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成長株の「健康・機能性食品」売れ筋トレンドを読み解く4つのキーワード

昨今の健康志向の高まりを受けて、ユーザーが拡大している健康・機能性の食品群。今期は「食物繊維」「たんぱく補給食品」「美容ドリンク」「完全栄養食」の4つのカテゴリーを取り上げ、マーケットのトレンドを探る。

マーケットトレンド①食物繊維
【食物繊維の推奨摂取量が従来の基準より1g 増加】

多くの人が感じている食物繊維の摂取不足

 富士経済によると、2024年の食物繊維の原料成分の市場規模(予想)は対前年比2.4%増の281億円となった。【図表】の15年から27年(予想)の市場規模の推移を見ても右肩上がりで成長を続けており、今後も緩やかな成長が続くとみられている。

  厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」ではエネルギーや各栄養素の基準値の見直しが行われたが、成人1人当たりの食物繊維の推奨摂取量は従来の基準よりも1g増加し、1日当たり25g以上に変更された。これは食物繊維が生活習慣病のリスク低下に寄与することが明らかになったため、とされている。

 一方で食物繊維の目標摂取量125gに対し、摂取量中央値は13.3gになっており、生活者の多くが食物繊維の摂取不足となっている。

 厚生労働省の「令和5年国民健康・栄養調査の結果」によると、直近の野菜の摂取量は男性で262.2g、女性で250.6gとなっており、男性は直近の10年間、女性も15年以降で減少傾向にあり、年代別で見ると若年層ほど野菜の摂取量が少ない。

 食物繊維不足に悩む人は性別年代問わず幅広いことから、各メーカーは食物繊維を配合したさまざまな商品を展開している。

左から大塚食品「マンナンごはん・もち麦・玄米入り」、まるか食品「ペヤング食物繊維たっぷりソースやきそば」、不二家「モーニングマアム〈バナナ〉」、キリンビバレッジ「トロピカーナ エッセンシャルズ 食物繊維」

 大塚食品は、20253月に「マンナンごはん・もち麦・玄米入り」を発売。同品は、こんにゃく生まれの米粒状加工食品であるマンナンヒカリと、もち麦、玄米、白米を使用したパックごはんで、白米と比べてカロリーが低く食物繊維が豊富に含まれている。

 まるか食品では、カップ焼きそばの定番「ペヤング」から高食物繊維小麦粉「アミュリア」を100%配合した麺を使用した「ペヤング食物繊維たっぷりソースやきそば」を発売。不二家は、朝食としても手軽に楽しめて小腹が満たせる食物繊維入りソフトクッキー「モーニングマアム」を昨年7月から展開し、今年の春からは新フレーバーとしてバナナ味を投入している。

 キリンビバレッジは、美容・健康ドリンク「トロピカーナ エッセンシャルズ」の中味、パッケージをリニューアル。同シリーズでは「食物繊維」のほか「マルチビタミン」「鉄分」「マルチミネラル」を展開しており、果実のチカラで生活者の健やかな毎日をサポートしていく。

マーケットトレンド②たんぱく補給食品
【プロテインブーム以降も堅調に推移 たんぱく訴求コーナーでトライアルを促進】

アイテム数の拡大により
小幅ながら需要拡大続く

 富士経済によると、たんぱく補給食品の2024年の国内市場(見込)は対前年比2.8%増の2763億円となった。

 【図表】のたんぱく補給食品の国内市場推移を見ると、15年に各種メディアからたんぱく質の重要性が発信されたことで、たんぱく補給ブームが発生。筋トレをはじめとした軽い運動の習慣化やインフルエンサーによるプロテインの紹介が増加したことも、新規ユーザーを取り込むきっかけとなった。

 コロナ禍に入ってからも、コロナ太りの解消需要が発生したほか、メディアやインフルエンサーを通じた情報発信によりトライアルが増えたことで、21年までは前期比10%を超える大幅伸長が続いた。

 22年以降はブームも一段落し、メディアの露出減少やライトユーザーの離脱がみられる。しかし、プロテインについてはヘビーユーザーを中心に引き続き需要が増加。また、毎日の食生活に取り入れやすいめんやスープ類、ソーセージなどの食事メニューや、栄養素をバランスよく含むシニア向けの経口栄養流動食など、加工食品タイプのたんぱく補給食品も増加傾向にある。

