コロナ禍や値上げラッシュなど逆風が吹き荒れた2022年度上期。サミット(東京都/服部哲也社長)においても例外でなく、厳しい結果となった。だが、「ここでしか買えない」という付加価値をもったオリジナル商品を発掘・開発することで、集客につなげている。上期の振り返りと下期の施策について、執行役員の浦野耕一氏に聞いた。
上期は酒類と米が低調
―― まずは22 年度上期の振り返りをお願いします。
浦野● コロナ禍が続いていますが、これまでのような行動制限がないため、内食需要は増えておらず、見込みよりも厳しい結果となりました。とくに酒類は、昨年の家飲み需要の反動で対前年比10% 減、主力品の米も単価が下がった影響で前年割れしています。
加工食品の多くは値上げがありましたが、影響のあるカテゴリーと影響の少ないカテゴリーがあります。直近で見ると、サラダ油やマヨネーズは7 月以降、売上は前年並みまで回復しています。
―― 厳しい状況の中でも、伸長したカテゴリーはありましたか。
浦野● 比較的好調だったのが菓子カテゴリー。グミなどの子供向けポケット菓子が伸び、シリアルではオートミールが押し上げました。また、レンジでチンするパックごはんも対前年比6%増と好調で、「個食」の需要とみています。われわれが出店するエリアは単身世帯が多いので、米の売上が減少する一方、こうしたパックごはんは今後も伸びていくでしょう。
ほかには、「健康」軸の商品が好調でした。たとえば、ヤクルト本社の「Y1000」は欠品が出るほど。その影響で、機能を付加した高単価の乳酸菌飲料が売れ、カテゴリー自体が伸びています。
オリジナル商品が大きく伸長
―― 上期で注力された取り組みについて教えてください。
浦野● 全般的に値上げがあるなか、どんなものをお客さまに訴求していくか。サミットでは、値上げの影響がないカテゴリーで、かつ競合他店に取り扱いのないものを当社のオリジナル商品として取り上げてきました。PB という枠だけでなく、バイヤーが発掘した商品や留め型商品も含みます。
こうした商品には、当社のスタッフが「コレって、いいかも!」と推薦する販促物を付けて売り込みをしています。「コレって、いいかも!」の定義は、非必需品で“ついで買い”する商品。よりおいしいとか、今話題とか、すごく便利とか付加価値があり、思わず買ってみたくなる商品です。他社との差別化にもなり、非常に好調です。
―― 具体的には、どんなオリジナル商品がありますか。
浦野● たとえば、静岡の修善寺醤油の「かばさん印の万能たれ」ですね。焼肉のタレのカテゴリーに入るのですが、今年4 月から7 月までの4 カ月間で累計2万本以上を販売し、ナンバーワン商品になっています。タマネギがたっぷり入った醤油ベースのタレなので、焼肉だけでなく、いろんな料理に使えることをチラシで訴求したところ、大変話題になりました。関東エリアで購入できるのはサミットだけというのも後押ししたと思います。
ほかには、北海道のご当地コンビニ、セイコーマートの「北海道メロンソフトクリーム」や福島の人気商品、河京の「喜多方ラーメン」などが好調ですね。こうしたオリジナル商品の発掘・開発は今後も続けていく予定です。
健康、簡便、個食がカギ
―― では、22 年度下期の商品施策について教えてください。
浦野● 今後も食料品の値上げが続くと予測されるので、値上げ後の販売動向をしっかりととらえて、どう対応していくか。スピード感をもって取り組んでいきたいと考えています。サラダ油やマヨネーズのように落ち込んでもすぐに回復するカテゴリーもあれば、なかなか回復しづらいカテゴリーもあるので、販促の強弱をつける必要もあるでしょう。なによりお客さまの価格志向が強くなってきていますから。
とはいえ、価格政策だけでは限界があります。きちんと利益をとれるものを見極めて提案していくことが重要だと思います。
―― キーワードを挙げるなら、どんなものでしょうか。
浦野● まず「健康」が挙げられます。大豆ミートなどプラントベースフードはニーズが高まり、今後も伸びるだろうとみています。そこで、新店においてはプラントベースフードのコーナーを設け、既存店においても改装する際にはコーナー化を進めています。
また、先ほど挙げた「個食」もそうですが、「簡単・便利」もはずせないキーワードです。たとえば、鮮魚売場で販売しているレンジ調理の味付魚は非常に伸びてきています。「こんなにおいしいものが、こんなに簡単にできるなんて!」と好評でファンが増えているのはうれしいですね。
―― NB の新商品で注目しているものはありますか。
浦野● まず、エバラ食品さんの「フライパンで焼肉鍋」。鍋つゆのバリエーションが増えるなか、フライパン調理というところが「簡便」ニーズにマッチしていると思います。
話題性という点では、日清食品さんの「完全メシ」シリーズですね。手軽に栄養バランスが整う商品で、キャンペーンなどの販促も期待できそうです。
「健康」軸の商品では、明治さんの「明治脂肪対策ヨーグルト」が挙げられます。商品名を聞くだけで刺さる人もいるのではないでしょうか。
今後は冷凍食品売場の拡大を
―― 最後に、売場づくりについてお聞かせください。
浦野● コロナ禍となって以来、「簡便」ニーズに応えた冷凍食品が非常に好調です。なかでも、おかずや中華関連、カット野菜やスイーツなどは大きく伸長しています。サミットとしても、冷凍食品売場の拡大が今後の課題。新店はともかく、既存店の場合はスペースの問題もあるので、フェイスの調整を行い、取扱いアイテム数の拡大を進めています。
―― 商品のラインアップについてはいかがでしょうか
浦野● 販売データを確認すると、冷凍パスタなどは高価格帯から低価格帯のものにシフトしています。コロナ禍や値上げなどの環境要因で販売動向も変わってくるので、今後、定番アイテムの見直しも必要かもしれません。
こうしたなか当社では、オリジナルの冷凍食品の開発に取り組んでいます。当社の総菜売場で好評な商品を冷凍食品にすることで、競合他店との差別化を図ることができるでしょう。サミットでしか買えないものを多種多彩に揃えることで、集客につなげていきたいと考えています。