イオンリテール(千葉県/井出武美社長)の精肉部門は原価高騰という局面の中、お客の「不」を解消する商品政策(MD)や、生産者との直接契約によるブランド肉の販売、プロセスセンター(PC)の有効活用などで独自性を発揮している。同社食品本部畜産商品部部長の釼持彰氏に、精肉部門の戦略を聞いた。
高まる「手間いらず」需要鶏肉の“うす切り”が好調
釼持氏によると、日本国内における食肉の需要は過去20年にわたって伸び続けているという。畜種別では、牛肉の需要がBSE(牛海綿状脳症)や口蹄疫などの家畜疾病の発生に伴って落ち込み、2023年現在、ようやく00年時点の水準まで回復してきた一方、豚肉や鶏肉の需要は過去20年間で約2倍まで大きく伸長した。コロナ禍における内食需要の高まりも、食肉の需要増に大きく作用した。釼持氏は「食材に対する価値基準が変わり、おいしさやコストパフォーマンス、使い勝手のよさが以前よりも求められている」と分析する。
そうした状況の中、イオンリテールでは、消費者の「不の解消」を付加価値とした商品を開発し、需要の多様化に対応している。イオングループのプライベートブランド(PB)「トップバリュグリーンアイ」の特別飼育鶏「純輝鶏」を薄くスライスした「純輝鶏皮なしむね肉うす切り」や「純輝鶏もも肉スライス」はその代表的な商品だ。これらの商品の売上は過去2年で約2倍伸びたという。通常、鶏肉は一枚肉の状態で販売される、加工度の低い商品が主流だ。家庭で鶏肉を調理するときの「不」として「火の通りが心配」「切るのが面倒」「調理に時間がかかる」などが挙げられる。「純輝鶏皮なしむね肉うす切り」や「純輝鶏もも肉スライス」は、これらの「不」を解消する使い勝手のよさを付加価値とし、鶏しゃぶからチキンライス、炒め物、煮物、天ぷらまで、さまざまなメニューに対応できるのが特長だ。釼持氏は「内食需要が旺盛な中、調理の“手間いらず”を提供価値として、新たな需要を創出できた」と手応えを語る。
この「純輝鶏」のうす切り商品は、店内加工では手間もコストもかかるため、PCを活用して効率よく生産されている。
イオンリテールでは、「“手間いらず”の需要は高まっている」(釼持氏)とし、豚肉のうす切りやとんかつ用、牛肉のステーキ用でも、加工度を高めた使い勝手のよい商品を拡充していく方針だ。
冷凍焼き鳥が大ヒット
他方、イオンリテールでは
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