 プロテインについても、ライトユーザーがたんぱく補給の重要性を感じてリピーターとなるケースや、プロテイン入りのバーや、パウチタイプのゼリーユーザーがコストパフォーマンスの高い粉末タイプのプロテインへシフトする動きもみられている。

加工食品タイプの増加が
市場の拡大に貢献

左からフジッコ「朝のたんぱく おまめさん」、日清食品「カップヌードルPRO 高たんぱく&低糖質さらに塩分控えめ」、はごろもフーズ「ディッパーシーチキン+Beansマヨネーズタイプ」、ニチレイフーズ「everyONe meal」

 ユーザーの拡大に貢献しているのがたんぱく質を豊富に含む加工食品の存在だ。ニチレイフーズの「everyONe meal」は素材の味や香辛料を生かした調理法で配合をコントロールする独自の「おいしさ再現技術」を採用した新ブランド。100g当たりたんぱく質を9g以上配合した、毎日の食事で手軽においしくたんぱく質が摂取できるメニューを幅広く展開する。

 フジッコは「おまめさん」シリーズから朝食のおかずでたんぱく質を手軽に摂取できる「朝のたんぱく おまめさん7品目の味わいやさい豆」「同 7品目の味わいひじき豆」の2商品を3月に発売した。

 日清食品は好調に推移する「カップヌードルPRO 高たんぱく&低糖質」シリーズの中身を改良。新製法により“高たんぱく”“低糖質”に加え、塩分25%オフを実現した「カップヌードルPRO 高たんぱく&低糖質さらに塩分控えめ」としてリニューアル発売する。はごろもフーズはプラントベースフードとシーチキンを配合した小分けのマヨネーズタイプ「ディッパーシーチキン+Beansマヨネーズタイプ」を2月に発売している。

 たんぱく補給食品の市場は現在も堅調に推移しており、今後も小幅ながら拡大が続くと予想されている。商品ラインアップも豊富であることから、たんぱく補給食品を集積しコーナー化するなど、来店客の目に留まる工夫をすることでトライアルの獲得につなげていきたい。

マーケットトレンド③美容ドリンク
【コロナ禍以降好調に推移 イベント前や疲労時の飲用で拡大傾向】

美容効果を訴求する
ドリンク類が市場を牽引

 富士経済によるとコラーゲン、プラセンタ、セラミドなどの成分を含み、美容効果を訴求する食品の2024年の国内市場(見込)は対前年比8.1%増の429億円となった。【図表】のように美容効果を訴求する食品市場は右肩上がりで成長しており、25年の市場規模は同2.0%増の438億円と予測されている。


 美容効果を訴求する食品は、スティックゼリーを中心とした明らか食品と、小瓶ドリンクや紙パック、リキャップタイプなどで展開されるドリンク類の2カテゴリーに分かれるが、ドリンク類が市場全体の8割以上を占めている。

 また、明らか食品の24年市場規模(見込)が前年比1.3%増であるのに対し、ドリンク類は同9.1%と大幅伸長しており、ドリンク類のカテゴリーが市場の拡大に貢献していることがわかる。一方で、明らか食品のカテゴリーもグミやヨーグルトなど形状の広がりが見られており、今後の需要拡大が期待される。

 美容効果を訴求する商品群が伸長する要因として、新型コロナウイルスが第5類に移行し、外出の機会が増えたことが大きい。また含まれる商品によっては美容効果だけではない、複数のヘルスクレームを持つ成分が含まれている点も、需要の拡大に貢献したと考えられる。とくにドリンク類は疲れた時やイベント前など、シーンに合わせて手軽に取り入れやすい点も魅力となっている。

複数のヘルスクレームで
幅広い年代に向けて訴求

 成長市場ということもあり、同カテゴリーは新商品の発売が活発になっている。

左からヤマモリ「GABA100肌弾ビネガー」、ヤクルト本社「CHOBI」、カネカ「わたしのチカラ®Q10 ヨーグルト うる肌ケア・ストレス ドリンクタイプ」、ポッカサッポロフード&ビバレッジ「キレートレモン MUKUMI」

 「GABA100 睡活ビネガー」が好調に推移するヤマモリは、「GABA100」シリーズの新商品として「GABA100 肌弾ビネガー」を発売。GABA 配合の同品は、睡眠の質向上や一時的な精神的ストレス・疲労感の緩和に加え、肌の弾力を維持し、肌の健康を守るのを助ける機能を持った機能性表示食品となっている。

