特定の地域で店舗を展開するローカルスーパーは、その地域ならではの商品を豊富に品揃えしていることが少なくない。本稿では、福岡県を中心に食品スーパー（SM）や酒類専門店などを展開する西鉄ストア（福岡県／秋澤壮一社長）の店舗で見つけた地元商品を紹介する。（商品価格は2021年10月14日購入時のもの）
複数のフォーマットを展開する電鉄系SM
西鉄ストアは、鉄道事業を中心に不動産やホテル運営などさまざまな事業を展開する西日本鉄道（福岡県／林田浩一社長：以下、西鉄）の商事部からの分社化によって1969年に設立されたSM企業だ。メーンフォーマットの「にしてつストア」のほか、付加価値型の商品も品揃えする「にしてつストアレガネット」など複数の業態を持つ。SM以外では、酒類専門ディスカウントストアの「あんくるふじや」も展開している。
2021年10月、ダイヤモンド・チェーンストアの特集「ローカルスーパー、大進化」の一環で西鉄ストアを取材した際に訪れたのが、同社本部に隣接している「にしてつストアレガネット朝倉街道」（福岡県筑紫野市）だ。余談だが、実は筆者は福岡県出身で、この店舗ではないが子供のころはよく母に連れられてにしてつストアに行ったものだった。今はもう実施していないが、自分で商品を選んで貼ると値引きされる「セルフディスカウントクーポン」のシールを菓子に貼らせてもらっていた思い出もある。
「うまか『久原醤油』かしわ飯」
そんな幼き日々の思い出が詰まったにしてつストア。懐かしさもあり、取材後に店舗でいくつかの地域商品を購入してみた。
まず紹介するのは「うまか『久原醤油』かしわ飯」（2個178円：以下、本体価格）。聞きなじみがない方に説明すると、福岡県をはじめ、九州地方では鶏肉のことを「かしわ」と呼ぶことが多く、かしわのほかにんじんやゴボウなどの具材をご飯に混ぜ込んだものを「かしわ飯」と呼ぶ。福岡県ではSMのほかコンビニエンスストア（CVS）や飲食店でもよく見る定番メニューだ。
食べてみると、鶏肉はもちろん、ごぼうがきいていておいしい。十数年ぶりに味わった故郷の味である。そして商品名にもあるとおり、味付けには福岡県の老舗調味料メーカー久原醤油のものを使っているほか、「うまか」は福岡県の方言で「おいしい」という意味だ。まさに福岡県のローカルスーパーならではの商品といえるだろう。
「マンハッタン」
次に紹介するのは「マンハッタン」（4個入り225円）。名前だけではどういった商品かイメージがわかないかもしれないが、写真のとおりドーナツ型のパンである。オールドファッションにチョコをかけたような商品だ。ただ、一般的なドーナツよりは歯ごたえがあり、サクサクした食感が楽しめる。味付けも甘すぎず、小腹が空いたときなどにちょうどよい。
「マンハッタン」を製造しているのは福岡県を本拠とするパンメーカーのリョーユーパン。SMやCVSだけでなく、学校の売店でも販売しているほど地域に根差した商品だ。筆者も中高生のころおやつ代わりによく食べたものである。上京してはじめて、ローカル商品だったことに気づき驚いた覚えがある。
「西鉄グランドホテル 伝統のビーフカレー」
最後に紹介するのは「西鉄グランドホテル 伝統のビーフカレー」（1000円）。西鉄傘下の「西鉄グランドホテル」で約半世紀変わらない人気メニュー「伝統のビーフカレー」を再現したレトルトカレーだ。購入時は、「埼玉西武ライオンズ」の前身でもある球団「西鉄ライオンズ」70周年記念の期間限定パッケージだった。
1000円というレトルトカレーにしてはかなりの高単価商品だが、実際に食べてみるとそのクオリティの高さに驚かされる。ホテル本家のメニューは食べたことがないため再現されているかどうかはわからないが、高級感あふれる香りと味わいはレトルトカレーとは思えないほどだった。とくにおいしいと感じたのはメーン具材の牛肉で、味はもちろん食感が非常に柔らかく、満足度の高いものだった。甘口ではないが、辛さがそれほど得意でない筆者でも食べることができる程度の標準的な辛さだ。日常的には購入するには安くないが、プチ贅沢としてたまに買う商品としては最適だ。
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今回紹介した3つの商品以外にも、にしてつストアでは地元メーカーと開発したプライベートブランドなど、数多くの地域商品を取り扱っている。地域商品は自社の独自性を出すうえで有効な施策の1つだ。福岡県に行った際には参考に購入してみてはいかがだろうか。