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福祉、エコ、シニア対応で激変、2021年「独身の日」詳報!天猫とJDで16兆円に

中国において一年で一番盛り上がるECショッピングの祭典、11月11日に行われる中国「独身の日」(ダブルイレブン:以下W11)。今年のW11の流通取引総額(GrossMerchandise Value:以下GMV)はアリババグループの天猫(Tmall)が5403億元(約約9兆6600億円)、JD.comは3491億元(約6兆2400億円)を超え、どちらも前年比を大きく上回る結果となった。

折り返しの11/3時点では売上高3162億元、うちライブコマースは821億元

 天猫では第一波(予約期:10/20-10/31、予約した商品を決済できる販売期:11/1-11/3)、第二波(11/4-11/11)と大きくフェーズが2つに分かれている。それぞれ各プラットフォームでスケジュールは異なるが、W11という名の通りどのプラットフォームも11月11日を目途にキャンペーンが終了する。

CBNData「W11でのブランド参加の洞察」より、W11各プラットフォームのスケジュール一覧より。各プラットフォームで各々予約期と販売期が異なり、少々混乱が生じやすい期間である。

 プラットフォーム別では、抖音(中国版tiktok)や快手といった新興プラットフォームも売上を伸ばしたが、第一波では例年通り天猫とJDの二大巨頭で売上8割を超えた。また全プラットフォームのセールスは3162億元(約5兆6062億円)、ライブコマース売上額は821億元(約1兆4556億円)を記録した。トップインフルエンサーで男性美容家として有名な李佳奇(通称 口紅王子)がライブコマースの売上でトップに返り咲いた。

星图数据「2021年W11第一波売上高レポート」

 天猫は例年、深夜0時から販売を開始していたが今年は10月20日の20時より第1波をスタート。消費者は夜更かしをする必要がなく、W11は好調なスタートを切った。(注:10/20は第一波の予約期。消費者は10/20時点では予約金を支払うだけで、残りの全額は11/1からの第一波の販売期に支払えば良い)。中でもスキンケアカテゴリの単品売上1位を記録したWhoo后のセット商品は64236万元(約113億8900万円)の売上を記録している。

星图数据「2021年W11第一波売上高レポート」より天猫W11のスキンケア単品ランキング。

 またJDでは生活用品カテゴリーで日本メーカーのLIONがブランド別でも単品別でもカテゴリー1、2位の売上を記録。子供用電動歯ブラシで4300万元(約7億6239万円)を売り上げた。

人気は、JDは3C、天猫は農産物やブラインドボックス

 JDではセグメント別では3Cカテゴリー(Computer・パソコン/Communication ・携帯電話/Consumer electronics ・家電)の成長が目覚ましく、また、急な寒波の影響で冬物のアパレルも好調だった。11月10日20時からの5分間で家電製品の取扱高が20億円を突破、10分間でハイエンドノートPCの取扱高が前年同期比で260%増加、防寒着の取扱高が前年同期比で200%増加した。

 一方の天猫では農産物の売上高が前年同期比24.8%増加した。地理的には中国中西部地域の農産物販売の伸びが特に顕著で、甘粛省が前年比57.5%増加、貴州省が前年比24.4%増加となるなど、西部12省の農産物販売が前年比20%増と好調だった。その他にはスキー板、アウトドア用電源、ペット用おもちゃ、考古学的なブラインドボックス(購入後に箱を開けるまで中身が分からない商品)や手工芸品、アンビエントライトなどが人気という結果になった。

考古学的なブラインドボックス例。自分で石や青銅などを掘り起こし、何が出るかわからないというもの。

2021W11のテーマは「エコ」

 天猫では「W11炭素削減計画」を作成し、初めて「グリーン会場」を立ち上げ、新たに50万点の環境負荷が少ないエコ製品を追加し、1億元(約17億5000万円)のグリーン商品クーポンを発行した。 W11では250万人以上の人がグリーン商品を購入した。JDは京東物流のグリーンサプライチェーンにおいて2万6000トンの炭素を削減し、リサイクル包装材を1135万回使用。両社ともに環境への配慮をテーマとして前面に打ち出した。

高齢者に優しいシニアモードのECと公共支援の強化

 中国政府が2020年11月に「高齢者のスマート技術の活用上の困難を解決するための計画に関する通知」を発表したこともあり、天猫は今年、簡単に買い物ができるユーザーインターフェース(UI)「シニアモード」を実装した。シニアモードは高齢者でも見やすく使いやすいように開発され、「シンプルなインターフェイス」「大きなフォント」「音声アシスタント」という3つの特長を実装。結果W11期間中、110万人のシニア層がシニアモードを活用して買物した。
アイテム人気トップ3はスマートフォン、ダウンジャケット、ウールコート。天猫を利用する買物客は今年、シニア層だけでなく若年層も広がり、90代(1990年代生まれ)以降と00代(2000年代生まれ)以降の消費者が45%以上を占め、特に00代以降は昨年比25%増となった。

タオバオのシニアモードの画面例。文字がかなり大きくなっている。 AlibabaNews Japanese  より。

 公共の活動として見逃せないものがいくつかある。「公共の赤ちゃん」プロジェクトでは、今年のW11の寄付金を(発展途上地域家庭の主労働力に対する公的保険の提供、山間部の子供たちの「チャイルド・マザー」探しの支援、困っている高齢者への昼食の提供)の3つの活動の支援のために使用した。もう一つの「一つの靴」プロジェクトでは、天猫が7つのスポーツブランドと協力して、障害者を対象にして靴を1足だけ購入できるサービスを提供した。
 W11では毎年、GMVが前年比を上回り派手なニュースが話題を集めるが、2021年のW11では地方の農産物の売上が伸びたり、公共福祉やエコ志向に関連した消費や寄付が増えるなど、例年とは違う消費傾向が見られた。

 

balconia Shanghai Ltd.
日系ブランドコンサルとして、上海に拠点を構え、ブランド戦略立案とクリエイティブ制作を提供する。多数のリサーチ案件を通じて消費者、マーケット動向を注意深く観察し、中国市場に合わせたブランドカルチャライズ®を数多く手掛ける。上海、東京、香港に拠点あり。

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