これからの小売業界にとって重要なのは、顧客や市場、経営情報などさまざまなデータを分析しどのように施策に生かしていくかである。しかし、そのデータは膨大に存在しており、その中から重要な情報をいかにスピーディーに分析・可視化し施策展開していくかが求められる。今回のダイヤモンド・リテイルメディア・カンファレンスでは、データ分析と施策展開に注目し事例や最適ソリューションの紹介を行った。
【事例講演】
「スーパーマーケット実店舗ならではのID-POSデータ分析・活用」
「商品」・「顧客」・「店舗」の基軸からのデータ分析アプローチの検証と成果
コープデリ生活協同組合連合会
店舗営業部 マーケティングシステム企画 次長
斉藤 繁 氏
【講演】
「データの可視化・高速分析で流通・小売業の競争力を強化する」
セルフサービスBI Tableau による現場での実践的データ活用方法
Tableau Japan 株式会社
アソシエイトセールスコンサルタント
尾崎 直子 氏
【事例講演】
「経営に役立つクラウド・セルフサービスBIの活用」
ビッグデータの活用・可視化によるデータドリブン経営
嘉穂無線ホールディングス株式会社
代表取締役社長
柳瀬 隆志 氏
【事例講演】
「スーパーマーケット実店舗ならではのID-POSデータ分析・活用」
「商品」・「顧客」・「店舗」の基軸からのデータ分析アプローチの検証と成果
コープデリ生活協同組合連合会
店舗営業部 マーケティングシステム企画 次長
斉藤 繁 氏
ID-POSで客数を上げるという発想の転換
また個人の属性がわかったところでお客さまごとに売場を変えるわけにはいかない。だいいち、クラスタ分析したところでスーパーはマス化によるシステム産業であり、それを放棄することはできない。同じクラスタの顧客にクーポンを配るくらいなら、セールを打ったほうがより商品は売れる。リピート顧客だろうが一見さんであろうが売上は同じだ。「優良顧客が育つ」と説明されるが、実体験から言えば優良顧客は育たず、ひたすら右肩下がりで推移することがわかっている。少なくともデータはそう語っている。
一般論ではあるが、組織面でも商品部はベンダー依存が強く、ベンダーの意向を反映しがちだし科学的ではない業界常識にとらわれているケースが往々にして存在する。現状を考えれば、ID-POSの本来の目的をはき違えているという場合が非常に多いと感じている。
そこでわれわれは大胆に切り口を変えてみた。つまりクラスタ分析やDNA分析で客単価を引き上げるために単品を売るのではなく、とにかく客数を上げていくことに注力した。
端的な例では、今買ったばかりの商品のクーポンをレジで発行する仕組みをつくった。店舗だけで毎週15万枚と大量に配布している。つまり今買った商品は、お気に入りなので一定期間後にはまた購入する。これで来店回数が確実に増えるというわけだ。結果的にクーポン利用顧客の来店が1週あたり0.3回増えた。しかも客単価は平均より2割程度高いのだ。
従来は、クーポンを配って対象単品の販売数を数え効果を検証していた。しかしID-POSならば客数動向を追跡できる。スーパーの場合には顧客の絞り込みなど考えずに、まずはドカンと売って集客することに注力すべきであり、この価値観に変われなければID-POS導入は意味を持たない。
年間数億円レベルの利益改善効果を見込む
これを踏まえて「商品」「顧客」「店舗」の3基軸でそれぞれ施策化する。商品視点でのID-POS政策なら、同一顧客がA・B2つの商品を「同時併買」することはないが「期間併買」ならばAとBは代替可能商品であり同じカテゴリと考えられる。システム的に品揃えを改善することができる。顧客視点での施策では、カード保有で利用継続ならプリペイドカード化やインセンティブを強化して囲い込み、もし離反しそうな兆候があれば未利用化防止クーポンを打つ。長期未利用者には再利用促進クーポンを配布するなどの施策を行う。店舗視点では競合の台頭で不振な店舗は、競合との力比べではなく適切な対策のみを徹底する。
コープデリ店舗では今年3月から全店でプリペイドカードを導入した。従来のカードから3万枚程度は切替があるとみていたが、実際には22万枚以上になっている。インセンティブについては3カ月の買い上げが5万円以上または来店26回以上のロイヤル顧客を対象に5%優待割引を実施しており1日限り5%割引でも利用率は65%ある。
ID-POSのデータ分析から未利用化・利用減少化しそうな会員を予測できるようになった。その正解率は6割程度である。ただ長期未利用者への再利用促進クーポンについては、あまり効果がない。何もしなくても1%程度は再利用することがわかっているが、一度離反した顧客は簡単には戻らないので、離反する前に手を打つということだ。
そのほかにも競合対策パッケージについても実験を行っている。棚割需要分析ツールについてはすでに実用化しており、対象のカテゴリは売上高が0.9~1.4%程度の向上につながったと考えている。
