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進化続けるスーパーマーケットのピザ プロの職人が有力4社の商品を忖度なしでレビュー!

近年、スーパーマーケットの総菜部門でひときわ大きな存在感を放っているのがピザだ。食卓への登場頻度が高く、「焼き立て」の価値を訴求しやすいということもあり、最近は多くのチェーンが集客のためにピザを強化している。では、現在のスーパーマーケットのピザはどのようなレベルにあるのだろうか。“ピッツァのプロフェッショナル”としてメディア出演多数の日本ナポリピッツァ職人協会執行役員兼「PIZZERIA DA AOKI ‘tappost’(ピッツェリア ダ・アオキ タッポスト)」オーナーの青木嘉則氏に解説してもらった。

成長する総菜市場でピザは定番化

 日本総菜協会の「2024年度日本総菜白書」によると、23年の総菜の市場規模は109827億円で、24年には11兆円を突破することが予想されている。市場の拡大とともに、スーパーマーケット各社は総菜の開発・強化を推進している。

日本ナポリピッツァ職人協会執行役員兼「PIZZERIA DA AOKI ‘tappost’(ピッツェリア ダ・アオキ タッポスト)」オーナーの青木嘉則氏

 日々さまざまな商品が改廃されている同部門の中で、定番商品となっているのが「ピザ」だ。近年は多くのチェーンがピザを看板商品として大きく売り出しているが、現在、スーパーマーケットのピザはどこまで進化しているのか。ピッツァのプロである青木氏の協力のもと、有力スーパーマーケット4社のピザを実際に試食し、レビューしてもらった。

 なお、再加熱は、青木氏が示す手順に従い、本格的なピザの味が再現できる方法で行っている。手順は次のとおり。

1.フライパン(取材時に使用したものはテフロン加工)を強火で加熱する

2.表面の温度を上げた後、ピザを乗せる

3.霧吹きでピザの表面に水分を与えた後、アルミホイルを被せる

4.中火で1分~2分程度加熱

関東圏のスーパーマーケットから総菜ピザをセレクト

 今回調査対象としたのは、関東圏で店舗を展開する「オーケー」「サミット」「ライフコーポレーション」「ヤオコー」の4社が販売する「マルゲリータ」だ。箱から出した際の商品の見た目、具材とピザ全体の味と香り、焼き加減などを評価基準とし、加熱前と加熱後で評価した。ここからは、その評価と今後の改善点について青木氏が解説する。

オーケー

「手作りチェリートマトのマルゲリータピザ」(15㎝、129円)

※カット売り(1/4カット)で試食

 オーケーのマルゲリータは、全体的に生地に厚みがある点がまず目を引いた。ピザは一般的に、「コルニチョーネ」と呼ばれる部分(ピザ生地の縁の部分)がしっかりと空気を含んで膨らんでいることが理想とされるが、本商品はしっかりと膨らんでおり、焼き上がりもよい。瞬間的な高い温度でしっかりと焼かれていることがわかる。また、フレッシュなトマトを使用している点も評価できる。

 加熱前は、ナイフでは切れない固さだったが、加熱するとパンのような香りがたち、噛んだ時にピザ生地が持つ複雑な食感が出てきた。また、熱を加えることで、フレッシュなトマトの酸味が際立ち、おいしさが増している。

 サイズは小さめだが価格も安く、全体的に完成度が高い。工夫を加えるならば、バジルソースではなく、フレッシュバジルを使えば色味だけではなく香りがいっそう立つだろう。

ライフコーポレーション

「ミニマルゲリータ」24㎝、348円)

※取材時、ホールサイズがなかったため、ハーフサイズで検証

 ライフコーポレーションのマルゲリータは、裏面が白く、焼きが少々足りない印象だ。コルニチョーネはしっかり膨らんでいるが、生地を伸ばした時に偏りが出たのか、断面の厚みが均等ではなかった。

 この場合、食べる場所によって食感に差が出てきてしまい、生っぽい焼き上がりになりかねない。また、具材のチーズの量が少なく、生のバジルがピザの中央に置かれていないため、ホールで見た時のバランスが悪いなど、見た目の面で改善の余地がありそうだ。

 加熱前に食べると、生地の焼きが足らず、ピザというよりパンのような印象だ。味はトマトソースにほかの調味料が加わっているため複雑になっている。加熱すると香り、チーズのとろみ、オイル感が出て、生地の食感はクリスピー感が増すため、本商品は両面焼きができるオーブンなどの利用を推奨したい。

ヤオコー

「生ハムとモッツアレラチーズのマルゲリータ」(28㎝、598円)

 本商品は、裏面を見ると比較的火は入っていたが、見た目が全体的に白っぽく、柔らかいため、こちらも生地の焼きが足りない印象だ。

 断面は平坦で伸ばしがしっかりできているものの、打ち粉とオイルの量が多く、とくにオイルが底側に残っていたのが気になった。しかし、加熱すると香りが立ち、底側がよりオイリーになるものの食感はかなりよくなった。

 一方、具材については、一つ大きな改善点が見受けられた。それは、商品名に記載されている「生ハム」だ。実物で確認できるのは薄くスライスしたものではなく、ブロック状のもので、ベーコンのように見える。生ハムが持つ塩味などの主張が乏しいため、入れている意味をあまり感じられない。現状入れている生ハムを除いて手頃な価格にするか、より塩味のあるハムを入れたほうがよいだろう。

サミット

「ピッツァ マルゲリータ」(32㎝、758円)

 サミットのピザは生地の伸ばしがしっかりできている。しかし、ライフ、ヤオコーと同様、全体的に色が白く、やはり焼きが足りていない印象だ。

 また、生のバジルに加え、ニンニクが入ったバジルソースもかけている点、チーズとソースが混ざってしまっている点は改善の余地がある。このままだと、見た目が美しくなく、素材の味が不明瞭になってしまう。

 加熱後は気泡が出てカリッとした食感になり、オイルの量はちょうど良いが、トマトの香りは想定より立たず、ニンニクの香りで消されている。このような場合は最後にフレッシュな素材を載せるなど、具材を載せる順番やタイミングを工夫することで、商品の完成度を上げることができそうだ。

明らかに本格化しているが、課題は高い完成度をいかに維持するか

 4社を比較した結果、昨今のスーパーマーケット各社が取り扱う総菜ピザは、数年前にインストアベーカリーで取り扱っていた『ピザパン』とは異なり、より本格的なピザに近づいている。

 しかしながら、マルゲリータはトマトソース、モッツアレラチーズ、オイル、バジルというのがレシピの基本だ。使用する具材は本物志向のお客さまのニーズに応えるためにも、イメージ先行ではなく、実際に本場のピザを食し、「ピッツア」を理解した上で工夫をお願いしたいところだ。

 他方、取り組み次第ですぐに改善できる点もある。課題として多く見られた焼きの不足は、焼き具合を左右する機材の操作性やその教育をしっかり行うことで防げる。誰が調理をしても安定したピザの完成度・品質を維持することは各店のマニュアルで徹底しておきたい。

裏面を見ると、しっかりと火が通っていることがわかる
焼きがあまいと底面が白い

 ピザ専門店、宅配ピザ、ファミレス、冷凍ピザなど、消費者の選択肢も増え、ピザを巡る競争が厳しくなる中、スーパーマーケットの総菜ピザはまだまだ伸びしろがありそうだ。

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