電子マネー普及のために安心感と利便性を追求
本格的な普及が始まった電子マネーの潜在的な市場をみると、小売・サービス全体の販売高が191兆円以上と言われる中で、クレジット決済など販売信用は43兆円にとどまり約150兆円は現金決済とみられている。また、現金決済のうち約60兆円は3000円以下の小額決済が占めている。つまりカードビジネスとして取り込めるのが100兆円程度はあるのではないだろうか。そこでセブン&アイHLDGS.として独自の電子マネー「nanaco」を2007年4月に導入したのは、3000円以下の小額決済の利便性を高めることと、グループ共通の決済手段、共通のポイントサービスなどにより営業効率を高めるインフラ構築を狙った。そのために電子マネーは利用可能な場所やチャージ方法など分りやすさを追求し、独自に導入することでコストの外部流出を防ぎ顧客サービスの向上に努め、nanacoをベースに新しいマーケティング方法も追求した。
nanacoは9月30日現在、会員数631万人、9月度の月間利用件数は2900万件、利用加盟店数2万962店舗ということになっている。nanacoのサービスを開始した時から現在でも注目しているのは1日・1店舗あたりの利用件数。加盟店が増えても使われなければ意味がない。nanacoは48件の利用、セブン-イレブンに限れば70件以上の利用があり他のプリペイド方式の電子マネーよりはるかに利用されている。10月末では会員数は660万人でこのうちセブン-イレブンで526万人、モバイルもようやく100万人を超えた。利用可能店舗は2万1120店に増え、グループ外にもJCBとの提携により加盟店拡大を推進している。また他のプリペイド方式、ポストペイ方式の電子マネーと大きく異なるのは、コンビニの運営に合わせて24時間365日稼動のコールセンターで問い合わせを受け付けていることだ。
セブン-イレブンでは来店客が男性62%に対して女性38%、しかしnanaco会員で見ると男性51%に対して女性49%と女性の使用比率が高まっている。また30代、40代の利用率が高いという特徴もある。そしてnanaco利用の平均単価も高い傾向にある。これはポイント販促の効果が高いということだ。サラダ全品にボーナスポイント20ポイントをつけたらキャンペーン期間に販売数が増加したが、キャンペーン後も高い販売が継続している。また、ギフトカード市場拡大を予想し、7月末からはNTTカードソリューションと提携し「nanacoギフト」の販売を全国で開始した。これはIDタイプとカードタイプを揃えた。
電子マネーの課題は、お客様がなんとなく不安視していること。不正使用や不正入金などの事件で、そうしたイメージが定着してしまった。電子マネーを普及させるためには、業界全体が安心して利用できる環境を構築していくことが重要である。nanacoのコールセンターへの入電件数はサービス開始直後の07年6月には約4万件あった。直近では月2万件程度に落ち着いている。電子マネー発展のために、問い合わせはひとつも切り捨てない。
今後、さらに利便性を高めていくために銀行口座チャージなど機能の強化、行政や地域などと連携したサービスの拡大推進だ。すでに北九州市での地域ICカードとしての検討が始まっており、行政サービスへの展開も視野に入れていく。また、観光誘致に貢献するためのYOKOSO!JAPANカード実証実験、日本システムデベロップメント(NSD)が発行するnanaco機能を搭載した株主カード、東京都信用金庫協会との提携による地元商店街活性化への活用、セブン銀行によるnanacoポイントサービスなど新しい取り組みも続々とスタートしている。