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チーズ市場、値上げの影響でスライスチーズは需要減、食べ方が浸透したモッツァレラは好調

コロナ特需の反動で2021年から前年割れが続いたチーズ市場。22年上期も値上げなどの影響で厳しい状況となった。その反面、国産チーズは輸入チーズとの価格差が縮まったことで需要が高まっている。

在宅勤務中の間食に最適、チーズデザート

 KSP-POSデータのプロセスチーズの期間通算(2021年10月~22年9月)金額PIは、8723円で対前年同期比2.5%減。月別金額PIでは全体的に微減となっている。コロナ禍による内食志向や家飲みにより堅調に推移してきたプロセスチーズだが、徐々に外食機会が増えてきたことに加え、4月に値上げを行った影響で前年割れとなった。プロセスチーズの中で大きく需要を落としたのが、スライスチーズや直食系のおつまみチーズ。コモディティ化しているスライスチーズは、値上げの影響を最も受けており、厳しい状況となった。

22年上期も値上げなどの影響で厳しい状況となったチーズ市場だが、国産チーズは輸入チーズとの価格差が縮まったことで需要が高まっている。(i-stock/IgorDutina)

 雪印メグミルクの「スライスチーズ」は今年で発売60周年を迎え、この秋には20年ぶりに全種のパッケージをリニューアル。シンプルかつスタイリッシュなデザインにすることで、店頭での視認性を高めた。

 プロセスチーズで年々、存在感を高めているのがチーズデザート。チーズの持つ栄養価や糖質の低さへの注目が集まっており、とくにコロナ禍の在宅勤務中の間食として人気となっている。森永乳業の「クラフト もちもち」シリーズや「クラフト小さなチーズケーキ」シリーズの期間限定商品が好評だ。この秋には、濃厚でクリーミーなチーズにナッツのペーストを練り込み、クラッシュアーモンドを加えた「フィラデルフィアme」を新発売。ポーションタイプで手軽に食べられることを訴求している。

日常的な食べ方が広がり、モッツァレラが好調

 KSP-POSデータのナチュラルチーズの期間通算金額PIは、6977円で対前年同期比4.7%減。月別金額PIではすべての月で前年割れとなった。

 ナチュラルチーズの中で好調なのが、もっちりした食感が特長のモッツァレラチーズ。森永乳業では、ハレの日のカプレーゼ提案のほか、加熱したときにもちもち食感になる特性を生かしたモッツァレラ鍋などの提案に力を入れている。また、明治では手でちぎって調理する「ちぎりモッツァレラ」を提案し、日常的な喫食機会を促進した。こうして食べ方提案が浸透したことでモッツァレラ市場は好調だ。

 一方、健康効果や調理への活用が普及したことで拡大してきたカマンベールチーズだが、21年は前年割れとなった。各社では食べ方提案に力を入れており、明治では、アヒージョやフォンデュなど、カマンベールをまるごと使用するレシピを提案。雪印メグミルクでは、冷蔵庫から出して、15分程度食べるのをガマンしてもらう「#15分ガマンベール」を提案しており、余計な冷たさが取れることで、旨味がより際立つ。

 また、カマンベールにブルーチーズを組み合わせた、よつ葉乳業の「大人のカマンベール&ブルー」が好調だ。日本人に合ったクセの少ないブルーチーズがカマンベールにほどよいアクセントを加え、大人ユーザーから支持されている。

 輸入チーズの値上げにより、国産チーズとの価格差が縮んだことで、各社では国産チーズに注力しており、今後も国産チーズの需要が高まることが予想される。