 ヤクルト本社の「CHOBI」はオレンジ風味の美容ドリンク。コラーゲンを1000㎎配合するほか、コラーゲン量の増加と保持が期待できる「パフィア」を50㎎、さらに1日分のビタミンCとビタミンEを配合している。

 カネカは「わたしのチカラ® Q10 ヨーグルト うる肌ケア・ストレス ドリンクタイプ」を昨秋発売。同品は還元型コエンザイムQ10 を100㎎配合した機能性表示食品で、一時的なストレスの改善機能に加え、肌のうるおいを保つ機能を新たに加えている。

 ポッカサッポロフード&ビバレッジの「キレートレモン MUKUMI」は、レモン由来モノグルコシルヘスペリジンによる一時的に自覚する顔のむくみ感を軽減する機能性表示食品。22年の発売以降、SNS上で若年層を中心に手軽なセルフケアとして支持を集めている。

 現状、美容効果を訴求するドリンク類のメーンユーザーは20代から40代の女性だが、訴求の仕方次第で幅広い層に刺さるテーマとなっている。店頭での露出を高めることでより多くの興味関心を獲得し、市場の成長につなげたいところだ。

マーケットトレンド④完全栄養食
【忙しい現代人のニーズをとらえ
共働き世代や若年層を中心に需要拡大】

「BASE FOOD®」と
「完全メシ」が市場を牽引

 富士経済によると、2023年の完全栄養食の市場規模(見込)は235億円となった。「完全栄養食」は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」や「栄養素等表示基準値」などの基準をもとに1日に必要な栄養素を1/3以上含む、もしくはカロリー当たりの配合量が基準値を上回り、全般的な栄養摂取や完全栄養であることを訴求した加工食品を対象としている。なお、1日に必要な栄養素を含む食品であったとしても、ダイエットなどを主な訴求としている商品群は同カテゴリーに含んでいない。

 完全栄養食は13年頃にアメリカから広まり、日本では16年に市場が立ち上がった。当時はベンチャー企業による参入が大半であり、小規模で推移するニッチな市場だったが、20年のコロナ禍を機に需要が高まり、21年末のベースフード「BASE BREAD®」ブランドの販路拡大や22年の日清食品「完全メシ」ブランドの発売に伴い、【図表】のとおり大きく伸長した。

 23年に入ってからも引き続き、ベースフードと日清食品の2社が積極的なプロモーションを実施。また完全栄養食というワードが一般消費者に認知されたことで、その他のメーカーの実績も伸長するなど、新規ユーザーの拡大が進んでいる。

 市場の広がりには商品形状の多様化も大きく影響している。展開当初は、欧米同様に粉末の飲料タイプが主流だったが、日本では食事1食を粉末飲料に置き換えることへの抵抗感が強く、パンや麺、米飯など主食形状で普段の食事とのギャップが少ない商品が人気となっている。

健康的な食生活を考えるうえでの
新たな選択肢として訴求

左から日清食品「完全メシ 汁なしカップヌードル」「完全メシ トムヤムライス」 「完全メシ 日清焼そばU.F.O. ぶっ濃い屋台風焼そば」、ベースフード「BASE BREAD® ストロベリー」

 同市場を牽引するベースフードと日清食品の2社は今期も新商品を投入する。

 日清食品では、「日本人の食事摂取基準」で設定されたビタミン・ミネラルなど33種類の栄養素とおいしさのバランスを追求した「完全メシ」ブランドから、「完全メシ 汁なしカップヌードル」「完全メシ トムヤムライス」を新発売するとともに、「完全メシ 日清焼そばU.F.O. ぶっ濃い屋台風焼そば」をリニューアル発売した。

 一方、ベースフードからは1食に必要な33種類の栄養素がすべてとれる全粒粉ベースの完全栄養のパン「BASE BREAD®」シリーズから、「BASE BREAD® ストロベリー」を発売する。同品は食事としてもおやつとしても毎日飽きずに食べられるパンとして、苺本来の自然な甘さと風味、甘酸っぱさを感じる設計にこだわっている。

 完全栄養食は主食形状の手軽さが受けて独身世帯や若年層、共働き世帯のユーザーが増えており、栄養摂取やダイエット、時短など忙しい現代人のニーズをとらえて市場拡大が続くとみられている。今後も健康的な食事を考えるうえでの新たな選択肢として、食品スーパーでの店頭露出を増やし、幅広い客層を取り込んでいきたい。

定番棚でのコーナー展開も見られるようになってきた/ヨークベニマルいわき平店(福島県いわき市)
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