家庭で揚げものをする頻度が減少傾向にあるなか、手軽に揚げものを楽しめる冷凍食品が支持を集めている。メーカー各社の加工技術は年々進化しており、なかでもからあげは味にこだわったヒット商品が数多く生まれている。そこで今回は、冷凍食品ジャーナリストの山本純子氏に冷凍食品の魅力と注目のからあげ冷凍食品を教えてもらった。
保存料不使用で安全・安心食卓系の商品が人気
揚げる手間が面倒だったり、使い終わった油の始末やキッチンの後片付けがネックとなって、家庭で揚げものをする人は少なくなり、その頻度も減少傾向にある。とくに近年は共働き世代が増えたこともあって、揚げもの料理離れが進んでいる。
しかしながら、自分でつくるのには抵抗があっても揚げものは食べたい。そんな思いに応えてくれるのが、スーパーの総菜や冷凍食品の揚げものだ。どちらもここ数年、味の進化が目覚ましく、格段においしくなっている。その筆頭に挙げられるのがからあげだろう。賞味期限が長く、まとめ買いもできるという点で、冷凍食品のからあげは評判がよく、常備している消費者も少なくないようだ。
「冷凍食品のいちばんのメリットは保存料を使用せずとも腐らないという点です」と話すのは、冷凍食品の報道に携わって38年になる、冷凍食品ジャーナリストの山本純子氏。マイナス18度以下で保管するため細菌は繁殖できず、結果、保存料を使う必要がない。だから、安心して食べられるうえ、食品ロスもない。とかく“手抜き”イメージのある冷凍食品だが、山本氏によれば、“食材を洗う、切る、調理する”といった手間をメーカーが肩代わりし、おいしく調理したものをそのまま急速凍結の技術によって、消費者に届けてくれる“手間抜き”料理なのだとか。
「かつてはお弁当用が主流でしたが、最近ではむしろ食卓系の商品が増え、しかもお弁当用と兼用できるものが人気ですね」(山本氏)
また、最近の傾向として冷凍食品の買場が増えていることも指摘する。スーパーだけでなく、コンビニエンスストアやドラッグストア、ネットスーパーなどでも購入できるようになり、広がりを見せている。これに伴い、味やターゲットにこだわった商品が続々登場。とくにからあげはブームも後押しして、メーカー各社がしのぎを削っている。冷凍食品市場はまさに群雄割拠の時代に突入したといえそうだ。
Special Column
日本唐揚協会主催「からあげグランプリ®」気になるスーパー総菜部門 今年の最高金賞は?
本当にうまいからあげ店を決めるべく、日本唐揚協会が2010年より毎年開催している人気投票企画が「からあげグランプリ®」だ。年々規模が拡大し、昨年より「スーパー総菜部門」も新設、ますます盛り上がりを見せている。第11回目となる今年の結果はどうなるか? いよいよ本誌が発行される4月15日に明らかになる―――。
昨年スーパー総菜部門を新設背景にはおいしさの向上
日本でいちばんうまいからあげ店はどこにあるか? からあげ愛好者ならつい熱弁をふるいたくなるようなストレートな問いに真っ向から応えたのが、日本唐揚協会が主催する一般参加型の投票企画「からあげグランプリ®」だ。同協会が発足して3年目の2010年に初開催、好評を博して毎年行われている。しょうゆダレ部門、塩ダレ部門、手羽先部門など全11部門があり、SNSなどによる一般投票によって予選投票を実施。その後、決選投票を経て各部門の受賞店を決定する。年々投票総数は増え続け、昨年はついに20万人を超えた。当初は1万人規模だっただけに、いかにからあげ人気が拡大しているかがわかるだろう。
これまではからあげを提供する専門店や居酒屋、外食チェーンなどが審査の対象だったが、19年の「第10回からあげグランプリ®」から、11部門とは別に「スーパー総菜部門」が新設された。背景には、ここ数年でスーパーのからあげのおいしさが格段にアップしたことが挙げられる。昨年は東日本と西日本の2つの部門に分けてエントリーを募ったところ、東日本で48社、西日本で57社の応募があり、東西それぞれ金賞8社とその中からそれぞれ最高金賞1社が選出された。記念すべき初の受賞は、東の最高金賞がライフコーポレーション(大阪府)の「純和赤鶏むね唐揚げ」(首都圏店舗で販売)、西の最高金賞が平和堂(滋賀県)の「じゅわ旨! 生姜香る鶏もも唐揚」という結果だった。
揚・衣・汁・味・量に加えからあげに対する熱量も評価
さて気になる「第11回からあげグランプリ®」だが、今年は新たに中日本部門を創設。昨年11月18日から募集を開始し、今年1月27日までを募集期間としたところ、東日本スーパー総菜部門で43社、中日本で47社、西日本で40社がそれぞれエントリーした。応募資格は、日本国内のスーパーマーケットの総菜コーナーで20年4月15日現在で販売されている商品であること。審査段階で販売されていなくても構わない。ただし、1チェーン1商品に限る。
エントリー後、同協会のホームページにおいて一般消費者からの応援メッセージを受け付け、その数と内容を踏まえて書類選考を実施。試食審査に進める候補企業を選定した。その数、東日本は24社、中日本は22社、西日本は17社となった。
試食審査の審査員を務めるのは、同協会の幹部のほか、日本食鳥協会、有名からあげ専門店店主、スポンサー企業など10人。審査当日は、会場で仕込みと調理を行い、揚げた60分後のからあげを審査員が試食して行った。揚げたてがおいしいのは当たり前、スーパーの総菜だからこそ、冷めてもおいしいかどうかが審査のカギとなる。
審査項目は、同協会推奨の「うまい唐揚評価ポイント」である「①揚げ方の良し悪し②肉と衣のハーモニー③ジューシー感④からあげの味付け⑤コストパフォーマンスを考慮したボリューム」の5項目(各項目10点満点)のほか、今年から担当者の情熱やプレゼン内容などからあげに対する「熱量」(3点満点)も評価に加えた。1企業につき約3分の審査時間の中で試食、プレゼン、質疑応答を行い、金賞企業を選出。4月15日に東京で開催される授賞式で、金賞の中から最高金賞1企業を東日本、中日本、西日本それぞれから選出、表彰される予定だ。受賞すればプロモーションにも多大な効果があるだけに、各社の力の入れ具合は昨年以上といわれる。果たして、今年の栄冠はどのスーパーに?
国民食から世界の「KARAAGE」へ!
「からあげグランプリ®」を手がけて10年、からあげブームの拡大に貢献した日本唐揚協会が次にめざすのは、世界に通用する「KARAAGE」だ。
世界を見渡せば、アメリカの「フライドチキン」、スペインの「ポジョ・フリート」など揚げ鶏料理はいろいろあり、受け入れられる土壌は整っている。なにより世界的ラーメンブームの今、海外ではラーメン店のサイドメニューのひとつとして「KARAAGE」は定番化している。
鶏ムネ肉を使った鶏料理が世界基準といわれるなか、鶏モモ肉を使い、下味に工夫を凝らした「KARAAGE」は日本ならではの味。ぜひ世界に発信していきたいと同協会では意欲を見せている。