1951年にスウェーデンで誕生し、世界160カ国以上で食品用紙容器を開発・製造するテトラパック。その日本法人である日本テトラパックでは、持続可能な社会の実現に向けて使用済み紙容器のリサイクルに力を入れている。その一環として、今年6月、ライフ、カゴメと連携した啓発イベントを開催。今後もリサイクルの促進を図っていく考えだ。
アルミ付き紙容器の資源循環をめざして
創業以来、持続可能性を追求してきたテトラパックでは、再生可能資源といわれる板紙(※1)で包装容器をつくるだけでなく、製造・販売した紙容器が確実にリサイクルされることもめざしている。日本テトラパックにおいても、脱炭素・循環型社会の実現に向けた取り組みを推進。なかでも注力しているのが、アルミ付き紙容器のリサイクルだ。
※1テトラパックの紙容器に使用されている原紙はすべてFSCⓇ認証を取得し、責任調達を通して生物多様性の保全に努めている。
アルミ付き紙容器は、内容物を光や酸素から守るためにアルミ層を含んだ構造をしており、添加物や冷蔵を必要とせずに常温で長期保存できるのが特長だ。野菜ジュースや豆乳、アーモンドミルク、コーヒーなど多くの商品に採用されている。アルミ付き紙容器をリサイクルできる工場が地域限定的であったため、ほとんどが焼却処分されている。
しかし、現在は紙繊維、アルミ層、ポリエチレンに分離する技術と設備を備えるリサイクル工場が増えてきた。回収事業者の協力により、スーパーマーケット店頭などで牛乳パックと一緒にアルミ付き紙容器を回収する場合は、回収事業者の協力により選別され、それぞれのリサイクル工場へ運ばれた後、トイレットペーパーや段ボールなどに再生されるようになった。
しかしながら、アルミ付き紙容器の回収・リサイクルはあまり知られておらず、リサイクル率はわずか3.6%(※2)にすぎない。そこで、日本テトラパックではアルミ付き紙容器の回収拠点の拡大を図る一方、消費者に向けたコミュニケーション活動にも注力。西日本エリアでのリサイクル強化を図るため、6月の環境月間に合わせて啓発イベントを開催した。
※2 印刷工業会液体カートン部会『2023年度 アルミ付飲料用紙容器のリサイクルフロー調査報告書』
今回のイベントのねらいは、消費者に向けてアルミ付き紙容器の回収拠点を喚起し、リサイクルへの参加を促すことにある。それゆえ、実際にアルミ付き紙容器の資源回収を行っているライフと、テトラパックの紙容器を採用して環境配慮型商品を展開するカゴメと連携。初の3社共催による啓発イベントとなった。
2025年6月6日、ライフセントラルスクエア西宮原店(大阪市)のイベントスペースを会場に、アルミ付き紙容器を持参した人とリサイクルの説明を聞いた人を対象に、カゴメの商品やテトラパックのオリジナルノベルティが当たるガラガラ抽選会を実施。200名を超える参加者でにぎわった。
今回のイベントを振り返り、日本テトラパック サステナビリティディレクターの大森悠子氏は「お客さまにとってリサイクルを身近に感じてもらうきっかけになった」と手応えを感じている。
「カゴメ様商品の試飲から容器のリサイクル工程や回収拠点の一連の流れを具体的に示すことができ、お客さまのご理解も進んだと思います。飲み終わった後の容器を開く際に便利なオープナーやリサイクルで作られたペーパーナプキンをノベルティとしてお配りし、リサイクルへ関心を持ってもらい、参加を促しました。
紙容器の回収・リサイクルはお客さまの行動から始まるだけに、今後もお客さまにとってわかりやすく、リサイクル参加を促すような取り組みを継続していく予定です。同時に、企画に賛同し、連携してくださる関係者を増やすことも大事。店頭イベントだけでなく、SNSなども活用しながら、お客さまへのコミュニケーションを積極的に行っていきたいと思います」(大森氏)
環境保全への気づきと新たな来店動機を創出
ライフの取り組み
「志の高い信頼の経営」を通じて持続可能で豊かな社会の実現に貢献することを経営理念に掲げるライフでは、環境への負荷低減を一つの柱に据え、さまざまな取り組みを行っている。たとえば、小売業では最大規模となるバイオガス発電設備を大阪と埼玉で導入。CO2排出量削減に加え、食品廃棄ロス削減にも貢献し話題を呼んでいる。また、資源リサイクルにも積極的に取り組み、アルミ付き紙容器については2024年5月より西日本エリアのライフ約160店舗で店頭回収をスタートさせた。
今回の3社共催によるリサイクル啓発イベントでは会場を提供。お客さまと直接対話ができ、有意義な企画だったと話す。とくに、アルミ付き紙容器をどのようなかたちで回収ボックスに入れたらいいのかを、日本テトラパックのスタッフが実演したことで、来店客の関心が高まり、環境保全への気づきになったと評価。さらに、新たな来店動機の創出にもつながったと喜ぶ。
「環境意識が高まる中、お客さまのお店選びの基準として、価格や品揃え、品質だけでなく、『環境に配慮する企業』も重要な選択肢になりうると感じています。今回のように、小売業とメーカー、容器メーカーが一緒になってリサイクルを訴求できるのは新しい切り口であり、リサイクル行動が地域に定着するよう、他店舗への展開も検討しています」(広報担当者)
消費者に直接情報を伝え課題を聞き取る絶好の機会
カゴメの取り組み
食を通じて3つの社会課題「健康寿命の延伸」「農業振興・地方創生」「持続可能な地球環境」の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業をめざすカゴメ。なかでも、「持続可能な地球環境」については、商品容器や梱包資材を環境負荷の低いものに切り替え、サステナブルな社会の実現に貢献している。具体的には、紙容器飲料のプラスチックキャップを植物由来素材に切り替えたほか、ストローレス化を図り、ペットボトル容器も環境に配慮した100%リサイクル素材を採用している。
しかしながら、最も多く調達している容器であるアルミ付き紙容器についてはリサイクルが進まず、焼却処分されていることに課題感を持っていた。そうした中、日本テトラパックから3社共催による啓発イベントを提案され、ぜひ資源循環の促進に貢献したいと賛同したという。
「3社共催のメリットは、消費者の方に直接情報をお伝えしたり、課題の実態を聞き取ったりできることです。今回、アルミ付き紙容器の再資源化があまり知られていないことがわかり、認知を広げる活動が必要だと実感しました。また、牛乳パックに比べてハサミで切りづらいという声もあり、リサイクルが浸透しないボトルネックの一つではないかと気づかされました。今後、こうした課題を解決していくために、いろいろなステークホルダーの方と一緒に取り組んでいきたいと考えています」(サステナビリティ担当者)
日本テトラパックの紙容器の回収・リサイクルの取り組みについてはこちらをご覧ください