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リテールメディアの新標準へ。P&Gとサツドラが語る「Retail Booster」の可能性

サツドラアプリ画面

リテールメディアの新スタンダード

P&Gジャパンとサッポロドラッグストアー(以下、サツドラ)はサイバーエージェントの小売店のアプリに特化したクーポン付き動画広告配信サービス「Retail Booster」を活用したマーケティング施策を先行して実施。

メーカー・小売企業の収益最大化を両立する次世代型リテールメディアプラットフォームとして期待される同サービスの活用事例を紹介する。

(左より)サイバーエージェント AI事業本部 Retail Adsカンパニー 事業責任者 堀内 直人氏、P&Gジャパン シニアセールスディレクター 営業統括本部 景山 由香氏、ユニットマネージャー 営業統括本部 金井 友宏氏、サイバーエージェントAI事業本部 Retail Adsカンパニーセールス責任者 内木場 功樹氏
サッポロドラッグストアー CDO兼 マーケティング部 ゼネラルマネジャー 坂本 武史氏(左)、マーケティング部 マーケティング担当吉野 有香氏(右)

メーカー・小売業が考えるリテールメディアの魅力とは

サイバーエージェント・内木場(以下、内木場):はじめに、P&G様は販促チャネルとしてのリテールメディアをどのようにとらえておられますか?

P&Gジャパン・景山(以下、景山): 当社は「Consumer is Boss」、つまり消費者起点で物事を常に考えるという理念をグローバルで掲げ、ビジネスを展開しています。

 購買行動には認知や興味を持ってもらう「買物前」、商品を比較検討し購買する「買物中」、使ってみてリピート購入するかを考える「買物後」という3つのフェーズがありますが、リテールメディアは各フェーズに合わせたアプローチができるという点で有効な販促ツールだと考えています。

 また、リテールメディアはパーソナライゼーションの文脈でも非常に効果があると考えています。昨今の生活やニーズの多様化に加え人口動態も変化していく中、個人に合わせてアプローチの仕方を変えられる点は魅力です。リテールメディアは進化の途中にある分野ですので今回のように小売店様と協働し、新たな取り組みも試しながら当社も知識を深めていきたいと思っています。

内木場:サツドラ様は長年リテールメディアに取り組まれていますが、この分野をどのようにとらえているか、また課題等がありましたらお聞かせください。

サツドラ・坂本(以下、坂本):当社は北海道地区を中心とした企業ということもあり全国展開の企業と比較するとマーケットシェアは小さいです。しかし自社アプリのDL数は100万を超え、北海道地域での店舗シェアもある程度有しているため、エリア限定でのマーケティングを行ううえで、効果はある程度担保されていると思っています。

 小売業が提供するリテールメディアの最大の魅力はリアルとデジタルの融合にあり、逆に融合しなければうまくいきません。

 リテールメディアの今後を考えるのであれば、会員情報と紐づけできるオウンドメディアとしてのアプリをうまく活用することが求められるでしょう。当社は近年メーカー様と一緒に取り組むケースが増えてきています。お互いwin-winになるようなコンテンツを作っていく難しさはありますが、認知から買い上げまでのつながりを可視化できる点を活用し、効果検証に結び付けることが重要と考えています。

内木場:当社は小売業の自社アプリ内で動画広告の視聴完了やアンケート回答をすることでクーポンやポイントを付与し、商品理解と購買を同時に促進する新たなリテールメディア「Retail Booster」の提供を2025年3月より開始しました。

 今回、24年12月および25年1月の期間で「ジョイジェルタブ食洗機用」「ジョイプロ洗浄」「アリエールMiRAi」の3商品を対象に、サツドラ様のアプリ内で動画配信の実証実験を行いましたが、実験にご協力いただいた背景についてお聞かせください。

景山:今回「Retail Booster」に魅力を感じた要因のひとつが、商品の便益をしっかりとお伝えできる点にあります。TVなどマスメディア向けのCMは広く商品認知を獲得できるものの、限られた時間の中で細かいスペックや効果までお伝えできないことがあり、また、店頭で販促物などを置いても情報を伝えきれないジレンマを抱えています。

 今回の施策では動画配信を通じ商品の便益や特長をお伝えできる点が魅力と感じました。また買物前に動画視聴することで、商品の特長を理解して来店されるという点でもコミットメントが得られると感じ参画させていただきました。

視聴完了率は9割超え 新規ユーザー獲得にも寄与

内木場:サツドラ様はいかがですか?

