業界の注目テーマに沿って、その先端をいく19店を厳選し紹介する。
PART1 STORE OF THE YEAR2022
- 選考基準
2021年1月1日から12月31日までに開業・リニューアルした店舗、商業集積で、インパクトがあり、これからの店舗開発に影響を与えるような斬新なコンセプトを持つ店舗と商業集積専門店 - 選考方法
本誌の定期購読者、小売企業広報担当者、有識者、その他の小売業関係者からFAX、インターネットにて投票を受け付けた(期間:2022年1月28日から2月11日)※商業集積部門と専門店部門はインターネット上でのみ投票を受け付けた - 順位決定
読者、小売業関係者、有識者、本誌編集部などの投票により総合順位を決定した※写真・記事は、取材時のものをベースにしているため現状とは異なる場合があります
コロナ禍で勢い増す
有力SMの旗艦店が上位
コロナ禍ではEC化がいっそう進み、ドラッグストア(DgS)をはじめとした異業種との競争も激化している。こうしたなか食品小売業各社が生き残っていくためには、あらためて自店の存在価値を見つめ、 お客に“選ばれる店”になる必要がある。
“選ばれる店”とは、時代に即した品揃えや価格、店づくりなどで差別化を図り、他にはない買物体験の提供によって、来店動機を創出できる店である。本特集では、コロナ禍が長期化し先行き不透明な環境の今だからこそ、そうした店づくりのヒントを提示したい。
まず、PART1では今年で第35回を迎えた本誌恒例企画「STORE OF THE YEAR」で入賞を果たした店舗と商業集積、専門店を発表し、評価を得た理由を解説していく。
今回、栄えある1位に輝いたのは、ヤオコー(埼玉県)の「ヤオコー和光丸山台店」だ。ヤングファミリー層への対応を強化した旗艦店モデルの構築をめざした店舗で、各社の業界幹部からも「参考にしている店」として年間を通じて頻繁に名前の挙がった店である。生鮮売場と総菜売場を一体的に配置した買物意欲を刺激する売場づくりや、総菜や冷凍食品、スイーツなどを中心とした新しい商品政策(MD)への挑戦などにより、果敢に需要を切り開く同社の姿勢を賞賛する声が多く寄せられた。
2位はライフコーポレーション(大阪府)の「ライフグランシップ大船駅前店」だ。同社が新たな旗艦店と位置づけ、将来的に年商50億円をめざす店である。コロナ禍でのニーズの変化への対応に積極的にチャレンジしているほか、同じ商業施設内に出店した自然派食品スーパー(SM)「ビオラル」を合わせた、総合力の高いMDが支持を得た。
3位入賞は、「今、最も勢いのあるSM」との呼び名も高いロピア(神奈川県)が、京都に初進出を果たした「ロピア京都ヨドバシ店」だ。関西エリアでは7店目となる同店の特徴は、「質感」を重視した売場づくりに挑戦している点だ。従来よりも落ち着いた内装や、高質フルーツをショーケースで販売するなど、これまでにないロピアの店づくりが話題を呼んでいる。
10位以内には、完成度の高い小型店として「ヨークベニマル仙台小松島店」、食品とDgSを融合させた店づくりを実施している「サミットストア亀有駅北店」と「ウエルシア イオンタウン幕張西店」がランクインするほか、「西友イーアス春日井店」「マルエツ船橋三山店」「フーコット飯能店」など有力SMが新しい店づくりに挑戦した店舗がランクインしている。
エンタメ、環境配慮…
高まる需要が結果に反映
商業集積部門の上位にはセブン&アイ・ホールディングス(東京都)の「セブンパーク天美」、イオンモール(千葉県)の「イオンモールNagoya NoritakeGarden」、イオンリテール(千葉県)の「そよら新金岡」などがランクインした。コロナ禍での長引く外出自粛生活やリモートワークの普及により、近隣のSC に求められる役割も変化しつつあるなか、エンターテインメント性の追求、オフィスとの融合、子育て対応に注力した施設がランクインした。
専門店部門では大創産業(広島県)の「Standard Products 渋谷マークシティ店」が、環境にも配慮した新業態で時代に即していると多くの票を集めた。また、ドン・キホーテ(東京都)のカテゴリー特化店舗「お菓子ドンキ・お酒ドンキ」や、ラオックス(東京都)のアジア食品専門店「亜州太陽市場吉祥寺店」など、カテゴリーに特化した専門店が入賞を果たしている。
メタバース上の店やOMO型ストアも登場
PART2 7つのテーマから19店を紹介
PART2では、7つのテーマを挙げて、編集部で厳選した時代の先をいく店が登場する。テーマと登場店の一部を列挙すると、まず、出店競争が激化するなか、競争力を発揮できる新フォーマット開発が各社で進んでいる。そうしたなか直近で開業し話題を呼んでいる新業態としてカスミ(茨城県)の「BLANDE(ブランデ)」の店づくりをレポートする。
コロナ禍での競争激化で、苦境に立たされている店は少なくない。そこでテーマにあげたのが、店舗改革の注目事例だ。地方百貨店の衰退という逆境のなか大改装を実施し、黒字転換を可能にしている「松山三越」のほか、インバウンドが消滅した東京・銀座に活気を取り戻そうと、五感に訴えかける店づくりを実践している「ユニクロ銀座店」も、話題の旗艦店としてクローズアップした。
リアル店舗にとって今後の競争力の差に大きな影響を与えると言われるのが、デジタル活用だ。その先端事例として「メタバース(仮想空間)」上で展開するショッピングモールアプリ「メタパTM(Metapa)」や、昨今増加中のOMO(オンラインとオフラインの融合)型ストアもとり上げている。
コロナ禍では消費ニーズも大きく変わりつつあり、MDのアップデートも求められている。そこで消費者に浸透しつつある「サステナブル」「冷凍食品」をキーワードに、Z世代やミレニアル世代向けにプラントベースドフードを提唱するカフェ「2foods」や、家庭でレストランのような本格料理を楽しむという冷凍食品の新しい食シーンを提案する「Z’s MENU」ショップも紹介する。
そのほか、独自性や来店動機を創出できるカテゴリーとして各社開発に力を注ぐ「総菜」「スイーツ」について、専門家によるトレンド解説と、おすすめの専門店も収録した。
このように本特集では計47店を1冊に集約した。これらの店舗に共通するのは、需要開拓をめざし、果敢に新たな店づくりに挑戦している点だ。ECの拡大や店舗間競争の激化によって、リアル店舗には、これまでに以上に「訪れる理由」が求められている。それはすなわち、価値を創造できる力がいっそう必要とされているということであり、本特集がその一助となれば幸いだ。
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