ID-POS施策は、今後とも強化拡充していく方針。これらの施策を通じて年間数億円レベルでの利益改善があると考えている。最後に「数字はおもちゃではない。データに遊ばれてはいけない」というのが私なりの主張であり、商品部や運営部業務に寄り添えなければ何の役にも立たないと考えている。
【講演】
「データの可視化・高速分析で流通・小売業の競争力を強化する」
セルフサービスBI Tableauによる現場での実践的データ活用方法
Tableau Japan 株式会社
アソシエイトセールスコンサルタント
尾崎 直子 氏
誰でも簡単に使えるデータビジュアライゼーションツール
日々の生活の中やビジネスの中にはさまざまな情報、データがあふれている。ビジネスでも活用されている膨大なデータだが、データを眺めているだけではさまざまなチャンスを逸しているかもしれない。なぜならば、それらのデータから気づきを得て次のアクションを起こさなければデータはただのノイズになってしまうからだ。ではどのようにデータをビジネスに活用していけばよいのか。
データを見て直観的に理解できるデータビジュアライゼーションツール「Tableau」を提供しているTableau Softwareは、顧客がデータを見て理解し、活用できるように支援することをミッションとしている。「目で見てわかる」ということを重視しているTableauのソリューションは誰もが簡単に使えるデータビジュアライゼーションツールの「Tableau Desktop」に加え、「Tableau Desktop」で作成したダッシュボードとデータを共有するための「Tableau Server」と、「Tableau Server」のホスティング型サービスである「Tableau Online」がある。すでに世界で6万1000社を超えるお客さまがTableau を導入し、オフィスや外出先で簡単にデータ分析を行っている。
しかし、データを目で見て理解するということは具体的にはどのようなことだろうか。表など膨大な数字の羅列から何かの兆候を発見することは慣れていても難しい。そこで最初に手がけることは、数字をグループ分けすることなどにより、変化を理解しやすくすることだ。そうすることで数字を目で見て理解できるようになる。たとえば、従来はデータを貯めていても、その意味が見出せず、経験と勘や過去の成功体験により次のアクションを判断し、その結果からさらに経験と勘を頼りに…という循環が起きていた。この循環では分析が属人的になってしまい、次のアクションも属人的な判断に基づいてしまう。しかしTableauを使うことで、誰しもが目で見て理解でき、分析とレポートで示されたデータからの気づきが、次の具体的なアクションを計画し実行、さらに効果測定を加えて新たな分析とレポートにつなげていくという循環に変わる。経験と勘に頼った属人的なアクションからの脱却である。
意思決定のスピードと質の向上に貢献
ではなぜ今「セルフサービスBI」なのか。膨大なデータが企業を取り巻く一方、ビジネススピードが加速している現在では「ヒト=意思決定のスピード」であり、ヒトがつくったモノやサービスはビジネスの「品質」に関わってくる。それに加えて少ない「投資=コスト」で最大の効果を得ることが求められている。それら「ビジネスの品質」を少ない投資で最大の効果を発揮させることができるツールが、「セルフサービスBI」なのだ。
一般的なレポーティングではExcelに示されたデータをIT部門が加工して1週間、時には数週間をかけてまとめる。そのレポートを会議で報告する際に別の視点からの疑問が寄せられる。その繰り返しに対応するために数カ月も要してしまうことがある。ようやく疑問を解決できたとしても、ビジネス部門のニーズは既に別を向いており、ビジネスの環境も変化してしまう。つまりこれでは、「今」解決したいことに対応できないのである。
Tableauを使った分析でも同じように何気ない疑問から出発し、Tableauで分析することで可視化して気づきを得る。さらに次の質問がきても、瞬時にその他のデータを組み合わせて質問に回答し、それをタイムリーに繰り返すことができる。つまり意思決定の質とスピードの向上に貢献するわけだ。
また、Tableauはサポートとコミュニティが充実しているのも特徴である。一般のサポートと異なり障害だけでなく、使い方もサポート対象としていることに加え、製品を購入することで何度でもサポートを受けられることや、別途有償でトレーニングやコンサルティングサービスも提供している。ユーザーレベルでもFacebookの掲示板やコミュニティ、ユーザー会、業界内のミートアップなども行われている。
使い方に不安のある方や、BIツール初心者でも、安心して利用可能だ。
あなたもTableauをダウンロードし、ビジネスのスピードを加速させてみてはいかがだろうか?
