食の多様化により、ここ数年微減傾向が続いていた煮豆市場だが、昨年は新型コロナウイルス感染拡大により、内食化が進んだことから好調に推移した。健康感に加え、おいしさや食卓の彩りなど、煮豆のよさを訴求して市場の活性化していきたいところだ。
4月以降の金額PIは好調、12月はおせち需要で2ケタ増
和食文化を支える食材として親しまれてきた豆類。中でも、手軽に食卓に出せる煮豆だが、ここ数年、市場は縮小傾向にある。煮豆市場の約半数を占める黒豆や金時豆などの甘い煮豆は、ヘルシーなおやつとしての需要を獲得して堅調に推移しているが、野菜や昆布などの具材が入った、おかず系の煮豆は苦戦している状況。おかず系の煮豆は若年層が食べなくなっているのに加え、昔ながらの甘い味付けが敬遠される傾向にあるようだ。
煮豆のトップメーカーであるフジッコでは「おまめさん」シリーズとして、レギュラーに加え、砂糖を大幅にカットして豆本来の自然な甘さが楽しめる「甘さひかえた」シリーズ、そのまま食卓に出せる小分け、食べ切りの「豆小鉢」シリーズなどをラインアップし、市場を活性化している。
縮小傾向にあった煮豆市場だが、コロナ禍で内食化が進んだことで、2020年は需要が高まっている。KSP-POSの煮豆の期間通算の金額PIは、2053円で対前年同期比3.2%増。月別にみると2月と3月は前年割れとなったが、1回目の緊急事態宣言発出の4月以降は前年を上回って推移している。
煮豆は食卓に彩りを与えるほか、良質なたんぱく質やビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素をバランスよく補うことができる。手軽におかずの1品として出せる煮豆は使いやすく、家庭の常備菜としてストックが進んだことが予想される。
また、12月の金額PIが4177円で同11.9%増と大きく伸長しているのは、おせち料理用の黒豆の需要が高まったためだ。コロナ禍での年末年始は旅行や帰省を自粛する人が目立ち、おせち料理をつくる家庭が増えたことで2ケタ増となった。アントシアニンなどの栄養価が高い黒豆を通年で食べてもらうため、各社ではスイーツなどのアレンジレシピを提案している。
料理の素材となる水煮や蒸し煮も好調
フジッコの調査によると、煮豆を離脱した人の理由のひとつが「甘さが気になる」ということ。そこで同社ではこの春に、豆や野菜などの7品目の食材を使いあっさりだし味に仕上げた煮豆「おまめさん彩り豆」シリーズを新発売。調理の手間なくさまざまな食材をとることができ、食卓の彩りもアップする。従来の煮豆は箸休めや付け合わせ、お弁当などに利用されてきたが、同商品は副菜として提案。煮豆離脱者のほか、若年層などの新規ユーザーを獲得して、煮豆市場の底上げを図っていく。
また最近注目されているのが、料理の素材となる水煮や蒸し煮。あえるだけ、加えるだけで、栄養素をバランスよく補うことができることから、フジッコでは水煮や蒸し煮を使った「大豆ファースト」を提案。食事の最初に大豆を食べることで、食後血糖値上昇抑制効果が得られ、満腹感が長時間持続する。サラダのトッピングとして、スープやシチュー、カレーの具材、デザートなど、アレンジレシピを提案している。
コロナ禍で健康意識がますます高まっていることから、煮豆の健康感を訴求して市場の活性化を図りたいところだ。