坂本:リテールメディアにはさまざまな手法がありますが、動画視聴後にクーポンなどのインセンティブを与え、それが店頭で使用されたかまで追跡し分析できるサービスはこれまでになく、非常に面白いと感じました。

内木場:今回の実験では、動画の尺の長さにかかわらず動画視聴完了率は90%以上と高い水準を記録し、クーポン使用率も大幅に改善しました。さらに過去3年間、サツドラで同商品の購買実績のない方の使用率が60%超と新規ユーザー獲得にも貢献しました。この結果について、P&G様はどのように感じておられますか?

景山:まず視聴完了率が90%を超えたことに驚きました。店外での動画視聴率の高さにも驚きましたね。さらに多くの新規ユーザーの方々にご購入いただけた点も期待以上の成果でした。クーポン使用率についてもコミットメントの高さがそのまま成果に表れたと感じています。

サイバーエージェント・堀内(以下、堀内):これまでの動画広告は強制的に見させられて
いるという感覚がありましたが、「Retail Booster」は興味のある動画やクーポンが欲しい動画を消費者が選び自主的に見ることができる点が大きな特徴です。先ほどコミットメントという表現をされましたが、このサービスはまさしくそこにつながるもので今回の実験で数字に表れたのは大きな収穫でした。

P&Gジャパン・金井:今回の配信では値引きだけを行う、製品便益を感じられる情報を出す、ブランド感を出すといったようにさまざまなパターンの広告を展開しましたが、中でも製品便益をお伝えした「ジョイジェルタブ食洗機用」の広告効果が非常に高かった。

 ニーズの多様化に伴い、日雑品のSKU数も加速度的に増えていますし、消費者も納得感を持って商品を選びたいと考えている。そういう意味でも、便益をお伝えする動画の視聴によりクーポンを配布するこの手法への期待値は実施前から高かったですが、期待通りの結果が出たことを嬉しく思います。

 またID-POSデータからユーザーの購買行動を理解することは、リピート購入を後押しする点で非常に有効な手段ですが、今回のようなユーザー側のコミットメントを得られる仕組みというのは、より多くの新規ユーザーに弊社製品をご購入いただくためにも非常によい手段だと感じました。

店頭との連動性を強化し、よりよいサービスの提供へ

内木場:今回の取り組みについてサツドラ様の所感をお聞かせください。

坂本:よい結果に満足していますが、今後、さらに成長させていくためにはメディアであるアプリの価値を高めることが最も重要なのかなと。新規の会員獲得はもちろんですがユーザーへのアプローチを増やし、コンテンツを増やしていきながら、将来的にはアプリの店外起動を促進していくことが求められていると思います。

内木場:「Retail Booster」への今後の期待などがあればお聞かせください。

サツドラ・吉野:次の段階として、クーポン利用者に対しリピートを促すようなリターゲティング広告を展開していけるよう注力していきたいですね。

 またメーカー様からSNS向けに制作した既存の縦型動画を活用したいというご提案が多くあります。近年、若い世代を中心に縦型動画が広がっていることから、縦型動画に親しんでいるユーザーにも見ていただけるコンテンツを提供していきたいです。

坂本:吉野が話したようにこうしたサービスは、ユーザーの声を取り入れアジャイル(素早く)で開発していくことが一番重要だと思っています。これで完成というわけではなく消費者起点によるサービス向上をめざし、ともに開発を行っていきたいと思っています。

景山:課題は店頭との連動性です。買物前のアプローチという点で今回は成功を収めましたが、「買物中」「買物後」を含めた連続性をもう少し強化していけたらと。

 また今回サツドラ様からお預かりしたデータをもとにパーソナライズした情報提供を行うことで商品の満足度を上げながら、リピート購入を後押しする施策も合わせて強化していきたいと考えています。

堀内:景山様がおっしゃったようにID-POSデータに「Retail Booster」で取得した情報を付加することでよりデータがリッチ化することから、多種多様な切り口でのアプローチが可能になります。

 また、吉野様のお話にあった縦型動画についてはクリエイティブチームと連携し「Retail Booster」に最適なフォーマットを見つけたり、動画の長さに対するインセンティブはAI経済学の技術をかけ合わせ最適な数値を算出するなど、当社ならではの提案力で、メーカー、小売、消費者にとって三方よしとなるサービスを提供していければと考えています。

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