福島県を中心に食品スーパーを約70店展開するリオン・ドールコーポレーション(福島県/小池信介社長:以下、リオン・ドール)が冷凍食品を中心に扱う新業態を出店した。新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大下で、冷凍食品の需要が拡大したことを受けて開発に乗り出し、いっそうの消費を促す提案に挑戦している。その売場づくりと品揃えを写真を多数使用しレポートする。
すでに2号店も出店
冷凍食品で新しい買物体験を
新業態の名は「みんなの業務用スーパー Lynx(リンクス)」。5月31日、福島県会津若松市に1号店の「年貢店」を、その後6月28日には福島県西白河郡矢吹町に2号店の「矢吹店」を開業し、すでに2店を展開する。
リンクスは店舗コンセプトに「冷凍だから、描ける未来がある。Power of Frozen」を掲げる。具体的には、保存性に優れた良質な冷凍食品をエブリデー・ロープライス(EDLP)で販売。そうすることで、節約の観点から家計に、またフードロスの観点から地球環境にも優しく、さらには新しい買物体験を提供できる店をめざしている。
「みんなの業務用スーパー」を名前に冠するリンクスだが、業務用のような大容量商品を扱いつつも、あくまで主ターゲットは一般の消費者であり、かつ日常的に来店してもらえる店をめざしているのが特徴だ。そのため、店づくりでは新たな客層を取り込み、また来店頻度を高めるためのさまざまな工夫が見られる。
1号店の「年貢店」の売場を見ると、まず目に入るのがオレンジ色をアクセントに使用した、明るい内装だ。店舗周辺は高齢者が多い一方で、共働きの若い世代を中心に人口が増加傾向にある。洗練された雰囲気の店づくりにより若い世代の来店を促したい考えだ。
使い切れない人も!
レシピ提案で消費を促す
売場面積は約810㎡。品揃えのメーンは冷凍食品で、店内には冷凍ケースがずらりと並ぶ。冷凍ケースは平台タイプを採用することで、店の奥まで見通せる解放感のある空間を創出している。
売場の各所で目に留まるのが、色とりどりのPOPを使った商品の紹介やレシピ提案だ。執行役員商品部グロサリー管掌の大沼孝氏は「冷凍食品を買ってもうまく使いこなせないという人も少なくない。レシピ提案によって消費を促していきたい」と話す。また冷凍ケースばかりが並んだ無機質な売場にならないようにするための工夫でもあるという。
技術開発が進む
冷凍パンの販売を強化
取扱品目数は、冷凍食品のほか、菓子や加工食品、酒類、飲料、日用雑貨なども扱い全体では約2500品目。主力の冷凍食品は、カット野菜や生鮮素材、総菜、アイスクリーム、スイーツ、パンなど約1300品目を揃える。
なかでも販売を強化したカテゴリーが冷凍パンだ。バゲットや食パン、大容量のクロワッサンやメロンパン、個包装のベーグルなど約70品目を揃える。近年、冷凍パンの製造技術は急速に進化している一方で、扱っている食品スーパーは未だ少ない。またパンは主食であるため来店頻度向上にもつながると考えている。
まだ冷凍パンのメーカーは多くないことから取引先の開拓には苦労したが、その甲斐あって売上は好調に推移しているという。
和スイーツにご当地アイスも
買物の楽しさを演出
リンクスでは、スイーツとアイスクリームの販売にも力を注ぐ。嗜好性の高いこれらのカテゴリーを訴求することで、買物の楽しさを演出するねらいだ。
たとえばスイーツでは、タルトやロールケーキ、パイ、わらび餅、やきいもなど和洋の商品を揃える。アイスクリームは全国各地のご当地アイスや、1本税抜58円均一のバラ売りコーナーなどを展開するなど、さまざまな商品を試したくなる売場づくりを行っている。
そのほかにも購入を促す工夫として、地元の人気レストランのパスタやパスタソースをリンクス向けに冷凍商品化して販売しているほか、人気の高品質スーパー「成城石井」の商品も扱い、他店にない品揃えを追求する。また、取引先メーカーの協力を得て、大容量コロッケを小容量にしたリンクス限定商品なども販売。少人数世帯でも買いやすいようにしている。
このようにリオン・ドールは、冷凍食品市場を取り込むべく新業態を開発しただけなく、消費を促し市場をさらに拡大するための提案にもチャレンジしている。冷凍食品は未だ潜在ニーズの大きいカテゴリーであり、食品スーパー各社にとって学べる点が多い取り組みと言える。
【店舗概要】
店名 「みんなの業務用スーパー リンクス年貢店」
所在地 福島県会津若松市門田町日吉小金井19
売場面積 約810㎡
営業時間 10:00~22:00