青果売場でも年々取扱量の増えている輸入フルーツ。なかでもプルーンやレーズン、デーツといったドライフルーツは、健康志向の高まりを受け、鉄分や食物繊維を手軽に摂取できるおやつとしても人気を集めている。
定番のレーズンやプルーン、急成長するデーツ
季節に合わせた旬の果物が並ぶ食品スーパーの青果売場では、バナナやパイナップル、キウイフルーツ、ブドウなどの輸入フルーツを目にする機会も多くなった。このような状況下、最近、各社が力を入れ始めたのがドライフルーツ。店頭でもナッツ類と横並びで陳列したり、量り売りを行うなど、さまざまな工夫がみられる。
ドライフルーツにはレーズンやプルーンをはじめ、イチジクやかんきつ類、ベリー類などさまざまな種類がある。以前はお菓子づくりや酒のつまみとして用いられることが多かったが、近年は栄養豊富な健康食品としてそのまま食する機会も増えた。とくにプルーンは鉄分の豊富な健康食品として、美容や健康への意識が高い生活者に支持され売上を伸ばしている。
昨年、一気に需要が拡大したのがデーツだ。デーツは日本でナツメヤシと呼ばれる、中近東原産のヤシ科の果物。アラブ諸国では古くから食べられており、現在も中東や北アフリカ地域を中心に生産されている。干し柿のようなねっとりとした甘みが特長で、中東地域のほか、欧米諸国でも人気を集めている。
【図表①】の主要なドライフルーツの輸入数量を見るとレーズンを除き、多くのカテゴリーが数字を伸ばしているが、なかでもデーツは2019年は1299mt、20年は2015mtと大幅に伸長していることがわかる。
豊富な栄養素や食べ方提案でトライアルを促進する
これまでのデーツは主にソースなどの調味料の原料として用いられ、ドライフルーツとしてのデーツは一部のファンが知るニッチな商品だったが、20年1月にNHK「あさイチ」で取り上げられたことで知名度を高め、需要も一気に拡大。同時期に発売されたデルタインターナショナルのチュニジア産「種抜きデーツ」もそれに乗じて売上を大きく伸ばしている。
デーツはクセの少ない素朴な甘みとともに、食物繊維がごぼうの1.5倍、鉄分はいちじくの2倍、カルシウムはプルーンの1.4倍、マグネシウムはキウイの4.4倍、カリウムはバナナの2倍と栄養価が非常に高い点も魅力で、スポーツ選手をはじめ、健康や美容への関心が高い層が主に手に取っている。
ドライフルーツは栄養の豊富な健康食品としてポテンシャルの高い商材だが、現状は手に取る人が限られている。新規顧客を獲得するためにはPOPやボードを使って栄養素の紹介や食べ方提案を行うなど、トライアルを促すような施策も必要だろう。
青果売場だけでなく酒類コーナーや菓子コーナー、朝食提案など、多箇所展開することで来店客に気付きを与え、ドライフルーツの需要喚起につなげていきたい。
輸入フルーツの売場事例
好調に推移する輸入フルーツについては、各チェーンが積極的に売場を強化している。主力のバナナやパイナップル、キウイなどに加え、トロピカルフルーツや、今期話題の台湾産バナナ、ドライフルーツなどの加工品へと、品揃えは拡大傾向にある。新店の売場事例を紹介する。
イオンフードスタイル茨木太田店(大阪府茨木市/2021年3月オープン)では、台湾産パイナップルを大陳展開。カット見本を添えて注目度を高めている。
アピタ宇都宮店(栃木県宇都宮市/2020年6月オープン)では、バケツ入りキウイの2品種を大陳展開。モニターディスプレーやポスターで目立つ演出を行う
オーケー所沢店(埼玉県所沢市/2020年12月オープン)では、「輸入果物」コーナーを設置。コンパクトな売場の中で、多様な種類を取り揃え、棚札など品種の特徴や糖度などを発信する
ライフグランシップ大船駅前店(神奈川県横浜市/2021年2月オープン)では、「世界の果物」コーナーを展開し、マンゴーや、ドラゴンフルーツ、ドリアンなどのトロピカルフルーツを幅広く取り揃える
パワースーパーピアゴ富士宮店(静岡県富士宮市/2021年3月オープン)では、ボードで輸入ブドウを訴求。パック入りの種なしブドウを揃え、手書きPOPなどで特徴を紹介する
フレンドマート草津大路店(滋賀県草津市/2021年4月オープン)ではバナナ、キウイなどのフルーツ売場に、ナッツ類を陳列。健康感を訴求することで、相乗効果を高める
ビオラル丸井吉祥寺店(東京都武蔵野市/2020年12月オープン)では、有機素材を使用したドライフルーツとナッツのバイキングコーナーを設置。自由な組み合わせを提案
フードウェイソコラ武蔵小金井クロス店(東京都小金井市/2020年6月オープン)では、吊り下げ什器を使用し、プルーンやイチジク、カットパインなどのドライフルーツの手軽さを訴求する