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中食市場におけるスーパーのシェア上昇、 掴んで置きたい消費傾向と購買心理の変化

6年ぶりに市場縮小
単価はアップも回数が減

 リクルートが運営する、飲食に関する調査・研究機関「ホットペッパーグルメ外食総研」では毎月、首都・東海・関西の3つの圏域の約1万人を対象に、夕方以降の外食・中食の
実施状況についての調査を行っている。そのなかで2022年度(22年4月~23年3月)の概況がまとまったので紹介したい。

 コロナ禍3年目の2022年度は、外食市場規模が前年度比41.2%増と、2年連続での回復傾向となった。一方で中食市場は16年度以来6年ぶりに市場規模が縮小した年度となった。

 3圏域合計の中食市場規模は1兆4431億円と推計されたが、その内訳としては、延べ回数(推計16億971万回)が同8.4%減、客単価が(平均897円)で同3.5%増であった。中食の述べ回数の減少は、コロナ収束で外食の延べ回数が同25.3%と増加したことが影響したと考えられる。

50代女性は定着傾向も
20代女性は中食回数が減少

 延べ回数は、1カ月当たりの「実施率」と「実施者の平均頻度」に分解される。中食の実施率は66.9%(21年度70.8%)、実施頻度は5.03回/月(同5.11回/月)となっており、実施率・頻度ともに前年度までの好調から減少に転じている。

 性年代別では、最も中食の購入シェアが高いのは、国勢調査による人口構成比が最も高いこともあって40代男性で、回数ベースで13.3%、単価を掛け合わせた市場シェアでは13.0%となっている。

 21年度との比較では、回数ベースで最も減少率が低くとどまったのは、50代女性で(同3.3%減)、逆に最も減少率が高かったのは20代女性(同12.5%減)だった。
市場規模ベースでも、最も減少率が低かったのは50代女性(同2.3%減)、最も減少率が高かったのが40代男性(同8.5%減)であった。

50・60代女性、30代男性
スーパーでの購入増

中食の購入チャネル別のシェア

 23年5月には追加調査も実施した。23年4月の中食の購入チャネル別のシェアは、1位「スーパーマーケット」(月間利用率62.0%、前年同月比0.9ポイント<pt>減)、2位「外食店のテイクアウト」(同26.5%、同6.8pt減)、3位「コンビニエンスストア」(同23.7%、同0.4pt増)、4位「百貨店(デパ地下など)」(同19.0%、同0.3pt増)、5位「持ち帰り専門店(弁当など)」(同16.5%、同1.3pt減)、6位「外食店の出前・デリバリー」(同6.7%、前年同月と同じ)となっている。

 22年度に比べると、コロナ禍が収束したものの、「外食店のテイクアウト」「持ち帰り専門店(弁当など)」は微減している。ただし、コロナ前の19年度比ではまだ高い水準を維持している。
一方、「スーパーマーケット」「コンビニエンスストア」「百貨店(デパ地下など)」「持ち帰り専門店(弁当など)」は22年度を上回った。19年度比ではまだ回復しきれていない。

 性年代別でも、差が見られる。「スーパーマーケット」では、50・60代女性と30代男性において、前年同月比で5pt以上の利用の増加が見られ、「百貨店(デパ地下など)」と「持ち帰り専門店(弁当など)」では、20代女性において、前年同月比で5pt以上の利用の増加となっている。

「ピザ、パスタ」
「寿司・和食」の減少目立つ

中食の購入品目

 中食の購入品目については、1位が「総菜・おかず・揚げ物類」(月間購入率51.6%、前年同月比1.4pt減)、2位「弁当」(同41.0%、同0.4pt減)、3位「寿司・和食」(同36.2%、同2.4pt減)、4位「パン・サンドイッチ・ハンバーガー、おにぎり類」(同27.3%、同0.2pt減)、5位「カレー・丼もの」(同16.8%、0.9pt減)となっている。

 上位4品目の順位は前年と変わらないが、5位は、前年は「ピザ、パスタ」であった。「寿司・和食」は購入率が2年連続して下がっている。

「料理をするのが面倒」
「簡単に済ませたい」は減少

 なお、中食の購入理由を聞くと、1位「簡単に済ませたい」(58.8%、前年同月比2.7pt減)、2位「料理するのが面倒なときがある」(41.2%、同3.3pt減)、3位「料理をする時間がない」(31.5%、同0.9pt減)と、トップ3の理由には変化はなかったが、それぞれ数値が減少した。

 また、「人が集まる空間を避けられる」(6.1%、同6.0pt増)も、コロナ収束とともに大きく減少した。一方、「1人だと外食店に入りづらい」(同0.6pt増)や「料理すると材料があまる、無駄が出る」(同0.6pt)は増加している。

【調査概要】
インターネット調査、調査期間:2022年4月~2023年3月(毎月)、
有効回答数:毎月約1万人(首都圏、関西圏、東海圏の合計)。
令和2年人口推計に基づいて性別・年代・地域の250区分でウエィトバックを実施)

【執筆者】
『ホットペッパーグルメ外食総研』上席研究員 稲垣昌宏

 エイビーロード編集長、AB-ROAD.net編集長、エイビーロード・リサーチ・センター・センター長などを歴任し、2013年ホットペッパーグルメリサーチセンター・センター長に就任。市場調査などをベースに消費者動向から外食市場の動向を分析・予測する一方、観光に関する調査・研究、地域振興機関である「じゃらんリサーチセンター」研究員も兼務し、「食」と「観光」をテーマに各種委員会活動や地方創生に関わる活動も行っている。肉より魚を好む、自称「魚食系男子」