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精肉市場創造2020:食提案のバリエーションが多様化 順調な成長続く

好調な消費トレンドが続く精肉カテゴリーは、今年に入ってから新型コロナウイルスの影響もあり、大きく販売実績を伸ばしている。勢いのある販売動向を背景に、味付け肉のバリエーション拡充や、簡便商品や機能性商品など、品揃えの多様化もますます進んでいる。

FangXiaNuo

年間を通して着実に成長 “コロナ特需”にも沸く

 精肉部門の好調が続いている。インテージSRIのデータから直近の2019年5月~20年4月の販売実績を見てみると、精肉と加工肉などを含む「畜産」部門全体の成長率は前年の同期間と比較して104.3%となっている。

 また精肉部門単体でも104.2%の成長率を記録。畜種別に見ても牛肉102.7%、豚肉104.7%、鶏肉104.9%といずれも伸びており、とくに豚と鶏の伸びが大きく、好調な市場動向が続いていることがわかる(図参照)。

 注目されるのは、2020年の3月と4月伸び率の高さで、これは新型コロナウィルス対策の影響と見られる。3月は精肉全体で114.2%、4月は125.3%と大幅に伸長しており、食品全般の需要が高まったなかで精肉部門も売上を大きく伸ばしたことが明らかとなった。多くの消費者に危機感が広がった3月以降は、品薄状況が続くなど、通常を大きく上回る販売動向への対応に苦慮したチェーンも多い。

簡便ニーズに対応する「味付け肉」も好調

 一方、加工肉も全体として好調で、前年同時期と比較して106%の伸び。とくに「味付け肉」は108.1%と大きく伸びている。

 新型コロナの問題発生以前から、“肉ブーム”といわれるほど好調に推移してきた精肉市場だが、新型コロナの拡大で多くの消費者が外食を控えるなか、家庭内での消費に向けて精肉の需要が一層高まり、とくに最近のトレンドである簡便ニーズや時短ニーズに対応する「味付け肉」の販売実績の伸長につながっていると考えられる。

 また単に簡便性を訴求するだけでなく、素材や、地場産の味噌を使用した味噌漬けなど調味料の質にこだわった商品や、プルコギなど海外メニューのバリエーションの多様化が目につく。多様なニーズへの対応を図る品揃えの強化も好調につながっている。

 このほか、肉を使用したミールキット型商材なども好調。新たな商品を開発するなど力を入れているチェーンが多く、精肉部門全体の勢いを牽引している。

 また健康訴求では、むね肉やささみなど脂肪分の少ない鶏肉コーナーの設置や、加工肉における減塩商品や無塩せき商品、オーガニック商品などのコーナー化も一般化している。

 こうした多様な取り組みが活発に行われている中で、“コロナ後”の市場動向にも十分注意していく必要がありそうだ。

精肉売場 ケーススタディ

近年は基礎的な素材としての精肉や加工肉だけでなく、味付け肉やセット商品などの簡便訴求や、クロスMDによる食提案が精肉売場のトレンドとなっている。この1年にオープンした新店の売場づくりを紹介する。

 基礎素材となるパック入りの精肉を着実に品揃えする一方、味付け肉などの簡便商品をコーナー展開する店舗が多い。

 たとえば、「サミットストア上星川店」はレンジアップ商品をコーナー展開(写真1)。また都市型駅前立地の「ライフコモレ四谷店」ではミールキットを揃え多様な本格メニューを提案する(写真2)。

 味付け肉は精肉部門の中でも重要な位置づけとなっており、多くの店舗がさまざまな商品を展開している。味噌漬けやカツレツなど、多様なトレー入りの調理済み肉総菜を揃えているのが「マルエツプラウドシティ吉祥寺店」(写真3)だ。「イトーヨーカドー食品館川越店」では、地場産のこだわり醤油を使用した味付け肉を訴求(写真4)する。

 また「ヨークベニマル日立滑川店」では、アヒージョ用のチキンステーキなどを集約してアヒージョコーナーとして訴求している(写真5)。

 また即食商品として人気の高いローストビーフ・ポークなどは、専用コーナーで展開する例が多い。「ヤオコー東久留米滝山店」では、オードブルコーナーを平台に設け、セット商品を提案。関連調味料などをクロス展開する(写真6)。

 ノントレータイプの商品は広く普及しているが、「フードスクエアカスミ三芳店」では、ノントレー商品をコーナー展開し、棚帯などで環境への配慮を訴求する(写真7)。

 このほか、「オーケー吉祥寺店」では、加工肉コーナーで無塩せきなどのこだわり商品を取り揃える(画像8)。

 同様の取り組みは多くの店舗で見られるが、コーナーボードやPOPなどで訴求ポイントや付加価値をわかりやすく訴求する取り組みを行っている。消費者の求める価値が多様化するなかで、いかにして価格以外の購買動機を提案するかが、多くのチェーンにとって重要なテーマとなっている。