◆Tableauの詳細はこちらから
https://www.tableau.com/ja-jp
【事例講演】
「経営に役立つクラウド・セルフサービスBIの活用」
ビッグデータの活用・可視化によるデータドリブン経営
嘉穂無線ホールディングス株式会社
代表取締役社長
柳瀬 隆志 氏
操作のシンプルさなど評価しTableauを導入
嘉穂無線ホールディングスは、もともと電気部品の販売から電気店として創業し、現在では電子工作キットなどを販売するELEKIT、山口県を含む九州北部を中心に63店舗を展開しているホームセンターのグッデイ、データ分析を事業化したカホエンタープライズを傘下に置く持ち株会社である。
Tableauを導入する以前は、POSデータなど大量のデータが生成されているもののデータの管理が不十分で、十分に活用できている状況ではなかった。必要な業務データを、マクロを組みデータベースから引っ張ってきて集計しExcelでの数値管理を行っており、生データからピボット、グラフを作成し、さらに個人で作成・管理していた。しかも膨大なデータを活用することは、業務システムへ負荷が大きいとシステム担当から言われて社内での連携もできていなかった。つまり価値のある大量のデータを、ほとんど経営に生かすことができなかったわけだ。
これを改善するため、データビジュアライゼーションツール「Tableau」を試験的に活用。求めていた簡単な操作でデータを可視化し、分析にかかる時間を大幅削減すること、さらにシステム部に負荷をかけず管理職や業務担当者が自らツールを操作して業務帳票を作成することが可能となった。
ツールの導入には、複数の製品を比較したが、Tableauの「操作のシンプルさ」「データ分析の速さ」「グラフの綺麗さ」「多様なグラフを簡単に出せる」という機能にTableauが優れていたため導入を決めた。使ってみると、今まで行ってきた分析は分析ではなかったということを思い知らされた。
データ分析ツールを使って大量のデータを活用するというのは初めてであり、Tableauで扱うデータ用の万能テーブルを作成するなど導入については慎重に進めた。まず2015年度前半に3人を初期ユーザーとして、機能評価やデータ活用推進チームを立ち上げて習熟に努め、さらに後半からは5人のコアユーザーを育成するとともに売上など営業部門の数値を中心に分析を開始し、Tableauの使い方だけでなく「統計の基礎講座」などの勉強会も実施。
そのコアユーザーを15人に増やし週次経営会議で実績報告をスタートするとともに会計、労務など管理部門数値の分析も開始。そして16年度後半からOnlineライセンスを購入して取引先、バイヤーやエリアマネージャーなど社内の他メンバーを含め150人以上に展開を広げた。
経験生かしデータ分析ビジネスもスタート
現在でも若手社員を中心に週1回、通称“Tableau道場”と呼ぶ勉強会を行っている。これにはシステム部門だけでなく、商品部や店舗運営部、マーケティング部などの社員も参加しており、毎回盛況である。また、Tableauの公式資格の取得をめざした勉強会も行っており、現在7人が資格を取得している。さらに今後、10人以上の合格をめざす。
社内研修の拡充だけでなく、バイヤーやエリアマネージャーなど職種別ダッシュボードを作成し展開を図っていること、さらに週次経営会議や店長会議、本部全体会議などでデータ分析結果を積極的に発信することでTableauの周知を図っている。
Tableauを導入し活用が進んでいることで社内のデータに対する考え方も変化している。まず手書きや手入力を避けてデータを入力し集計作業を自動化することで業務が効率化し、スピード感が生まれている。また、これまでシステム部門だけが理解していた、自社のデータテーブル構造が可視化されたことで、誰でも「どこにどんなデータがあるか」が容易に把握できるようになった。
データが可視化されることにより、それまで重視されてきた感覚や経験則ではなく事実であるデータに基づく議論ができるようになった。さらにセルフサービスBI化で、帳票作成のための人員や作業が不要になり、従来は1週間かかっていた作業が半日でできるようになるなど大幅な生産性向上も実現した。
社内にそうした経験や実績が蓄積されてきたことで、それをデータ分析サービスとして展開するためにカホエンタープライズという会社を設立し、17年4月に事業開始している。事業内容としては①データベース構築やTableau導入・活用支援などデータ分析環境の構築②企業システムのクラウド化支援③業務効率化や実務へのデータ活用といったコンサルティング業務―を3つの柱としている。すでにTableauライセンス販売では学習塾や食品メーカーやスーパーなどに実績を挙げている。
◆Tableau活用の詳細(動画)はこちらから
https://www.tableau.com/ja-jp/solutions/customer/kaho-musen-delivers-insights-minutes-instead-weeks-tableau-and-cloud-database