山梨県を中心に食品スーパー(SM)など47店舗を展開するオギノ(山梨県/荻野雄二社長)は、青果卸の甲府青果(山梨県/五味良夫社長)の子会社化以降、川上にさかのぼった強固なサプライチェーンを構築している。そのなかでめざすのは、単なる“地産地消”ではなく、SMが軸となって生産者、卸機能が介在する“地域循環型”の流通網の実現だ。オギノが進める「青果改革」の全貌に迫った。
青果卸の買収で産地とのつながり拡大
オギノは2023年11月、地元の青果卸・甲府青果を完全子会社化した。
甲府青果は、1906年創業の老舗青果卸だ。甲府市内の約2700坪の敷地に加工・パッケージ設備とコールドチェーンを整備し、県内のSMをはじめとする量販店に商品を供給してきた。オギノにとっては、50年来の取引先でもあった。
オギノによる甲府青果の買収は単なる卸機能の取り込みではない。甲府青果を子会社化したことをきっかけとして、オギノは青果の流通全体の見直しに取り組み始めた。山梨県内で青果の“物流”の基盤を得たことにより、川上の生産者とのつながりを一気に拡大させた。
このコネクションを生かし、高齢化や後継者不足に悩む産地とのコミュニケーションを強化することで、サプライチェーン全体の「売り手」の立ち位置から、川上の「生産」までさかのぼった取り組みを進めている。
甲府青果の機能活用で青果の鮮度がさらに向上
甲府青果が有する機能は大きく4つだ。①個包装の青果物を製造するパッケージ機能、②野菜や果実をカットし、カット野菜やカットフルーツをつくるカット機能、③商品を保管するDC(在庫型物流センター)としての機能、④商品を店舗に配送する物流機能、である。
オギノは甲府青果が持つこれらの機能を得たことで、仕入れ状況や販売動向をリアルタイムで共有しながら、商品の仕入れから加工、輸送、販売に至るまでを自社で完結できるようになった。
たとえば②のカット機能に関しては、キャベツや大根、白菜、カットフルーツなどの加工を行い各店に供給する。ただし全店がアウトパック化されているわけではなく、店舗の人員体制に応じて店内加工・アウトパックを柔軟に使い分ける体制をとっている。
また③④の物流機能については、産地から店頭に並ぶまでを一貫して低温で管理するコールドチェーンのシステムを採用。DCには約2300坪に及ぶ大規模な冷蔵施設を設置しているほか、バナナの追熟庫やミスト噴霧など鮮度保持のための高度な設備も有しており、競合に対して圧倒的に鮮度の高い青果の販売につなげている。
地場野菜をPB化、規格外野菜の活用も進む
前述のとおり、甲府青果の買収はオギノにとって、卸機能のみならず、甲府青果と取引していた地場の生産者とのコネクションが得られるというメリットもあった。その関係性を生かし、地場野菜の品揃えを拡充させているほか、生産者と連携した独自性の高い商品づくりも進めている。
実際にオギノの店舗の青果売場を訪れると、入口近くに
・・・この記事は有料会員向けです。続きをご覧の方はこちらのリンクからログインの上閲覧ください。
