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第2回 惣菜の売上は伸びるも食機会数(客数)は伸びていない

フードサービスアナリストから見た中食の実態

コンビニ、専門店、スーパーのコア客層は?

 市場規模拡大が続いていると言われている中食市場。しかし、市場規模以外の客数や食事に利用される回数、利用者層や利用シーンなどの利用実態は一般的に公開されておりません。
 エヌピーディー・ジャパンが提供する外食・中食市場情報サービス『CREST®』は、1年365日継続して行っている調査で、業態や食シーン、利用層ごとの市場規模、食機会数、客単価動向を分析することができます。この『CREST®』から、中食市場の利用実態をシリーズで紹介していきます。

 『CREST®』によると、第1回目のレポートでは、中食の市場規模は4年連続で拡大しているものの、客数にあたる食機会数は、ここ3年伸び悩んでいるということを紹介しました。人口減少が主な理由ですが、1人当たりの利用回数・ニーズは増加しています。特に15-29才はもっとも年間平均中食回数が多く、増加率も高いことを紹介しました。

 ただし、この数字だけみて、若者をターゲットにすべきだ!と考えるのは早合点です。
このシリーズ2回目では、中食市場の性年代比率や、職業比率などを中食利用層の実態に迫ります。

 2018年計の中食喫食者を、コンビニ、弁当・惣菜専門店、スーパーの3業態別に、それぞれ性・年代比率、職業比率、未既婚比率で、どの層がコア層なのか見ていきましょう。

 まず、図表2-1で、性・年代比率を見てみます。コンビニは男性比率が高く、男性40-59才の層が最も多く23%を占めます。横並びで他業態と比較すると、男性15-29才が15%で、スーパー、弁当・惣菜専門店の9%より6ポイントも高いので、若い男性が他業態より多くコンビニの強みであることがわかります。弁当・惣菜専門店も男性比率が高く、男性40-59才が最も多い層です。コンビニと比べると14才以下の子供と、男女ともに60-79才のシニア層が多いことが特徴です。スーパーは、女性比率が、コンビニより8ポイントも高く、特に女性40-59才が16%を占める最も多い層となっています。コンビニと比べると、弁当・惣菜専門店同様に14才以下とシニア層が多いのも特徴です。

図表2-1 中食喫食者層-性年代構成比

 次に図表2-2で職業比率を見てみましょう。どの業態も会社員/公務員が最も多いですが、比率が大きく異なっています。コンビニでは54%と半数以上を占め、弁当・惣菜専門店では50%、スーパーでは34%に過ぎません。スーパーでは、その代わりに専業主婦(15%)、14才以下の子供(13%)の比率が高くなっています。

図表2-1 中食喫食者層-職業構成比

 未既婚の比率を図表2-3で見てみます。コンビニは、男女ともに、未婚者と既婚者が同率です。弁当・惣菜専門店は、男女ともに既婚者が未婚者を10ポイント上回っています。スーパーでは、男性は、未婚者と既婚者はほぼ同率で、女性は既婚女性が33%と未婚女性18%を15ポイントと倍近く多くなっています。

図表2-1 中食喫食者層-職業構成比

他業態のコア客層をターゲットに据える

一部店舗では買物代行サービスにも対応する

ここまでをまとめると、各業態における喫食者層は、以下のような特徴があります。

〇コンビニ→コア客層:男性15-59才、会社員。 強み:若い男性。
〇弁当・総菜専門店→コア客層:男性40-59才、会社員、既婚者。 強み:子供、シニア。
〇スーパー→コア客層:男女40-59才。 強み:子供、シニア、専業主婦。

それぞれの業態におけるターゲット客層が上記の客層となります。品ぞろえやキャンペーンを策定する際には、この客層をターゲットにすることを念頭に置くべきです。もし、貴社の客層がこれと全く異なる場合、とりこぼしている客層があると考えていいでしょう。市場全体と比較することで、自社の取りこぼしやビジネスチャンスが見えてくるはずです。

 また、他業態からなんとか客を奪えないかと考えている企業は、その競合業態のコア客層や強みの客層をターゲットにすえるとよいでしょう。たとえば、スーパーから客を奪いたいコンビニは、コンビニでは弱い主婦、シニア、子供のほか、コンビニでも強い男性40-59才をターゲットにした戦略を考える、というわけです。

 今回は、ターゲット客層がだれになるのかを見てみましたが、「じゃあ、どうやってこの人たちに響く商品やマーケティング戦略を考えるの?」という疑問が出てくると思います。次回3回目では、中食がこのターゲット層の人たちにどのようなシーンで使われているのかを分析することで、その問いのヒントを見つけていきたいと思います。

 1回目にも書きましたが、社会の変化やターゲット顧客をまずは把握してこそ、ニーズに合った商品を出せるわけで、売上を上げることにつながります。昔ながらの“勘”と自社の売上実績に頼るマーケティングの時代は終わりました。今は、市場全体と社会の動向把握に注力していくことが、マーケティングの基本中の基本と言えるでしょう。

プロフィール

エヌピーディー・ジャパン株式会社
NPDはアメリカをはじめ世界23ヶ国で消費者パネル調査および小売店パネル調査を展開する調査・市場規模測定のリーディング企業。エヌピーディー・ジャパンは外食・中食(業務用食品)市場、 スポーツシューズ・アパレル市場に関する最新動向やインサイトを提供している。

CREST®
外食・中食市場において 「いつ、誰が、どこで、何を、どのように食べ、どの程度満足したか」など消費者のあらゆる喫食動態データを1年365日、直接消費者から収集し、年間13万を超えるサンプル数を元に調査分析できる情報サービス。外食市場規模、中食市場規模、客数を業態、セグメント別に把握可能。
URL: http://www.npdjapan.com/service/food.html

執筆: フードサービス シニアアナリスト 東(あずま)さやか

エヌピーディー・ジャパン株式会社
TEL: 03-5798-7663 
FAX: 03-5798-7665 
Email: npdjapan.info@npd.com