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豚肉市場、需要は堅調も家庭内調理が増え消費トレンドに変化の兆しが

豚肉マーチャンダイジング

堅調な消費トレンドで推移してきた豚肉市場だが、2020年は新型コロナウイルスの感染が広がったことで大きな影響を受けた。2月以降、まとめ買いを含む需要が活性化した一方、国内の一部産地で出荷頭数が伸び悩んだほか、海外産地でもコロナの影響によって生産量が減少。豚肉相場は一時的に高騰した。また、外出頻度が減少したことで、調理トレンドにも変化が出ており、こうした状況に対応したMDの再構築が必要となっている。本特集では、小売り3社の施策から豚肉市場のトレンドを追っていく。

2月以降供給に不安感需給がひっ迫する場面も

コロナ禍においては消費者の不安感がパニック買いにつながり、需要が一時的にひっ迫した。写真 i-stock/gilaxia

 今期の豚肉市場は新型コロナウイルスの影響を抜きにしては語れない。輸入肉を中心に供給不安が広がった一方、消費者の不安感がパニック買いにつながり、需給がひっ迫する状況も見られた。

 独立行政法人農畜産業振興機構では、農林水産省「食肉流通統計」と、財務省「貿易統計」を整理し、毎月の豚肉供給量を発表している。それによると、2020年5月と7月国内生産が対前年比で減少している。一方輸入量は20年2月以降、4月と6月以外で減少。とくに7月、8月の減少が顕著だった。

 こうした供給不安は枝肉相場に影響を与え、一時急騰する局面もあったが、節約志向のなかで店頭価格に直接反映させることは難しかった。需要は活発だが、利益の確保に苦慮したチェーンが多かったと見られる。その後、需要も供給も落ち着きを見せている。

家庭内調理の経験で新たな需要の底上げも

 コロナによる自粛ムードや、リモートワークの浸透によって、家庭で過ごす時間が増えたことが、豚肉をはじめ食品の消費トレンドにも変化をもたらした。

 豚肉については、家庭内で調理する機会が増えたことで、味付け肉などの簡便商品が引き続き好調だったほか、比較的時間のかかる煮込み料理向けブロック肉や、鍋料理、ホットプレート向け商品などの需要が伸びている。またストック需要に対応する冷凍肉も売上を伸ばしているチェーンが多かった。こうした動きに合わせた品揃えのシフトや、メニュー提案も各チェーンで活発に行われている。

 一方、来店時の混雑を回避するため、チラシ訴求や特売などプロモーションを控える動きも見られた。

 社会活動や経済活動は徐々に回復しており、外食喚起に向けた政策も実施されている。それによって店頭での販売動向も、例年の動きに戻っていくと見られる。しかし、コロナを背景として増えた家庭内調理は、多様なメニューを家庭で楽しむ経験を提供することになり、今後も一定の需要が継続していくことが期待される。

 ふだんとは異なる本格的なメニューや、食卓を華やかにする料理も、想像するより簡単にできる。こうした提案を店頭から積極的に発信し、ターゲットに合わせた品揃えを追求していくことで、豚肉需要の底上げにつなげていく必要がある。

 

次項に続く(11/23公開予定)