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新酵母を使った日本酒を開発!老舗・大谷酒造の挑戦に迫る

山陰の銘酒「鷹勇」で知られる大谷酒造(鳥取県琴浦町)は明治5年創業の老舗だ。伝統を守りつつも新商品開発にも積極的に取り組み、ラカンセア酵母を使った日本酒を打ち出した。その新商品は早くも注目を集めている。

「鷹勇」を主力に41種の日本酒を取り扱い

 大谷酒造は全国新酒鑑評会において金賞を13回受賞しており、年に一度行われる蔵開きには県外からも日本酒ファンが訪れるほど人気のある酒造だ。現在は「純米大吟醸」「純米吟醸」「純米酒」「大吟醸」「吟醸酒・本醸造・普通酒」など41種類の日本酒を取り扱う。酒の味わいは「辛口」を主とし、それをウリにしている。

 なかでも大谷酒造が主力とするのは、山田錦を基本に玉栄、強力などの県産米を使用した「鷹勇」だ。「鷹勇」はほかの酒と同様に辛口を打ち出すほか、ラベルにもこだわり、公募した書道家の作品を使用している。大谷修子社長は「『鷹勇』の墨痕鮮やかな書体が、商品のクオリティをより高めています」と話す。

 「鷹勇」はおもに鳥取県を中心とした中国地方や九州地方のほか、大阪府、京都府、愛知県で親しまれている酒だ。しかし、大谷社長は「東京都、北海道、東北地方には浸透しているとは言い切れない」と話し、ネット販売にも力を入れることでこうした地域のファン獲得をめざしている。

新たな挑戦は新酵母を使用した日本酒

 同社は現在力を入れているのは商品開発だ。大谷社長は「ベテラン杜氏が培ってきた技術を始めとした『伝統』を大切にしながらも、新しい世代の飲み手に楽しんでもらえるような商品を開発したいと考えている。そのため、商品開発の際にはさまざまな世代の社員から意見をもらいながら進めている」と説明する。

大谷酒造の大谷修子社長

 直近ではラカンセア酵母を使用した日本酒を3種販売した。ラカンセア酵母は鳥取大学の研究チームが樹木から抽出した酵母で、ビールやピザ生地などに活用されてきた。それを日本酒に使用したのは、大谷酒造が初である。ラカンセア酵母で日本酒を醸すと、発酵中にアルコールと同時に乳酸を生成し「味わいにほのかな酸味が出ることで、すっきりとした印象に仕上がる」(大谷社長)。

 ラカンセア酵母を使用した1つ目の商品は、期間限定・数量限定の日本酒「鷹勇 純米吟醸 涼」(税込み1705円/720ml)だ。大山のミズナラから抽出したラカンセア酵母で醸した同商品は、柔らかな酸味とコクがありつつもすっきりとした特徴だ。この商品は2020年「『食のみやこ鳥取県』特産コンクール」の加工部門で準優勝受賞した。さらに21年の全米日本酒歓評会では銀賞を受賞している。

 2つ目は「純米吟醸 桜咲」(同1430円/500ml)。同社近くの桜から抽出したラカンセア酵母を使っており、白ワインのような酸味とほのかな甘みが感じられる。22年「『食のみやこ鳥取県』特産コンクール」の飲料部門では優秀賞を受賞した。

 3つめは銘酒「純米 二十世紀梨」(同1870円/500ml)だ。東郷地区の梨農家の果樹から抽出したラカンセア酵母を使うほか、鳥取県立倉吉農業高校が栽培した縁結び米を使用。優しくフルーティーに仕立てている。同商品は23年に「『食パラダイス鳥取県』特産品コンクール」の酒類部門で最優秀賞を受賞している。

 同社は定番の酒に加えてこうした新酵母で醸したユニークな日本酒も打ち出し、バラエティ豊かに商品を取り揃えている。大谷社長は「まずは商品を知っていただけるように、商談会やイベントにも積極的に参加している。また、海外市場の開拓にも目を向けており、国内だけでなく、海外雑誌などでも紹介していただけるよう取り組んでいる」と意欲を見せた。