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ワインのプロが解説する、食品スーパーで差別化を実現するワイン売場のつくり方

ワインのプロフェッショナルであるBMO(東京都)代表の山田恭路氏が、全3回にわたり食品スーパーにおけるワインの取り扱いについて解説する本連載。2回目は、食品スーパーが実践するべき、差別化を実現するためのワインの売場づくりを解説してもらった。

ワインの魅力をどう伝えるか

 昨今はワイン市場の成長性が注目され、ワインの提案に注力する小売業が多い。とはいえ、「シャトー・マルゴー」のような高級品として広く知られている有名ワインを一般的な食品スーパーで販売するのは難しい。そうした価格面の問題もあって、ワインは「ブランドに頼って売ることができない商材」でもある。

 ただ、販売の難易度が高いからこそ、食品スーパーにとってワインは差別化しやすい商材とも言える。とはいえ、バイヤーがコストパフォーマンスに優れたワインを仕入れたとしても、ただ陳列しているだけでは当然売れない。重要になるのは、お客さまに対して「このワインがいかに質のいいワインであるか」を伝える技術だ。

 売場のプレゼンテーションはワインの売上を大きく左右する。ワインはSKU数を増やしたぶんだけ売上本数が上がるような商材ではない。たとえSKU数を減らしてでもお客さまに商品の魅力を訴求する、という考えが重要だ。

 小さなプライスカードを並べ、ソムリエの資格試験でしか出ないようなワードをキャッチとして羅列するだけでは、誰の目にも留まらない。プライスカードのアイキャッチや丁寧なPOP、計算された陳列順、SKU数、お客さまの動線を考えた区分けボード……などさまざまな工夫が必要だ。

国別? 品種別? ワイン陳列方法を解説!

 「多様性」もワインの魅力の1つだ。ワインの品目数の多さは日本酒をはるかに上回り、売り方もバラエティに富んでいる。たとえば、ワインに詳しくないお客さまを対象にするなら、「赤ワインか白ワインか」「甘口か辛口か」「渋みがあるかないかで」商品を分けたり、ランキング形式に売場展開するのもよいだろう。一方、ワインに詳しいお客さまに向けては、国・地方別に並べるのをおすすめしたい。

 ちなみにワインの陳列は、欧州の食品スーパーでは「国・産地別」が一般的だが、米国では「ブドウの品種別」であることが多い。欧州の食品スーパーが国別にワインを陳列する理由は、エリアによってワインの味の傾向が変わるためだ。たとえば、フランスのボジョレー地区で使われるブドウの品種は「ガメイ」、マコン地区の品種は「シャルドネ」と決まっている。一方、アメリカ・カリフォルニア州では同じワイナリー内で「シャルドネ」「ガメイ」などさまざまな種類のブドウを育てているため、食品スーパーの店頭でも品種別にワインを並べているのである。

 こうした各国の製造方法の違いは、食品スーパーの陳列方法にも影響している。最近は日本国内でもワインの製造場所ではなく生産地の気候やブドウの品種などが重要視されはじめ、有名な産地以外のいわゆる「地ブドウ」も評価されようになっている。

 「特定の料理に合うワイン」の提案も効果的だ。和食や魚介類、鍋など「この料理を食べるなら、このワインがおすすめ」といった訴求である。そのほかだと、生産者を前面に打ち出した販売方法も有効だ。店頭に設置したサイネージで生産者の個性やパーソナリティをアピールすればお客さまの関心を引くことができるだろう。

リピートに重要なのは「品質」

 大手食品スーパーが販売するプライベートブランドのワインは、ほとんどが低価格訴求をねらった商品となっている。一般的な食品スーパーでは、ワインの質にこだわるというよりも、手軽に楽しむためのお酒として購入する消費者が多いからだ。

 しかし、消費者が特定のワインをリピートして買い続けるかどうかの決め手は、やはり「品質」にある。品質のよいワインを仕入れるには、テイスティング能力やワインの見識だけではなく、産地にまで踏み込んだ品質の見極め、または貿易上の知見が必要になる。これは、直輸入以外のワインを販売するうえでも重要なスキルでもある。仕入れるワインがいかに高質かをバイヤーが理解していれば、その魅力を売場で伝える方法も考えやすくなるというものだろう。