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2024年秋・冬新商品「消費者の節約志向」に打ち勝つ食品・飲料が持つ強み

24年秋・冬新商品ヒットランキングのメイン

 アフターコロナに入り、人流はコロナ禍以前の水準まで戻ってきたものの、昨今の物価上昇の影響もあり消費者の節約志向は続いている。本稿では2024年秋・冬新商品ヒットランキングを見ながら好調の要因と消費のトレンドを探る。

新フレーバーや容器展開で
カテゴリーに活気を与える

 2024年7~12月に新商品・リニューアル商品として発売された商品を期間金額PIでランキング化したところ(販売店率20%以上の商品が対象)、主要カテゴリーのランキング1位商品は【図表】 のような結果となった。

主要カテゴリーにおける新商品ヒットランキング1位の商品

出所:KSP-POS(食品SM)に基づき弊社にて集計。2024年7月から12月までに発売された発売された新・リニューアル商品の期間金額PIをランキングで抽出。期間は2024年7月から25年2月までの8か月間。販売店率20%以上が対象
※記事中では、KSP-POSカテゴリー名称「袋ビス/クッキー」を「袋ビス・クッキー」と表記している。

 コロナ禍以降、消費動向が日々変化する中、各カテゴリーの1位に挙がった商品は、カテゴリーに新たなユーザーを呼び込む新機軸の商品や、これまでにないフレーバーの商品が多く選出された。

 キリンビールの「KIRIN プレミアムジンソーダ 杜の香」は、ジュニパーベリー100%※の国産ジンを使用したジンベースのRTDだ。原材料には、同ブランドから発売している壜製品の「杜の香ジン」の原酒を一部使用。「杜の香ジン」は、新開発の粗挽き製法によりジュニパーベリーのおいしさを最大限に抽出し、清涼感のあるボタニカルの味と香りを余すことなく引き出している。

 同品はレモンとライムが香るすっきり清涼感のある味わいで、40・50代を中心とした甘くないお酒を嗜好するユーザーに加え、これまでジンベースをはじめとした原酒ソーダを飲んだことがない新規ユーザーによるトライアル購入の獲得にも成功している。今期は「同 ジントニック杜の香」の通年発売をはじめ、「同 ジンモヒート 杜の香」を期間限定品として展開し、甘くないRTDの新たな選択肢として、「杜の香」ブランドを訴求していく。

※ジンのボタニカル原料に占める割合

 メルシャン「甘熟ぶどうのおいしいワイン スパークリング缶 赤」は、ぶどう本来の甘さが楽しめるアルコール度数3%のボトル缶スパークリングワインだ。

 近年のワイン市場は世代を問わず間口が減少傾向にあり、新規のユーザー獲得がカテゴリー全体の課題となっている。一方、ボトル缶のワイン市場はリキャップ可能である点や手頃な価格、サイズや容量がちょうどいいことなどを理由に大きく伸長しており、注目のカテゴリーとなっている。

 「甘熟ぶどうのおいしいワイン」シリーズは、ぶどう本来の甘さで多くの新規ユーザーやライトユーザーからも好評を得ており、アルコール度数3%の低アルコールで商品設計を行うことで、「酔い過ぎずにオシャレな気分で気持ちが満たされる」価値を提供している。

 新フレーバーや味の新奇性についても見ていこう。サッポロビールの「サッポロ濃い搾りグレフルサワー ノンアルコール」は、居酒屋で提供されているギュッと搾ったような芳醇な味わいのグレープフルーツ味が楽しめるノンアルコールサワーだ。パッケージには居酒屋の暖簾をイメージしたイラストを配置し、いつもの晩酌と同じ気分で飲めるノンアルコールグレフルサワーであることを表現している。

 同品は好調な「サッポロ 濃い搾りレモンサワー ノンアルコール」のフレーバー展開ということで流通バイヤーからの注目度も高く、売上も好調に推移。今年4月より通年展開をスタートしており、レモンとグレープフルーツの2種展開で、ノンアルコール飲料市場を盛り上げていく。

「まみれさん」が雪にまみれる

 不二家では人気の「カントリーマアム」の「まみれさん」シリーズの冬季限定商品として「カントリーマアム まみれさん追いかけて雪国」を発売。同品はオランダ産ココアを練り込んだ生地にチョコチップをたっぷり配合し、ホワイトチョコレートでコーティングした、“チョコにまみれた”カントリーマアムだ。ホワイトチョコレートで真っ白にコーティングすることで、雪にまみれた「まみれさん」をイメージしている。

 同品は、「まみれさん」が雪国を訪れる様子が描かれた、全7種の個包装デザインが楽しめるミドルパックと持ち運びにも便利なコンビニエンスストア限定の小袋サイズも展開し、好評を得た。

 信頼感のあるロングセラーブランドやリニューアル品も引き続き人気を集めている。

 明治の「銀座カリー」は、洋食文化が花開いた昭和初期をコンセプトにしたレトロ感あふれるパッケージと、それに合わせた中身が特長のロングセラーブランドだ。発売30周年に合わせて行ったリニューアルでは「銀座カリー中辛/辛口」「銀座キーマ」「銀座バターチキン」「銀座ハヤシ」それぞれで具材を大幅に増量することで、食べ応えや満足感を高めた。さらに、従来通りの湯煎での調理はもちろん、電子レンジでも調理可能なパッケージを採用することで、ユーザーの利便性を高めている。

 加えて「銀座洋食」シリーズは冷凍食品も展開しており、レトルトでは挑戦しづらい洋食メニューのオムライスやビーフストロガノフなどを展開することで、「銀座」ブランドの底上げを図る方針だ。

デザイン刷新で魅力を高める

 丸大食品の「ビストロ倶楽部 ドリアシリーズ」は24年秋に中身とパッケージをフルリニューアル。中でも外食店の人気メニューをベンチマークにした〈ミラノ風ドリアソース〉は、具材のひき肉とトマト感をアップし、よりコク深い味わいに仕上げた。パッケージはドリアのイメージに合う洋食屋のような温かみのあるデザインに刷新し、背景を一色にすることで、シズル写真や商品名の視認性を高めている。

 味の素は洋風メニュー用調味料「Bistro Do®」を24年8月にリニューアル。出来上がり量を「3~4人前」に変更したほか、パッケージのデザインも刷新したことでトライアル購入が増加した。メニュー調味料のうち、中華はメニュー、和風は素材を念頭に購入される傾向にあるが、「Bistro Do®」はソース起点であることからアレンジメニューが想起されやすく、高いリピート購入にもつながっている。

 アフターコロナに入り人流はコロナ禍以前の状態に戻りつつあるが、長引く原材料価格の高騰、円安などの影響から、消費者の食品や日用品に対する財布の紐は固い。先行き不透明な状況下、変わりゆく消費者の購買行動を分析し、商品構成や売場づくりに生かすことが求められている。

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