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移転オープンした角上魚類 生鮮市場前橋店 「魚も肉も」充実の売場をレポート

角上魚類ホールディングス(新潟県/柳下浩伸社長:以下、角上魚類HD)は2023年7月14日、群馬県吉岡町に「角上生鮮市場前橋店」(以下、前橋店)を移転オープンした。鮮魚専門店として知られる同店だが、新店では精肉売場にも力を入れる。写真とともに売場の模様をレポートする。

角上魚類ホールディングスが7月14日、群馬県吉岡町に移転オープンした「角上生鮮市場 前橋店」

対面販売に力入れる
角上魚類スタイルを踏襲

 角上魚類HDは関東首都圏や信越地区を中心に、22店舗を経営する。旧店の「角上魚類前橋店」は1992年、「高崎店」(高崎市)に続く群馬県の第2号店としてオープン。新潟市場や豊洲市場から新鮮な魚を直送し、対面で販売するスタイルで地元の人気店となった。

 今回の移転には施設の老朽化に加え、駐車場の台数不足の問題が背景にあった。旧店の駐車可能台数は最大80台で、満員になってしまうとクルマが溢れ、周辺住民にも迷惑となる状況があった。今回オープンした前橋店は、最大226台に駐車スペースを拡大している。

 新店舗は群馬県吉岡町駒寄スマートICからクルマで3分、JR「前橋」駅からは前橋吉岡線バスで25分ほどの場所にある。旧店と比較して売場面積は、生鮮市場全体は1.8倍ほど、角上魚類は1.3倍の373.93㎡となっている。

「生鮮市場」は、角上魚類が精肉や青果店を誘致した複合型の店舗フォーマットだ。

 同店では、精肉専門店の「肉処大久保」(運営:オーエムツーミート)や、青果・日配店「ファーマーズマーケット ヴェルジェ」(運営:ヴェルジェ)がテナントに入る。前橋店では、高崎店にはない精肉の加工食品にも力を入れた。これら2店の売場面積だけで全体の約半分を占めている。

刺身・漬け魚・総菜まで、レパートリー豊富な鮮魚コーナー

 まず、核となる角上魚類の鮮魚エリアでは、お客との直のやり取りに力を入れる角上魚類ならではの販売スタイルを踏襲し、対面販売コーナーを店内に2か所設置した。

 片方のコーナーは鮮魚が中心で、店員に「2枚おろし」など希望を伝えると、その場でさばいてもらえる。取材日は天然真鯛(新潟)、真イワシ(石川)、いさき(長崎)、しまあじ(愛媛)など、新潟を中心に全国から取り揃えた生きのよい魚たちがまるごと1匹並べられていた。

対面販売コーナー。活気があり見ているだけでも楽しい

 もう1つの対面販売コーナーには浜ゆでの紅ずわいがに(佐渡)、岩もずく(新潟)、岩がき(徳島)などが並び、こちらも店員と直接やり取りをしながら購入数やグラム数を決められる。
ほか、鮮魚を天ぷらや唐揚げにした量り売りの総菜も充実している。

地元で扱いの少ない
牛ホルモンを充実

鮮度にもこだわった牛ホルモンのコーナー

 同店のなかでもとくに注目したいのが、精肉テナントの「肉処大久保」だ。地元で扱いの少ない牛ホルモンや、地元産の豚にこだわった生肉や総菜を提供する。

 売場ではとりわけ、牛ミックス、牛シマ腸、牛小腸など、トレーに盛られたホルモンが目を引く。もとは高崎店でもホルモンを取り扱っていたが、同店ではさらに種類を増やし、国産牛を中心とした鮮度の高い精肉を取り揃えた。価格も牛ミックスホルモン味付が100gあたり398円、牛シマ腸が同462円とお手頃だ。

 高崎は豚ホルモン発祥の地として知られ、地元の精肉店で売られているのは豚肉が中心だ。

 また、同店から数百メートルほど離れたところにある競合スーパー「ジャパンミート」「ツルヤ」ではホルモンの取り扱いが少ない。これらの要素から、差別化するねらいを込めて、ホルモン、そのなかでも牛ホルモンの販売を強化した。

ホルモンのなかでも牛ホルモンの販売を強化した

肉の付け合わせ
スパイスも種類豊富

 肉だけではなく、スパイスが充実しているのも特徴だ。精肉の量り売りエリアの上の棚には「にんにく塩」「やみつきガーリック」などの香辛料が所狭しと並ぶ。肉との組み合わせを考えながら選ぶのも一興だ。

精肉売場では、スパイスも充実させている

 豚肉で力を入れているのが、地元・赤城産の豚だ。焼き肉用のバラやトントロ、ロース、モモなどを幅広く取り扱う。

 旧店舗の利用客からの要望に応じる形で、メンチカツ、チキンカツ、手羽先揚げなど、精肉の総菜スペースも拡充した。赤城豚を使用した「手付け豚ロースかつ丼」は1つ399円。たれがしみ込んだ衣に肉厚の肉が詰まり、ボリューム満点だ。

精肉・青果コーナーは
お客の利便性向上のため

 青果や精肉のテナントを誘致し、魚以外の生鮮食品にも力を入れる理由について、角上魚類HD営業統括本部第三営業部部長の金山雄二氏は「お客さまにとっての利便性の向上」を挙げる。

 「当社は鮮魚専門店だが、魚だけでお客さまを集めることには限界もある。今日の夕食のメインを魚にするか、肉にするかで迷う日もあるとは思うが、どちらもあれば、楽しみながら商品を選んでいただけるのではないかと考えている」

 魚ではなく、精肉や青果などの魚以外の生鮮食品も美味しければ、その意外性も「また行きたい」という来店動機を呼び起こす付加価値となりそうだ。

 前橋店は、今回テナントスペースを拡充したぶん、直営の鮮魚エリアの客単価は下がったものの、店舗全体の業績は予想を上回って伸長。開店から2週間の販売動向は、旧店比145%(同時期比較)という。

 2023年3月には代表取締役会長兼社長である前代表の柳下浩三氏が退任し、長男の柳下浩伸氏が新社長に就任した同社。これまで店舗のスクラップ&ビルドという形でリニューアルを進めてきたが、今後は業態にとらわれず店舗数を増やしていく考えだ。24年には埼玉県草加市に、薬局関連のテナントを誘致した店舗の出店を計画中している。
 
「鮮魚専門店」というカテゴリーに留まることなく、独自の進化を図る角上魚類。その姿勢を体現した前橋店は、業界内でも注目の店舗となりそうだ。

【角上生鮮市場前橋店】

所在地 :群馬県北群馬郡吉岡町大字大久保1483-1
営業時間:(平日)10:00~19:30
     (土・日・祝日)9:00~19:30
売場面積:鮮魚売場 373.93㎡/113坪 1階(BY・共用部含む)1917.47㎡/580坪