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Tポイント×マルエツ 五島の未利用魚を活用した新商品を開発!

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(東京都/増田宗昭社長)傘下でTポイントサービスを運営しているTポイント・ジャパン(東京都/北村和彦社長)は1113日、長崎県・五島で通常は価値が付かない未利用魚を活用して開発した「五島のフィッシュハム」の発売を発表した。同商品はTポイント・ジャパンが立ち上げた「五島の魚プロジェクト」で開発されたもので、T会員の購買データをもとに選出された魚介好きの一般消費者、五島の水産加工業者である浜口水産(長崎県/濱口正秀社長)、首都圏で食品スーパー(SM)を展開するマルエツ(東京都/古瀬良多社長)が協業しているのが特徴だ。

「五島のフィッシュハム」はTポイント・ジャパンやマルエツ、浜口水産など立場の異なるメンバーが共同で開発した

未利用魚の活用でサステナブルな漁業の実現へ

 Tポイント・ジャパンは2016年、6900万人超のT会員のデータを社会や生活者に還元することを目的とした「Tカードみんなのソーシャルプロジェクト」を立ち上げた。「五島の魚プロジェクト」はその第3弾として186月から始まったプロジェクトで、1次産業の6次産業化をテーマに離島の漁業の課題解決に取り組んでいる。

※6次産業化:農業や水産業などの第1次産業が、食品加工(第2次産業)や流通・販売(第3次産業)にも関わること。6という数字は1と2と3を足す(掛ける)と6になることに由来する。

 今回のプロジェクトの中心となる長崎県の五島は魚の宝庫として知られており、クエや伊勢海老、ウニなど人気の魚介類は多く都市圏に流通している。一方、「サイズが不揃い」「魚種がマイナー」「一定のロットに満たない」などさまざまな理由から価値が付かず流通されない「未利用魚」が存在している。

 未利用魚になるケースが多いのが、定置網にかかる「ブダイ」「アイゴ」「ニザダイ」など。ただ、これらの魚種は海藻を食べて育つため磯の香りが強く、幅広く流通させるためには加工や味付けの面で工夫が必要になる。また、これら海藻を食べる魚が増加するのを放置しておくと海藻の数が減り、枯死してしまう「磯焼け」が発生し、水質が急激に悪化する恐れもある。

 このような背景から、Tポイント・ジャパンは五島の未利用魚に付加価値を付けて流通させることがサステナブルな漁業につながるのではないかという考えのもと、五島の漁協や水産加工会社の課題やニーズを把握し、Tポイントのビッグデータを活用した商品開発に取り組んだ。

Tポイントのビッグデータを活用した商品開発

 上記のような未利用魚の問題を解決するためには、漁業を行う1次産業従事者だけではネットワークや知見が少なく実現が困難だ。そのため、今回のプロジェクトでは、一般消費者としてT会員のさまざまなライフスタイルデータをもとに選出された魚介好きのT会員12人、生産者として五島でかまぼこなどの練り物の製造・販売を行っている浜口水産、流通小売代表として13年からTポイントサービスを全店で導入しているSM企業のマルエツなどが共同で商品開発を行った。

 実際の商品開発では、異なる分野・立場のメンバーそれぞれの知見をもとに意見を出し合った。マルエツ商品本部日配食品部部長の篠嵜正幸氏は「自分で料理を作るような、素材にこだわりのある方に買って頂けるような商品にしたかった」と話した。

 試作品の開発と試食を経て、「洋風のサルシッチャ」の開発を決定。未利用魚の磯臭さを解消するためにスパイスやハーブを混ぜていたことから「お酒に合うのではないか」という想定のもと、Tポイントの購買データを分析し、高質なビールを好む「プレミアムビールユーザー」をターゲットに定めた。

※サルシッチャ:イタリア語で「腸詰め」の意。肉やハーブなどの食材を腸詰めにしたもので、腸詰め肉を加熱したものを示す「ソーセージ」とは異なる。

 データ分析では、プレミアムビールユーザーは地場商品や無添加の商品を好み、国産志向が高い、といった特徴も判明した。今回発売に至った「五島のフィッシュハム」は、未利用魚のブダイをはじめとする原材料のほとんどが五島産となっているほか、添加物や化学調味料も使用しないなど、ターゲットの好みに合致した商品となっている。

定番化をめざし、販路は少しずつ拡大

マルエツ65店舗などで販売する「五島のフィッシュハム」

 マルエツでは65店舗で五島のフィッシュハムを展開する。「お酒に合う商品というコンセプトで売り込むため、おつまみコーナーのある店舗で提案する」(マルエツ広報担当者)。そのほか、長崎物産館や浜口水産の店舗・ネット通販でも販売される。今後の販路拡大について、浜口水産の専務取締役である濱口貴幸氏は「未利用魚は扱う魚種が限定されるため、急激に販路を広げる予定はない。息長く定番化することをめざしているため、少しずつ広げていく」と語った。

マルエツ店舗では五島のフィッシュハムをお酒に合う商品として売り込んでいく(写真は発売日のための特設コーナーで、通常時はおつまみコーナーで展開する)

 五島の魚プロジェクトの今後について、Tカードみんなのソーシャルプロジェクトのプロジェクトリーダーである瀧田希氏は「まずは商品を定番化してプラットフォームをつくり、このプロジェクトにほかの事業者も参加したり、今回五島で得た知見をほかの離島での課題解決に生かしたりすることも視野に入れたい」と話した。

他社との協業で商品の独自性を高めることが可能に

 五島の魚プロジェクトのように、商品をつくる生産者、商品を流通・販売する小売業者、実際に商品を食べる消費者が一体となることで、より多角的な視点から商品開発を行うことが可能になる。また、Tポイント・ジャパンが所有する大量の購買データを分析することで、商品のニーズやターゲットを深く掘り下げることができる。

 日本の人口が縮小するなか、小売各社は総菜などを中心に他社と差別化しやすい独自商品の開発に力を入れている。今回のプロジェクトに要した期間は約1年半と長く、プロジェクトのメンバーは実際に五島を訪れフィールドワークを行うなど時間も手間もかかっている。しかし、今回のように他社との協業やビッグデータを活用して開発された商品は自社だけで商品開発するよりも独自性が高く、ヒットすれば差別化商品として強力な集客装置になり得るのではないだろうか。