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精肉市場創造2020:専門家の視点 ISMの力量で変化する販売効果

食品スーパーマーケット(SM)での精肉部門は、畜種を問わず堅調に推移している。集客効果も高く、さらなる販売拡大に向けて、商圏に合わせた品揃え強化や少量パック、ブロック肉の充実、味付け肉や肉総菜等の簡便性の高い商品での売場拡大を図っている。そうしたなかで、今回はとくに売上、利益に大きな影響を及ぼすインストア・マーチャンダイジング(ISM)に目を向けたい。

画像/oonal

ISMとは何か

アイダスグループ代表取締役 鈴木國朗氏

 ISMとは、店頭における商品の品揃えや陳列などを、科学的なデータに基づいて検討し、展開の最適化を図ることだ。

 目的は客単価アップである。効果的で短期的に進めるISMの強化方法は、まず基本の“考え方”と“型”をよく理解して実行し、自店に合うよう何度も検証を繰り返しながらその精度を継続して高め、担当者同士が共有していくことだ。

ISMの「3つの基本」

 ISMの基本(1)は視認率。視認率のデータは定点カメラ等を使ってその頻度を計測し、算出する。買物をしているお客の数に対して、どれほどの商品数や重点コーナー、重点単品を見ていただけたかが読み取れる。そうすると、店内を作業中、移動中の各担当がすぐにできることがある。それは、お客の導線や目線に注視すること。したがって、商品部が労力を費やして開発した低価格商品やワンランク上の商品、簡便性の高いトレンド商品などの視認性には、とくに注目してチェックするとよいだろう。優秀といわれている担当者は必ずといっていいほど、販売データ同様にお客の視認率チェックを忘れない。

 基本(2)は通過率。客導線調査を行う際に使うデータの一つだが、注意点は、幅が4mを超える通路や店舗については、左右どちらかの約2m以内をカウントすることだ。その際、多段ケース寄りかアイランドの冷蔵平台寄りかなどを明確にするとよい。通過率の片寄りはそのまま販売データに反映される。

 基本(3)の立ち寄り率は、どれだけのお客が陳列棚の前に立ったかを測るものだ。買いたい姿勢が見えたにも関わらず、目で何かをチェックしただけでその場を離れたり、商品を手に取ったにもかかわらず買物かごの中に入らなかったりした場合には、何らかの問題があったと考えて、ナゼ、ナゼ、ナゼを繰り返すことをお勧めする。

 今回はISMを理解するうえでのポイントを3つだけ取り上げたが、それらを買上点数や値引き等の販売データのチェックとリンクさせること、そしてお客への目配りを身に付けること、という基本的な考え方を理解すればよいだろう。

マグネット単品の配置手法

 図1は8尺冷蔵平台アイランドケースを示したものだ。主要客導線に対して、ケース入口と出口にあたるA・A’・B・B’のアおよびエの位置のおよそ2尺分は、視認率の低い傾向があるため、一般的にデッドゾーンと呼ばれている。したがって、仮に新商品や導入間もない味付け肉やローストビーフ等の簡便商品をここで訴求しても、よい結果を得ることは難しい。

 さて、ケースを最大限に有効活用するために、意図的に平台の入口にあたるアのゾーンに、マグネット単品を配列する方法がある。このマグネット単品とは、最も買い上げ点数の高いとされている牛肉や豚肉の切り落とし肉などのことだ。多くのお客の目や足を止める商品がふさわしく、これがケース全体への視認率を高めることにつながる。一方、エのゾーンでマグネット単品を配列する場合は、手前にあるア~ウの商品が見落とされるなど、逆効果となることも多いので注意が必要だ。

高単価商品の効果的な訴求法

 次に、牛肉の人気メニューの焼肉やステーキ、すき焼き等のコーナー、そして精肉の生食コーナーの高単価商品を事例にする。

 焼肉等の大容量のセット商品やプレミアムアイテムについては、陳列数量が1~3パックの場合がある。こうした商品の展開位置は、図1のイ、ロ、ハ、ニの組み合わせがお勧めだ。イとニ、またはロとハなどだ。さらに夏に向けては、冷蔵ケースのベースを最下段に設定し、ロードライン(商品陳列の上限ライン)を超えないように注意を払いながら、商品に高低差を付ける。平面的になりやすい陳列を立体的に工夫することで目を引き付けるとよいだろう。また売り込み商品やマグネット単品に次ぐ量販商品の最適な位置は、イとウの中央のゾーンとなる。

 図2は、冷蔵平台の側面を表している。前述の牛切り落とし肉はCの高さ、高単価商品はD、そして出口のEはサラダやキムチ、スープ、冷麺等、焼肉のサイドメニューの関連商品等が向いている。

前出し、手直し、配置換えのマニュアル

 店の開店時間から夕方のピークタイムまでは、商品の陳列数量をチェックしながらの商品補充や前出しを実施する。そしてピークタイムが過ぎて、いよいよ陳列数量が少なくなった場合の陳列方法が重要になる。たとえば昼間と同様の前出しでは、図1のAラインに陳列された商品は、ケースから2~3mも離れれば商品が見えない状態になってしまう。したがって、よいのはA’~Bのライン上と言える。陳列の仕様も、商品によってはストレート(直接的)陳列からインクリネーション(斜め)陳列に変更すれば、視認率はさらに高まる。

 選ばれる店になるためには、お客に商品の価値や魅力を伝えること、感じさせる売り方や見せ方なども重要となる。基本を忘れず、独自の“型”づくりにチャレンジしていきたい。そして売場写真や数分間の動画などを駆使することでISMの力量を備え、店舗間ギャップを埋めていくことが重要だ。