「居酒屋で味わう手搾りレモンサワーのような“レモン味”濃いめでしっかりすっぱい!」をコンセプトとしたマーケティング戦略で好調に推移するサッポロビールの「濃いめ」ブランド。昨年10月に数量限定で発売した「濃いめのグレフルサワー」は、グレープフルーツの豊かな風味で女性や若年層など新たな客層を獲得している。
RTDとRTSの両輪で成長「濃いめ」ブランドの変遷
サッポロビールの「濃いめ」ブランドの歴史は、コロナ禍直前の2019年10月から始まった。
レモンサワーブームに先駆け、同社はレモンの味が濃い「進化系レモンサワー」をコンセプトにしたRTS(Ready to Serve)商品として「濃いめのレモンサワーの素」を発売。同品は、シチリア産の手摘みレモン果汁を使用。炭酸水で割るだけで口当たりのよい酸味の居酒屋風レモンサワーが楽しめると多くのファンを獲得した。
※RTS(Ready To Serve=氷を入れた状態で飲むのに最適な味わいのバランスに仕上げたスピリッツやリキュール)
「濃いめ」ブランドのメーンターゲットは30代から40代の仲のよい夫婦であり、夕食時に夫婦で気軽に「おうち居酒屋」気分を楽しんでもらうことをイメージしている。
コロナ禍に入り、外飲みから家飲みへの動きが加速した20年以降、同社ではより手軽においしいレモンサワーを楽しんで欲しいとRTD(Ready to Drink)商品の開発に着手。21年3月に発売した「濃いめのレモンサワー」は、同社のRTD単一フレーバーとして史上最速となる1カ月で2,500万本(250ml換算)を突破し、幅広い客層とリピーターを獲得した。
※RTD(Ready To Drink=ふたを開けてすぐ飲める飲料のこと)
この好調を受け、同社は「同若檸檬」や数量限定品などRTDのアイテム数を拡充。RTSについても「濃いめのレモンサワーの素」の1.8ℓペットを発売している。
レモンに次いで「グレフル」も
そして同社は「濃いめ」ブランドのさらなる拡大をめざし、レモンに次いで人気の高いグレープフルーツフレーバーの「濃いめのグレフルサワーの素」を22年10月に発売した。
「濃いめのグレフルサワーの素」は、居酒屋で飲むグレープフルーツサワーのような甘酸っぱさとほのかな苦味が特長のRTS。炭酸水で割るだけで果実感あふれるグレープフルーツサワーが手軽に楽しめる。
同品はジューシーな味わいから若年層や女性の支持が高く、新規ユーザーの取り込みにも貢献。23年3月にはヘビーユーザー向けに「濃いめのグレフルサワーの素ペット1.8ℓ」を発売した。
RTDとRTSの両輪展開で成長を続けてきた「濃いめ」ブランド。ブランド認知が広がり、「濃いめのグレフルサワーの素」についても「手軽に飲めるRTDを出して欲しい」という要望が数多く寄せられたという。この反響を受け、同社は23年10月に数量限定品としてRTD「濃いめのグレフルサワー」の発売に踏み切った。
ジューシーな味わいで女性や若年層を獲得
「濃いめのグレフルサワー」はグレープフルーツ果汁に加え、グレープフルーツ漬け込み酒を一部使用。居酒屋で飲むギュッと手搾りしたようなジューシーな果実感が味わえる。
同商品は、「濃いめのレモンサワー」の好調を背景に、バイヤーからの期待値が非常に高く、数量限定品としては同社過去最大の受注量になったという。
店頭では「濃いめのレモンサワー」および「濃いめのグレフルサワーの素」と連動した売場を展開。「レモンも濃いめ!グレフルも濃いめ!」というキャッチコピーによる販促ツールも準備した。
発売の反響は非常に大きく、多くのトライアル&リピートを獲得。メーンユーザーは「濃いめのレモンサワー」同様40・50代の夫婦だが、若年層や女性ユーザーがレモンサワーよりも多い傾向にあるという。
「濃いめのグレフルサワー」のヒットの要因について、同社では「濃いめ」ブランドへの信頼感やRTSの成功を踏まえたRTDへの期待感に加え、グレープフルーツの果実の特長である「ジューシーな味わい」が求められるグレフルフレーバーにおいて、「濃いめ」というキーワードと合致したことなどを挙げている。
手軽に楽しめるRTDの「濃いめのグレフルサワー」の発売により多くのエントリーを獲得した同ブランドでは、リピーターによるRTDからRTSへの移行も見られている。
クロスMDやキャンペーン期間限定品も投入
同社は、24年も「濃いめ」ブランドのマーケティングに注力する。「濃いから、うまいっ!」をキーワードに、ストレートなおいしさを伝えることでトライアルを獲得し、RTD・RTSともに間口を広げることをめざす。
6月には「濃いめのレモンサワー岩塩の夏」、7月には「濃いめのレモンサワーおろし檸檬」をそれぞれ数量限定で発売する。「岩塩の夏」はシチリア産岩塩を使用して夏を感じるしょっぱ旨いレモンサワーに仕上げたほか、「おろし檸檬」は皮ごとすりつぶしたペーストを加えることで後引く旨さの奥深いレモンサワーとなっている。
また、食との連動にも力を入れる。ブランドサイトでは「濃いめのレモンサワー」には唐揚げ、「濃いめのレモンサワー若檸檬」にはポテト、「濃いめのグレフルサワー」には餃子といったように、それぞれのフレーバーに合うメニューを提案。いずれも食卓の定番メニューであり、総菜売場との親和性も高い。ゴールデンウィークには「濃いめ」ブランドとして初めて、複数の食フェスに協賛し、飲用体験の拡大も図った。
濃いめ×唐揚げ=“濃いカラ”企画で攻める
店頭施策については最盛期となる7~8月にかけて、濃いめ×唐揚げによる“濃いカラ”企画を実施。テレビCMやWEBサイト、店頭まで一気通貫して「濃いカラ」をテーマに情報発信する。
7月1日からは、昨年も好評を得た日本ハムの「チキチキボーン®」とコラボレーションしたクローズドキャンペーンを実施。テレビCMでもキャンペーンの告知を行う予定だ。さらに同月にはディスプレイコンテストを実施し、「濃いめ」ブランド全体で酒類売場を盛り上げていく。
レモンサワーブームが落ち着きを見せる中、「濃いめ」ブランドについては毎年成長を続けている。同社では、「濃いめ」ブランドを通じてRTD・RTSの間口を広げることで、市場を活性化していきたいとしている。