メニュー

最新の流行グルメTOP10に見る 押さえておきたい“複雑な”消費者心理

 「ホットペッパーグルメ外食総研」は、2022年の流行グルメを調査した。その結果には、昨今の複雑な消費者心理が表れる結果となった。商品開発や売場提案で押さえておきたい傾向を伝える。

コロナ禍での
食のトレンドの変遷

 22年の食のトレンドには、長引くコロナ感染拡大の影響が大きく反映されている。

 コロナ禍において人々のライフスタイル、働き方は大きく変化した。その影響は食生活にも変化を及ぼしたのは承知の事実であろう。過去を振り返ると、コロナが猛威を振るい始めた20年の流行グルメは「非日常感の再現」そして「プチ贅沢」の2つであると述べた。自粛が続くなか、以前、外食で味わっていたものを自宅で再現したり、他のレジャーで消費が出来ないぶん、自宅での食事を少し贅沢にしたりする傾向が表れたのだ。

 コロナ禍2年目となる21年の流行グルメのキーワードは、前年から続く「ちょっと贅沢(非日常感)」に加え、「0.7食」、そして「健康」だった。

 「0.7食」とは、コロナ禍において日常的な活動量の低下により、お腹が減りにくくなり、1食を0.7食程度に抑える傾向から生まれた言葉で、「おやつ以上、食事未満の食べ物」のことだ。

 昨今、コンビニなどでちょっとボリューム感のあるスイーツや小さめの弁当などまさに「0.7食」といえる品が増えたことは皆さんもご存じではないだろうか。

キーワードは
「健康」「チートディ」

図1

 そしてコロナ3年目である22年9月に行った「ホットペッパーグルメ外食総研」の調査結果によると、22年の流行グルメに関するキーワードが2つ出てきた。

 1つ目は「健康」そして、2つ目は「チートデイ」だ。

 「チートデイ」は「好きなものを自由に食べてよい日」のことで、ダイエット中に設けると、その効率を上げることができるといわれています。

 二律背反しているように見えるこの2つのキーワードだが、長引くコロナ禍において、自制と欲望のはざまで揺れ動いている人々の傾向が表れる結果となった。

 調査結果を紐解くと、まず「コロナ禍で生活が変化したことによって、食べ物や食生活の意識で変わったことがありますか?」という調査項目に対する回答では(複数回答)、1位が「より節約したくなった」(28%)、2位が「健康に気を遣うようになった」(26.6%)、3位が「娯楽が減ったので食べ物でちょこっと贅沢をしたくなった」(25.4%)だった(図1)。

 1位・2位と3位は相反する回答ながらも僅差で、人々は長引くコロナ禍で節約や健康にも気を使いながらも、日々の「食」において「非日常感」を求めていると考えられる。

「マリトッツォ」に
「ショートケーキ缶」も

図2

 次に、調査では22年に流行したと思うグルメについて聞いた。するとTOP10 には「健康志向」のものが並ぶ一方、健康をめざすなかでは「背徳感」を感じてしまいそうな「チートディ」に食べたいメニューも多くランクインする結果となった(図2)。

 健康志向のメニューは、3位の「オートミール」や、4位の「乳酸菌飲料」、5位の「プロテイン」で、低糖質でヘルシーなものや、体を整える栄養素は含まれるものが挙げられている。

 
 一方で、「チートデイ」を連想するメニューとしては、1位は、前述した「0.7食」の代表格ともいえる「マリトッツォ」や、2位の「カヌレ」、6位の「韓国インスタント麺」のほか、7位には自動販売機で気軽に購入できる缶に入ったショートケーキ「ショートケーキ缶」など、カロリーなどを気にせず好きなものを食べたいという欲求を満たすようなメニューが並んだ。

1位は「0.7食」の代表格ともいえる「マリトッツォ」

2割以上の人が
「チートデイ」を実施

 ちなみ「チートデイ」の認知度は、「知っている人」は62.1%と約3人に1人、実施している人は22.6%という結果となり、比較的高いといえる。

 日常的には、健康に気を使った食事をして、ストレス解消や自分へのご褒美に「チートデイ」を設けるといったメリハリのある食生活を実施している消費者が増えているのであろう。新たな消費者の傾向として押さえておきたい変化だ。

 最後に、内食・中食・外食のボーダレス化はさらに加速している。内食・中食にもそれぞれの魅力があるが、外食には外食にしか体験できない価値がある。その場に行かなければできない体験からくる感動を味わえる外食マーケットの回復と、さらなる活性化を願ってやまない。

【執筆者】

有木真理(リクルート『ホットペッパーグルメ外食総研』上席研究員)
㈱リクルートライフスタイル沖縄の代表を務めるとともに、ホットペッパーグルメ外食総研の上席研究員として、食のトレンドや食文化の発信により、外食文化の醸成やさらなる外食機会の創出をめざす。自身の年間外食回数は300日以上、ジャンルは立ち飲みから高級店まで多岐にわたる。趣味はトライアスロン。胃腸の強さがウリで、1日5食くらいは平気で食べることができる。