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明治が5年かけて開発 「生チョコみたいなのに常温保存できる」新食感チョコの正体

 特許製法「生ねり製法」を採用した、明治の新領域の菓子「生のときしっとりミルク」が好調に推移している。生産体制を整えることで10月7日より販売エリアを関東甲信越から、中部、関西エリアまで拡大し、数量限定で再発売する。

この記事のキーポイント

  • カカオショックによる価格高騰など、チョコレートに対する消費者の価値観の変化に対応するため、新領域の商品を開発している。

  • 特許製法である「生ねり製法」により、生チョコレートのようなやわらかさと常温での長期保存を両立させた新食感の菓子を開発している。

  • 発売直後からSNSで話題となり、当初の予測を大きく上回る販売を記録するなど、ユーザーから食感や味覚に関して高い評価を得ている。

楽しみ方を広げてチョコレート市場を拡大

特許製法「生ねり製法」で生み出されたしっとりとやわらかで濃密な味わいを楽しめる新領域の菓子「生のときしっとりミルク」

 2026年に誕生100周年を迎える「ミルクチョコレート」をはじめ、さまざまなチョコレート商品を展開し市場を牽引する明治。同社ではナッツとの組み合わせによるおいしさを訴求する「アーモンド」や「マカダミア」、今年発売50周年を迎える「きのこの山」をはじめとするチョコとスナックのコンビネーション、チョコレートを通じて健康価値を提供する「チョコレート効果」、カカオの産地による香りの違いを味わう「meiji THE Cacao」など、さまざまなチョコレートブランドを世に送り出してきた。

 同社グローバルカカオ事業本部 カカオマーケティング部 カカオG長の正直 哲郎氏は、「生のとき」の開発背景について、「当社の長い歴史の中で、チョコレートを食べる幸せな体験をより多くの方に届けたいという想いがあり、さまざまな商品開発を通じチョコレートの楽しみ方の幅を広げてきた。

 これまで世に送り出してきたチョコレートはいずれも硬い食感のものだったことから、やわらかな食感による新たなチョコレートの楽しみ方を提供することで、市場を拡大していきたいという思いが、『生のとき』の開発のきっかけとなった」と語る。

 やわらかな食感のチョコレートというと専門店の生チョコレートが思い浮かぶが、冷蔵保存かつ賞味期限が短いため通常のチョコレート売場で展開することは難しい。

 そのため、明治は「ミルクチョコレート」と同等の手軽さを提供するために、生食感を担保しつつ常温展開でき、なおかつ賞味期限の長い商品を開発するという考えに至った。

明治 グローバルカカオ事業本部 カカオマーケティング部 カカオG 正直 哲郎氏(右)、カカオ開発部 カカオG 黒須 充春氏(左)

 グローバルカカオ事業本部 カカオ開発部 カカオGの黒須 充春氏はチョコレートに対する価値観の変化について「『ミルクチョコレート』が誕生した1926年、チョコレートは非常に高価な品で、100円台から数百円台で購入できるようになったのは近年になってからのこと。当社はチョコレートをより親しみやすい存在とするためにビジネスを展開してきたが、昨今のカカオショックもあって価格が高騰し、消費者のチョコレートに対する価値観も変化している。当社は長年チョコレートに関する技術開発に注力してきたが、味わいや機能性に続く新たな領域として、生チョコレートのようなやわらかな食感と常温での長期保存可能を両立させる、新たな技術開発をすすめることとなった」と話している。

生地・成型開発に各5年 今までにない食感を生み出す

 生チョコレートのようなやわらかな食感と、常温での長期保存が可能な生地の開発には、約5年の歳月がかかった。

 チョコレートは水分3%以下、生チョコレートは水分10%以上という規定がある。明治では冬季限定「メルティーキッス」ブランドを展開している。同ブランドは油脂の融点をコントロールする独自技術により雪のようなくちどけを実現しているが、チョコレートの硬さ自体は通常の「ミルクチョコレート」と大きく変わらない。

 同社では生チョコレートのような食感を実現するためチョコレートに水分を加えることで、やわらかさと独特の溶け方をめざし開発を進めた。

 アルコール不使用かつ、常温(28℃以下)で保管可能であることを条件に、やわらかさの残る範囲で水分量を減らししつつ、乳化が安定しないこれまでにない水分領域に挑戦。試行錯誤のうえ、特許技術である「生ねり製法」を確立した。

 一般的なチョコレートは材料を混ぜ合わせるのに対し、「生ねり製法」は、カカオとミルクを強い力で練り合わせる。水分3%以下のチョコレートでも、水分10%以上の生チョコレートでもないこれまでにない水分領域であり、一般的なチョコレートよりも、口の中でゆっくりと時間をかけてやわらかく溶け、ほどよい甘さと余韻を楽しむことができる。

 またソフト生地の成型および包装の設計にも5年の歳月をかけ、最適な大きさと個包装による利便性を追求。小判形で満足感のある11g、幅は食べやすい25㎜、4枚入りを設定し、2025年5月13日、関東甲信越エリアの数量限定品として「生のときしっとりミルク」を発売した。

店頭向けにテレビCMと連動した各種販促ツールを店頭向けに用意している

 「生のときしっとりミルク」は「生ねり製法」で生み出された板チョコレートと生チョコレートの間となる新領域の菓子だ。食べ始めはしっとりやわらかな生食感で、口の中では徐々にミルクとカカオの芳醇な香り立ちを感じ、その後、濃厚な味わいが口の中に広がって満足感を覚えつつ、最後は、後味に甘さを残さないキレのよさが楽しめる。

 メーンターゲットは、オンタイムの休憩時などちょっとしたご褒美にしっかりとした味わいのチョコレートを求める30・40代。パッケージでは「生ねり製法」や「時間」を表現したシズルと共に生食感を想起させるロゴと優しい色味を採用している。

 コミュニケーションは俳優の新垣結衣さんを起用。「新しすぎてチョコレートとは呼べない」という印象的なキャッチコピーと共に、同品ならではのやわらかな「新食感」や「味の余韻」をゆったりとした時間で表現している。

「生チョコのような」「今までにない食感」

 「生のときしっとりミルク」は発売と同時にSNS等で話題となり、各店舗で売り切れが続出。予測を大きく上回る想定の倍以上の販売を記録し、6月初週には生産在庫の完全出荷に至った。ユーザーからは「生チョコのような感覚でおいしい」「カカオが効いているのか、コクがある」「今までにないしっとりとした食感」と味覚への評価が非常に高かった。

 また、4枚入りで300円前後という付加価値型の商品でありながら、ID-POS分析では10・20代の若年層ユーザーも多く獲得しており、今までにない食感と共に、印象的なキャッチコピーやコミュニケーションが幅広い年代のユーザーに刺さったと分析している。

 予想を上回る好調な売れ行きを記録したことを受け、明治は生産体制を整えて10月7日より販売エリアを関東甲信越から、中部、関西エリアまで拡大し、数量限定にて発売する。

 発売のタイミングに合わせ、テレビCMをはじめWEB、SNS、雑誌、交通広告など、各種プロモーションを展開するほか、店頭向けにCMと連動した販促ツールも準備している。

 明治では今後も「生ねり製法」を活用した商品開発に注力し、チョコレートのおいしさ・楽しさの世界を広げていきたいとしている。

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