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牛肉カテゴリーは家庭内調理トレンドを「アフターコロナ」の需要につなげる戦略が重要だ

MD特集 牛肉マーチャンダイニング

2020年は食品マーケット全般が新型コロナウイルスの影響を大きく受けるなかで、牛肉カテゴリーも激しく揺れ動いた。危機感が強まった3月以降は、内食需要が高まり牛肉の売上は伸びたが、その後輸入肉の供給難や相場高に見舞われ、各社のMD戦略や売場づくりにも影響を与えた。

3月から需要が急増輸入肉は一時的に供給難

 近年牛肉需要は堅調に推移しており、今期も2ケタ以上の成長を記録しているチェーンが少なくない。精肉全般が売上を伸ばしており、コロナの影響で家庭内調理の機会が増えたことが大きな要因となっている。とくに緊急事態宣言後の3月~5月初旬には、危機感を持った消費者のまとめ買い傾向が高まり、商品調達などの対応に苦慮したチェーンも多い。

 その一方で供給面ではさまざまな問題が発生した。輸入牛肉の主力産地であるアメリカでは産地におけるコロナの感染者増による供給減、オーストラリアでは昨年からの干ばつによる出荷量減が重なり、その結果として相場も高まった。

 この影響は6月~7月頃から国内市場にも明確に現れている。独立行政人農畜産業振興機構がさまざまな統計からまとめた資料によると、輸入量は7月に前年比84.2%の5万2640トンに減少。8月、9月も昨年より大きく減少している。それを国内生産で補うかたちだが、カバーしきれているわけではない。

本格メニューを含む内食需要を今後も喚起していくことが重要

 こうした状況のなかで、各チェーンでは価格訴求型の販促を避け、“巣ごもり”で生じた時間を利用して、ふだんは外食などで食べる機会が多い本格メニューの提案に力を入れる傾向も出てきた。

 家庭内での食事回数が増えたため、味付け肉やミールキットなどの簡便商品も好調だったが、それに加えてブロック肉や、希少部位を含む焼き肉用のセットなども好調。調味料などの関連商品の動きもよかった。

 こうした経験は、今後の内食需要に変化を与える可能性もある。思ったより簡単に本格メニューを楽しむことができることに気づいた消費者が、今後もさまざまな調理にチャレンジし、結果として牛肉需要の高まりにつながることも期待できる。

 コロナの動向は今後も予断を許さない。再度感染者が増える傾向も出ているが、一方では治療法やワクチンなどの対処法も研究が進んでいる。牛肉市場も春先と比べて落ち着きを取り戻しつつある状況だ。

 こうした動向に注視していく必要はあるが、今期新たに生じた内食トレンドに沿って引き続き需要を喚起し、対応していくための戦略が重要になっている。

精肉売場ケーススタディ

今期オープンした新店の牛肉売場では、コロナの影響を見極めながらさまざまな取り組みを行っている。外食が自粛されるなかでの国産和牛の品質訴求や、焼肉訴求、簡便性の高い味付け肉訴求など、各新店の事例を紹介する。

 輸入牛肉の一時的な供給不足と価格高を背景に国産和牛への需要が高まった。「国産黒毛和牛」をボードなどで前面に掲げて訴求する「アピタ宇都宮店」(写真①)や「ヤオコー桶川上日出谷店」(写真②)などは、さまざまな部位やカットを用意して訴求する。

写真①
ステーキのほか、しゃぶしゃぶ用、カレー・シチュー用、細切れなどさまざまな用途に対応する黒毛和牛を展開/アピタ宇都宮店
写真②
対面カウンターで展開する黒毛和牛。焼肉用盛り合わせなど、品質にこだわった商品を取り揃える/ヤオコー桶川上日出谷店

 また焼肉訴求も従来から強化されてきたが、今期は需要が高まるなかで力を入れるチェーンが多かった。「イオンスタイル高知」は焼肉用セットを取り揃え、家庭での焼肉を提案する(写真③)。

写真③
焼肉のたれ付きのセット商品や、牛のほか豚、鶏などを含むセット商品を展開/イオンスタイル高知

 また「サミットストア桜木町コレットマーレ店」では、黒毛和牛の焼肉用「ももづくしセット」や輸入肉の焼肉用3種盛りなどを提案している(写真④)。

写真④
焼肉用の「いわて和牛」を訴求するコーナーを展開。このほか輸入肉についても多様なセット商品を用意/サミットストア桜木町コレットマーレ店

 また従来から力を入れるチェーンが多かった煮込み料理やローストビーフ向けのブロック肉についても今期は需要が高まっている。「ヨークフーズ新宿富久店」では、ローストビーフ用のモモブロックをコーナー展開し、ワインに合う本格メニューとして提案する( 写真⑤)。

写真⑤
ブロック肉をローストビーフ向けに提案。オーストラリア産、国産和牛などのブロック肉を揃え、多様な選択肢を提供する/ヨークフーズ新宿富久店

 まとめ買い需要に対応する大容量品も今期好調だった商品。「ライフ阪神鳴尾店」では、牛肉のほか豚肉なども合わせた大容量品をコーナー展開する(写真⑥)。

写真⑥
大容量品を揃え、目立つボードで「ボリューム」を訴求。値ごろ感のある価格で提供する/ライフ阪神鳴尾店

 家庭での本格メニュー提案としては、即食性の高いローストビーフなどのオードブル商品も、好調な動きを見せたチェーンが多い。

 「リンコス横浜馬車道店」ては、エンドに専用コーナーを設置し、ワインをクロス展開(写真⑦)。「イトーヨーカドー新田店」でも、平台エンドでローストビーフ専用コーナーを展開し、ボードなどで訴求を行った(写真⑧)。

写真⑦
上段のワインにはそれぞれ説明を添付。パック入りのローストビーフなどのオードブルをコーナー展開する/リンコス横浜馬車道店
写真⑧
ローストビーフをカットしたパック商品のほかブロックも用意。ホースラディッシュをクロス展開する/イトーヨーカドー新田店

 ブロック肉や焼肉商材、ローストビーフなどはコロナ以前から各チェーンが力を入れてきた商品分野。今期の好調をいかに今後の需要につなげていけるか。その点が重要なポイントになりそうだ。