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包装米飯市場、時短・簡便ニーズにより売上堅調 24年夏は米不足のため需要増

簡便性や内食需要の増加を背景に、拡大が続く包装米飯市場。非常食用途にとどまらず、日常食として定着が進み、銘柄米や雑穀米などさまざまなニーズに対応した商品が広がる一方、原料価格の高騰や安定供給などが課題となっている。

米不足が需要を押し上げ金額PIは2ケタ増

 包装米飯は、地震や台風などの災害時の非常食として定着してきたが、近年は、家事・料理の時短化、簡便化といったニーズにより、日常使いが拡大している。

 KSP-POSデータによると、無菌パック米飯・レトルト米飯の期間通算(2024年8月~25年7月)の金額PIは6234円で対前年同期比22.4%増、数量PIは14.4で同3.5%増となった。とくに24年8月は米不足の影響で需要が急増し、金額PIは同74.3%増、数量PIは同54%増と大幅に伸長した。

銘柄米や雑穀米などさまざまなニーズに対応した商品が広がる一方、原料価格の高騰や安定供給などが課題となっている(i-stock/yasuhiroamano)

 新米が流通する秋以降は落ち着きをみせたが、米の品薄に伴う価格高騰を受け、25年春には各社が相次いで価格改定を実施。24年8月の平均価格404円に対し、25年7月は512円と、108円も上昇した。

 その結果、2月~7月の金額PIは2ケタ増を記録したものの、数量PIは4月以降前年割れが続き、7月は2ケタ減となった。数量減の要因は、価格上昇に加え、各社の出荷調整による品薄によるものと予想される。今後も原料価格高騰に伴う価格上昇が続くことが予想される。

防災意識の高まりでストック需要が増加

 包装米飯は、消費者のニーズの多様化に対応して、さまざまな商品が展開されている。容量面では「小盛り」や「大盛り」のほか、「やわらかめ」など食感に配慮した商品が支持を得ている。原料米では、北海道産「ゆめぴりか」や、山形県産「つや姫」、新潟県産「魚沼産こしひかり」など、各地の銘柄米が幅広く展開され、家庭でも産地ごとの食べ比べが楽しめるラインアップが拡充している。

 さらに、健康志向を背景に五穀、もち麦、麦、発芽玄米など雑穀米の需要も広がっている。食物繊維やビタミンなど栄養豊富な雑穀米は女性を中心に支持されており、今後も拡大が予想される。そのほか、糖質カットタイプも注目され、ダイエットや生活習慣病対策を意識した層に支持されている。さらに、赤飯、白かゆなどの商品もラインアップされ、ターゲットの裾野が広がっている。

 また、地震や豪雨などの自然災害の頻発を受け、家庭の防災意識の高まりからストック需要も増加。常温で長期保存が可能なほか、電子レンジが使えない状況でもカセットコンロがあれば、鍋での湯煎やフライパンによる加熱調理ができる点も支持されている。

 テーブルマークは、食べながら備える「ローリングストック」を提案し、賞味期限の近い商品を日常的に活用する消費スタイルを推進している。トレーから出したパックごはんをそのままフライパンで炒めるチャーハンやお鍋のシメの雑炊など、調理提案も強化し、消費アップに努めている。ローリングストックの定着を図る店頭販促物なども用意しており、防災週間だけでなく、年間を通してローリングストックの定着を図っている。

 今回の米不足を機に、新規購入や備蓄用途での買い置きが進んだ。世帯人数の減少や共働き世帯の増加といった社会構造の変化も追い風となり、無菌パック米飯市場は今後も堅調な拡大が見込まれている。

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