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LINE・ヤフー・PayPayが販促DXを推進する新サービスを発表! 小売業のメリットは?

Zホールディングス(東京都)のグループ企業であるLINE(同)、ヤフー(同)、PayPay(同)の3社は2022年12月13日、都内で記者会見を開催し、2023年3月にオンラインとオフラインを横断する新しい販促プラットフォームをスタートすると発表した。国内最大規模のユーザー数を抱えるプラットフォームの連携は、小売業にどのようなメリットをもたらすのだろうか。

左からZホールディングスCo-CEO兼LINE社長の出澤剛氏、ヤフー社長CEOの小澤隆夫氏、PayPay社長CEOの中山一郎氏

アナログ中心の販促領域のDXを推進

「販促のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進する」

 会見に臨んだZホールディングスCo-CEO Marketing&SalesCPOでLINE社長を兼任する出澤剛氏は、新サービスについて力を込めて話す。

 従来の販促市場は、ダイレクトメールやチラシ、POP、値引きシールなどアナログな手法が中心で、かつ、さまざまな施策が乱立状態にあった。そうした状況下では、販促を展開するメーカー側は、「誰が実際に購入したのかというデータが得られない」「実施した販促策の効果を測定できない」という課題を抱えており、ユーザーと長期的、継続的な関係を構築できないでいた。

 また、ユーザー側は、販促が乱立しているため、「何がいちばんお得なのか」がわかりづらいという課題もあった。こうした販促領域における課題を解決すべく、今回Zホールディングスグループの3社が発表したのがマイレージ型の販促プラットフォーム「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」である。

小売業の負担はなし!

 同プラットフォームの概要を見ていこう。最大のポイントは、オフラインとオンラインを横断するかたちで販促策を展開できるという点にある。

 ユーザーが「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」に参加するメーカーの対象商品を、オフラインでは対象店舗でPayPay決済、オンラインでは「Yahoo!ショッピング」の対象ストアで購入すれば、それぞれの商品の購入金額に応じて「マイル」が貯まる。

 ユーザーは自身の購入した商品の購買情報を「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」のサービス画面上で確認でき、マイルが貯まるとPayPayポイント還元などの特典を受けられる。ユーザーはLINE上で「お得」な情報を知らせるオファーを受けられるのも特徴の1つだ。

 プラットフォーム名に「マイレージ」とあるためわかりづらいが、従来のPayPayポイントに代わるポイント(マイル)を新たに付与するというものではなく、対象商品の「購入金額」をマイルとみなし、これが貯まるとユーザーは特典を受けられるという仕組みだ。ちなみに特典の原資は同プラットフォームに参加するメーカーが負担するため、小売業のコスト負担は発生しないという。

 会見に出席したヤフー小澤隆夫社長CEOは「一見すると、単純なサービスのように見えるが、圧倒的なユーザー基盤がなければ成立しない」と自信を見せる。

気になる小売業のメリットは?

 では、同プラットフォームに参加する企業はどのようなメリットがあるのだろうか。

 メーカー側のメリットは大きい。「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」に参加するメーカーは、ユーザーのオフラインとオンライン双方での購買行動の傾向を把握でき、購買データを活用した継続的かつ効果的な販促策を展開することができる。
 
 「重要なのは1回の購入で終わるのではなく、特典を受けるには何回も対象商品を購入する必要があるという点だ。従来は1回の購入でポイントを付与していたが、今回のマイレージでは(ポイント還元を受けるには)何回か商品を購入する必要がある。『また買うといいことがある』ということをお客さまに認識してもらうのがマイレージの本質だ」とヤフーの小澤社長は説明する。その結果として、メーカー側は、LTV(顧客生涯価値)の最大化を実現できるとしている。

 また、「購入20本で1本無料」、あるいは「オリジナルグッズ進呈」といったキャンペーンも可能になるほか、購入実績に応じて価格を変動させるなど「ダイナミックプライシング」を実施することもできるため、ユーザー側もさまざまなかたちで「お得」を享受できるようになる。

 では、小売業のメリットは何だろうか。同プラットフォームに参加する小売業は、「この商品のマイルを溜めたい」というお客が自店に来店することが期待される。前述のとおり、小売業が同プラットフォームに参加するためのコスト負担はないため、メーカーの原資を使って、来店数および客単価のアップが見込めるというわけだ。

販促領域で売上規模1000億円へ!

 LINE、ヤフー、PayPayの3社は今後、デジタル販促領域を開拓し、1000億円の売上規模をめざすとしている。「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」では、今後、同プラットフォームに参加するメーカー・小売業を集める考えで、2022年12月時点では、メーカー側はアサヒ飲料をはじめとした大手飲料メーカー、消費財メーカーがすでに参加を決めているほか、小売側では、「Yahoo!ショッピング」のほか、「オーケー」「ウエルシア薬局」「サンドラッグ」「スギ薬局」「ツルハドラッグ」などの参加が決まっている。

 さらにLINE、ヤフー、PayPayの3社は同日に、「LINE・Yahoo! Japan・PayPay販促コンソーシアム」を設立すること発表している。このコンソーシアムでは、メーカー企業への CRM機能の提供と、「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」など今後展開していく販促サービスの核となる「リアルタイムPOS連携」の実現に向け、Zホールディングスグループの3社と参加企業間で協議をしていくという。

 同コンソーシアムにはすでに、「オーケー」「ウエルシア薬局」「コーナン」「サンドラッグ」「スギ薬局」「マツモトキヨシ」などの参加が決まっており、2023年3月の「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」の提供開始時には10社以上が参加する予定だ。

 LINE、ヤフー、PayPayが推進する「販促のDX」は小売業にどのような変化をもたらすのか。現状、メーカー側が享受できるメリットと比較すると、小売業が得られるメリットは限定的な印象だが、今回発表したマイレージおよびコンソーシアムに参加する企業が増えていけば、小売業の収益向上に大きく寄与するさらなる新サービスの登場も期待できそうだ。